「ドロ沼で終わってほしい」朝ドラではあり得ない結末を希望!? 佐藤仁美(朝倉高子)【「ひよっこ」インタビュー】

2017年6月13日 / 08:19

 高度成長期の日本を舞台に、茨城から集団就職で上京した有村架純演じるヒロイン谷田部みね子の成長物語を描いたNHKの連続テレビ小説「ひよっこ」で、トランジスタ工場倒産後に、みね子が働く赤坂の洋食屋「すずふり亭」のホール係・朝倉高子を演じている佐藤仁美。近年は毒舌キャラが受け、バラエティー番組の常連ともなった佐藤が、作品の見どころや今後の展開への希望などを語った。

 

朝倉高子役の佐藤仁美

朝倉高子役の佐藤仁美

-5度目の朝ドラ出演ですが、感想は?

 またか…(笑)。NHKは本当に変わっている。私は朝の顔ではないのに、よく起用するなと思いました。

-高子は仕事はできるが無愛想で、若い女性をライバル視する癖があるというキャラクターですが、演じてみていかがですか。

 脚本の岡田(惠和)さんに、「(その)まんまで書いたから」と言われました。基本、ふざけた人です。みね子が(ぽっちゃりとした高子と)同じ制服を着た時に「へ~、そういうデザインだったんだ」という自虐的なせりふがあるんですが、そうやって岡田さんがちょいちょい私をいじるんです。そこが見どころでもあります。でも、若い女性には完敗です。若さには勝てませんよ。

-いじられ過ぎて困ったことはありますか。

 すずふり亭のアルバイト面接で、4人の若い女性を落とすシーンをアドリブでやってくれと言われた時は大変でした。彼女たちは、たった2分間の出演でも「朝ドラに出られる!」と意気込んで練習もしてきているのに、本番では私のアドリブに対応しなければいけないし、私も「髪が長いから~」とか理不尽な理由で落とすんですけど、段々レパートリーがなくなるし、共に大変でした。

-高子役は“当て書き”のようですが、役づくりでの苦労はありますか。

 高子を通して、自分にこういうところがあるのか…と気付くし、周りも役として見ていないので苦労は全くありません。

-出演者の発表会見で「(ドラマの中では)結婚したい」とおっしゃっていましたが…。

 やつい(いちろう/コック井川元治役)さんではないだろうけど、「結婚するかも」といううわさが…。(佐々木)蔵之介さん(料理長・牧野省吾役)と結婚したら、すずふり亭は私のものですよね。

-高子の今後も楽しみですが、岡田さんの脚本の魅力とは何でしょうか。

 岡田さんの本は基本的に優しくて、たまにファンタスティックで、見た人が泣くという不思議な魅力があります。それに、長ぜりふは単調になったり、見ている側も同じ人の絵が続くと詰まらなく感じたりすることもあるけど、岡田さんの本の場合はそういうことがなく、言葉がちゃんと心に届いて響きます。頑張っている人を作り上げることもうまいし、少ししか出ていなくても、その役の個性がちゃんと出ているところもいいですね。

-主演の有村さんの印象を教えて下さい。

 一度、撮影で余ったジャガイモを持ち帰ってポテトサラダを作ってきてくれて、おいしかったんですけど、「かわいくて料理もできて、何だよ!」って言いました(笑)。そういう気遣いもできて、何に対しても一生懸命で、守ってあげたくなるようなところはみね子っぽいです。

-すずふり亭のおかみさん牧野鈴子役の宮本信子さんはいかがですか。

 やりにくい撮影の時に、監督の前で「それでいいんじゃない?」と言ってやりやすくしてくださったり、私が毒づいた時には「そんなことないわよね」ってフォローしてくださったり、メチャメチャ良い先輩です。すぐ褒めてくださるし、私の扱いを分かっていらっしゃいます(笑)。あと、オフも格好いいし、肌もきれいでびっくりしました。

-現場の雰囲気はどうでしょうか。

 架純ちゃんが本当にいい子で、休みがないのにずっとニコニコしているし、たまに関西弁が出ると、なんてかわいいんだ…って。やついさんは普段からふざけていて、撮影中は二人で磯村(勇斗/見習いコック前田秀俊役)くんにアドリブを言っていじっているし、蔵之介さんも関西の方だからうっかり京都弁が出たりして、和気あいあいとしています。

