「“変なおじさん”の男の覚悟にやりがいを感じる」峯田和伸(小祝宗男)【「ひよっこ」インタビュー】

2017年6月24日 / 08:16

 NHKの連続テレビ小説「ひよっこ」で、ザ・ビートルズをこよなく愛する、おかっぱ頭の“変なおじさん”小祝宗男役を演じている峯田和伸。ロックバンド「銀杏BOYZ」のメンバーとして活動を続けるかたわら、役者としても数々のドラマや映画に出演している峯田が、撮影エピソードをはじめ、宗男同様のビートルズ愛、役者への向き合い方などを語った。

 

小祝宗男役の峯田和伸

-朝ドラ初出演ですが、率直な感想は?

 親にすぐ電話をしたけど、「うそばっかり言っているんじゃない!」と言われました(笑)。去年の今ごろは脚本の岡田(惠和)さんとドラマ「奇跡の人」の撮影をしていましたが、その時にこの話は出なかったので、オファーをもらった時は本当にびっくりしたけどうれしかったです。

-有村架純演じるヒロイン・谷田部みね子の叔父で、ナレーションでも“変なおじさん”と呼ばれるユニークなキャラクターですが、岡田さんから演じ方のリクエストなどは受けましたか。

 「ビートルズ好きのちょっと変わった役なんだけど、面白い感じでやってもらえませんか?」と言われました。でも、ただ面白いわけではなく、若いころの戦争体験を通して、「俺はこうやって生きるんだ!」と決めた男の覚悟があるんですよね。そこにやりがいを感じました。

-どのような役づくりをされましたか。

 僕は、プロの役者ではないと十分自覚しているし、自分の限界は知っているので、できる役をやるだけです。だから、これといった役づくりはしていません。自然に役に入れればいいと思うし、岡田さんもそういうことを求めているのかなと思っています。ただ、宗男と僕のじいちゃんは同世代だし、じいちゃんもバイクに乗って、ギターが好きで、すごく明るかったから、「じいちゃんをモデルにやろう!」というのはありました。それで、じいちゃんの若いころの写真を見て、「こんな感じだったかな?」「こんなこと言っていたな…」と思い出したり、自分がまだ生まれていない時代の空気を想像したりしながらやっています。

-ご自身もビートルズはお好きですか。

 もともと親が好きで、その影響で物心がついたころからビートルズは聴いていました。音楽の中で一番聴いていると思います。なので、こういうキャラクター設定はうれしいというか不思議な感じがします。

-ビートルズの魅力とは何でしょうか。

 音とか歌詞がどうのこうのではなく、僕からすると、ビートたけしさんみたいな、いてくれるだけでありがたい存在です。銀杏BOYZも含めて、ロックバンドはいろいろあるけど、宇宙人にロックを紹介するとしたら、地球代表はビートルズでいいんじゃないかな。ビートルズにロックの全てが詰まっている気がします。

-劇中では茨城弁を話していますが、苦労していますか。

 山形出身なので、有村さんとか関西出身の方に比べたらしゃべりやすいと思います。でも、気を抜くと山形弁になっちゃって「なまり過ぎ」と方言指導の先生に注意されます。普段はYOUTUBEでカミナリさんや赤プルさんなど、茨城出身の芸人の動画を見て勉強しています。

-豪華俳優陣との共演はいかがですか。

 古谷一行さんと木村佳乃さんとの三人のシーンは、お二人の空気感がすごいです。その中で僕がベラベラとアホな話をするんですけど、右からは汗が出るし、左からは涙が出そうになる感じです(笑)。「奇跡の人」でご一緒させていただいた宮本信子さんと白石加代子さんは、お顔を見るとホッとします。

-有村さんはどうでしょうか。

 有村さんは、ここでは伝えられないぐらい優しいです。半年以上撮影をしてきて、まだ折り返し地点で気も張っているだろうし、彼女の中でいろいろあると思いますが、「もう駄目」とか「疲れた」とか言わないし、逆に僕のところに来て「眠れていますか?」と気を遣ってくれてすごいなと思います。みね子が彼女で良かったです。

-印象的なシーンはありますか。

 実(失踪したみね子の父で宗男の兄/沢村一樹)が目撃された道にみね子と行って、その場にはいない兄に大声で呼び掛けるシーンです。これまで胸のどこかで隠していたものを取っ払って、心から大声で「うわーっ」とせりふを言うんですが、台本を読んだ時に、このシーンは面白くできるなと感じたし、実際にうまくできたと思います。

-本作では、ビートルズをはじめとした往年の名曲に彩られたシーンも魅力的ですが、峯田さんは歌手としてどういう楽曲を作っていきたいと考えていますか。

 5年ぐらい前ならビシッと言えたけど、今は分からなくなりました。でも、歌は言葉とメロディーがくっついたもので、それが時代や国を越えていくのは面白いですよね。覚えやすいメロディーで、シンプルな言葉で心臓を直撃するような、何十年も残るようなものを作れないかなと思います。

-今後はこれまで以上に役者としての活動も活発になるのでしょうか。

 音楽活動と照らし合わせて、やれる範囲でやれればいいなと思います。劇中でよく「みね子~」と叫んでいるんですけど、ドラマ「熱中時代」(1978)でも(水谷豊演じる)広大先生が「みねこ~」と生徒の名前を叫んでいたんですよね。なまっていてもいいなら、そんな先生役をやってみたいです。弁護士とか固い仕事の役はできないだろうな。何でもこなせる方は、区役所に行った時に書類の職業欄に「俳優」と書けるけど、僕は必ず「歌手」って書いていますから(笑)。

(取材・文/錦怜那)


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