【インタビュー】『結婚』ディーン・フジオカ、結婚詐欺師役に「前向きにチャレンジ」 スイッチ一つで役に成り切る!

2017年6月23日 / 14:57

 結婚詐欺師と、彼にだまされる女性たちの姿を通して、男女の孤独や欲望、結婚をめぐるうそと真実を新感覚の映像で描いた映画『結婚』。本作で、ある秘密を抱えながら、完璧なビジュアルと知性、匂い立つ色気で女性たちをとりこにする結婚詐欺師・古海健児(うるみ・けんじ)を見事に演じ切り、観客をも魅了するディーン・フジオカ。主題歌も担当した本作の見どころ、そして役者としての今後のビジョンを語った。

ディーン・フジオカ

-初めての結婚詐欺師役ですが、ディーンさんはこのような特殊なものをはじめ、役に成り切るためにどのようなアプローチをされますか。

 自分との共通項を探します。あとは、こういうシーンでこういう表情だったら役が成立するかな、こういう小道具があればキャラクターの深みが出るだろうな、なんてことを考えます。そうやってスイッチが出来上がっていく感じです。

-今回“古海スイッチ”を作り上げるために必要だったこととは?

 声のトーンや呼吸のスピード、歩き方、ポケットへの手の突っ込み方、髪を触るしぐさ、携帯電話などの小道具の扱い方…。そういうパーツがガチンとはまっていくに連れてキャラクターの輪郭がはっきりして、「古海健児スイッチ、オン!」みたいになりました(笑)。そうなれば、この場に古海がいたら何をするか?という即興的なことも、あまり迷わずできるようになります。

-プロモーションでは「ディーン・フジオカが新境地を開拓」と強くアピールしていますが、ご自身にとって一番の挑戦は何でしたか。

 1人でいる演技がすごく難しいと思いました。詐欺師なので、ターゲットを思い通りにするという目的がある場合は、そこへ持っていくまでのアプローチもはっきりしますが、名前や職業などいろんなうそをつき通している人間が、1人になり、素の自分になった時にどういう時間の過ごし方をするのか…。ここはすごく難易度が高かったです。

-演技だけでなく、劇中でのピアノ演奏、ダンス、主題歌の歌唱など、ディーンさんのさまざまな姿を堪能できる本作だけに、「イメージビデオみたい」と評する人もいますが。

 そうですか(笑)。結婚詐欺師はクライアント(だます女性)によって(接する)スタンスが違うので、「そのバリエーションの変化を撮らせてもらいたい」というのは最初の段階で西谷(真一)監督から説明を受けました。だから、これまでできなかったようなことでも練習して成立させるという前向きなチャレンジができたので、いろんな姿が出ていると思います。

-主題歌「Permanent Vacation」は、どのような思いや意図をもって制作されましたか。

 絶対に作品の一部として成立する、歌詞や音の世界観にしたかったんです。だから歌詞は、刹那に生きている古海の心理描写を独白させるとこんな感じなのかな?とか、古海自身も分かっていない自分の内面を掘り下げていきながら書きました。サウンドは、衝動感や焦燥感、狂気を感じさせるようなギザギザした感じを狙いました。タイトルは、ずっと本筋に行けずドロップアウトしたままの休暇状態というのは、古海の物語にぴったりかなと思って付けました。

-女性の生態について深く知ることにもなったと思いますが、新しい発見はありましたか。

 萬田(久子)さんが「男性がだましたと思っていても、女性はだまされてやっているだけよ」と言っていたんですけど、そういう考えもあるのかと驚きました。女性はすごい…。奥が深いですね(笑)。

-これまでにもさまざまな役柄を演じていますが、今後演じてみたい役や、まだ出していない自分を見せたいという願望はありますか。

 僕、役者の仕事はすごく受け身なんです。と言っても何もしないという意味ではなくて、受けて全力で打ち返して答えるというスタンスでやっているので、自発的に「役者としてこうなりたい」「こういう役を演じたい」とは思わず、むしろ「この役を面白そうと気付かせてくれてありがとう」という感じです。フィルムクルーの一員として、求められたことや期待に応えられるようなパフォーマンスをどの国でも、どんな作品でも、人との出会いや縁を大事にしながら今後もやっていきたいです。

-西谷監督が「これからの日本映画界を背負っていく可能性がある人」と高く評価していましたが、ディーンさんはご自身の将来にどういうビジョンを持っていますか。

 器の大きな人間になりたいです。一つの特定のコミュニティーやジャンルにこだわらず、とにかく大きく広がって物事を発信したり、出会いの場を求めたりするということを大事にしていきたいです。

(取材・文・写真/錦怜那)


特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【映画コラム】映画は原作を超えたか 沖縄の現代史を背景に描いた力作『宝島』/純文学風ミステリーの趣『遠い山なみの光』

映画2025年9月18日

『宝島』(9月19日公開)  1952年、米軍統治下の沖縄。米軍基地を襲撃して物資を奪い、困窮する住民たちに分け与える「戦果アギヤー」と呼ばれる若者たちがいた。  村の英雄でリーダー格のオン(永山瑛太)と弟のレイ(窪田正孝)、彼らの幼なじみ … 続きを読む

【Kカルチャーの視点】レジェンドたちの「朝鮮の旅」たどった写真家の藤本巧さん

2025年9月18日

 朝鮮の文化を近代日本に紹介した民藝運動家の柳宗悦や陶芸家の河井寛次郎。彼らが1930年代に見た朝鮮の風景に憧れ、1970年に韓国の農村を訪れたのが写真家の藤本巧さんだ。以来50年以上にわたり、韓国の人々と文化をフィルムに刻み続けてきた。 … 続きを読む

エマニュエル・クールコル監督「社会的な環境や文化的な背景が違っても、音楽を通して通じ合える領域があるのです」『ファンファーレ!ふたつの音』【インタビュー】

映画2025年9月18日

 世界的なスター指揮者のティボ(バンジャマン・ラべルネ)は、突然白血病を宣告され、ドナーを探す中で、生き別れた弟のジミー(ピエール・ロタン)の存在を知り、彼の隠れた音楽的な才能にも気付く。兄弟でありながらも異なる運命を歩んできた2人。ティボ … 続きを読む

前田旺志郎「世の中に関心を持つ大切さに気付いた」窪塚愛流「止まっていた時間が動き出した」初共演の2人が福島原発事故を題材にした映画で感じたこと『こんな事があった』【インタビュー】

映画2025年9月16日

 東日本大震災から10年後の福島を舞台に、原発事故で引き裂かれた家族と青春を奪われた若者たちの姿を描いた『こんな事があった』が9月13日から全国順次公開中だ。監督・脚本は、『追悼のざわめき』(88)などで日本のみならず世界の映画ファンから支 … 続きを読む

グイ・ルンメイ、真利子哲也監督「お互いが思い合うからこそすれ違う。でもそこには愛があるという家族の形を描きたかった」『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』【インタビュー】

映画2025年9月12日

 ニューヨーク・ブルックリンで暮らすアジア人夫婦を主人公に、息子の誘拐事件をきっかけに夫婦の秘密が浮き彫りとなり家族が崩壊していく姿を、全編NYロケで描いた『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』が、9月12日から全国公開され … 続きを読む

Willfriends

page top