-印象に残っているシーンはありますか。

 蔵之介さん、やついさん、光石(研/福田五郎役)さん、三宅(裕司/柏木一郎役)さんが歌うシーン(第13週放送予定)ですね。いい大人が「ハモリが難しい」ってずっと練習していたのがすごくかわいくて面白かったです。

-今後、どのような展開を望みますか。

 みね子は結婚しないで悲しい結末になってほしい。絶対にないですけどね。朝ドラだからハッピーエンドでしょうね。でも、私はドロ沼で終わってほしい(笑)。

-そのような毒舌でバラエティー番組でも活躍されるようになりましたが、変化を感じていますか。

 今までは「あの人見たことあるけど誰だっけ?」と思われることが多かったのが、名前と顔を一致して覚えてもらえるようになりました。

-女優としてプラスになったこともあるのでしょうか。

 バラエティー番組での芸人さんの頭の回転の良さはアドリブにつながっています。それはコメディードラマで使わせてもらっています。あとは、早口で相手を罵倒するような嫌な役が多くなりました。その時のしゃべり方のコツは(新宿)二丁目(のゲイの人たち)から仕入れています。こういう場所でのやりとりもいい勉強になっています。ふざけているようで結構真面目なんですよ(笑)。

(取材・文/錦怜那)


特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【映画コラム】映画は原作を超えたか 沖縄の現代史を背景に描いた力作『宝島』/純文学風ミステリーの趣『遠い山なみの光』

映画2025年9月18日

『宝島』(9月19日公開)  1952年、米軍統治下の沖縄。米軍基地を襲撃して物資を奪い、困窮する住民たちに分け与える「戦果アギヤー」と呼ばれる若者たちがいた。  村の英雄でリーダー格のオン(永山瑛太)と弟のレイ(窪田正孝)、彼らの幼なじみ … 続きを読む

【Kカルチャーの視点】レジェンドたちの「朝鮮の旅」たどった写真家の藤本巧さん

2025年9月18日

 朝鮮の文化を近代日本に紹介した民藝運動家の柳宗悦や陶芸家の河井寛次郎。彼らが1930年代に見た朝鮮の風景に憧れ、1970年に韓国の農村を訪れたのが写真家の藤本巧さんだ。以来50年以上にわたり、韓国の人々と文化をフィルムに刻み続けてきた。 … 続きを読む

エマニュエル・クールコル監督「社会的な環境や文化的な背景が違っても、音楽を通して通じ合える領域があるのです」『ファンファーレ!ふたつの音』【インタビュー】

映画2025年9月18日

 世界的なスター指揮者のティボ(バンジャマン・ラべルネ)は、突然白血病を宣告され、ドナーを探す中で、生き別れた弟のジミー(ピエール・ロタン)の存在を知り、彼の隠れた音楽的な才能にも気付く。兄弟でありながらも異なる運命を歩んできた2人。ティボ … 続きを読む

前田旺志郎「世の中に関心を持つ大切さに気付いた」窪塚愛流「止まっていた時間が動き出した」初共演の2人が福島原発事故を題材にした映画で感じたこと『こんな事があった』【インタビュー】

映画2025年9月16日

 東日本大震災から10年後の福島を舞台に、原発事故で引き裂かれた家族と青春を奪われた若者たちの姿を描いた『こんな事があった』が9月13日から全国順次公開中だ。監督・脚本は、『追悼のざわめき』(88)などで日本のみならず世界の映画ファンから支 … 続きを読む

グイ・ルンメイ、真利子哲也監督「お互いが思い合うからこそすれ違う。でもそこには愛があるという家族の形を描きたかった」『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』【インタビュー】

映画2025年9月12日

 ニューヨーク・ブルックリンで暮らすアジア人夫婦を主人公に、息子の誘拐事件をきっかけに夫婦の秘密が浮き彫りとなり家族が崩壊していく姿を、全編NYロケで描いた『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』が、9月12日から全国公開され … 続きを読む

Willfriends

page top