「自分を入り口に、このドラマの面白さを知ってほしい」真壁刀義(力也)【「おんな城主 直虎」インタビュー】

2017年6月12日 / 14:44

 次第に直虎(柴咲コウ)たちとの信頼関係を築き上げていく龍雲丸(柳楽優弥)一党。その顔ぶれには、一芸に秀でた個性的な面々がそろう。その中で、屈強な肉体を持つ力也を演じているのが、スイーツ好きとして知られ、“スイーツ真壁”の名でバラエティー番組でも人気のプロレスラー真壁刀義だ。多方面で活躍する真壁が、新たな挑戦となった大河ドラマの現場で感じたこととは。

 

力也役の真壁刀義

力也役の真壁刀義

-出演オファーを受けた時の感想は?

 冗談だと思いました。マネジャーはよく冗談を言うので、いつもの調子だろうと思って「何言ってるの?」と聞いたら、本当だというのでびっくりです(笑)。最高にうれしかったですけど、すぐプレッシャーに変わりました。大河ドラマに出演するのは、一流の俳優の皆さんです。そんな大舞台を用意してくれた方たちに、恥をかかせるわけにはいきませんから。

-撮影前、何か準備はしましたか。

 俺は演じることに関してはまったく“無”なので、与えられたステージでいかに自分を見せるかということを考えました。自分なりに演技の勉強もしましたが、撮影まで時間もないので、深い演技はできません。じゃあどうするかと考えて学んだのが、言葉ではなく、身振り手振りを中心に動くということ。その方が自分らしく、間違いなくこれだと思いました。

-撮影現場に入った感想は?

 初日は、「柳楽(優弥)くん、映画で見たことある!」とか考えながら、周りばかり見ていました(笑)。まえだまえだのお兄ちゃん(前田航基)とも、よく話しました(笑)。子役から努力してきている方だから、芸歴は俺より長いんです。お兄ちゃんからも、勉強することがいっぱいありました。エキストラの方もいるので、所作が分からない時には、彼らの動きを見て勉強しています。とはいえ、あくまでもここに呼ばれたのは真壁刀義としてなので、本番では自分の本質を出すことを心掛けました。

-毎日が勉強という感じですか。

 そうですね。今は柳楽くんを含め、いろいろな役者さんを見て、勉強させてもらっています。だけどそれは、ドラマのためだけではなく、プロレスにも還元できるんです。言葉の発し方や言葉のチョイス、ものの例え方は、プロレスの観客にも響く。普通の選手だと「バカヤロー!」、「コノヤロー!」で終わりです。でも、それだけじゃない。俺が今考えているのは、まさかの大河風の言い方(笑)。まだ披露していませんが、いずれ試合でやってみたいです。

-一党の頭(かしら)である龍雲丸を演じる柳楽優弥さんの印象は?

 役柄の上では、頭が切れてそつなく、人間味に厚いという雰囲気がよく出ています。その一方で、柳楽くん本人は、ほわんとしています。だけど、それがすごくソフトな感じで、当たり前のことが当たり前にできる。社会人としてきちんとしている部分に人間味を感じました。いい方ですよね。だから、一党の頭にはもってこいです。見た目が男前なのは多いですけど、柳楽くんは中身も男前。俺はそこにすごく引かれました。

-龍雲丸一党の雰囲気はいかがでしょう。

 柳楽くんを筆頭に、エキストラさんも含めて、みんな信頼感があります。しかも、時間がたつにつれて、そのいい関係がどんどん出来上がっていくんです。たかだかここ何カ月か一緒に居させてもらっているだけですけど、心がすごく近付きました。俺は試合もあるので、なかなか参加できませんが、撮影以外でもよくみんなで集まっていますね。

-かなり気持ちが入っているようですね。

 今までもドラマに出たことはありますが、それは真壁刀義役でした。だから、気持ちが入る、入らないというより、素を見せていただけかもしれません。でも、力也という役は、真壁刀義ではないし、スイーツ真壁でもない。頭を盛り立てて、男にしなきゃいけないと一致団結している仲間の1人です。口にはしないけど、みんなその気持ちを持っている。だから、一緒にいるとやっぱり気持ちは入りますよね。この作品に出させてもらって本当に良かったです。

-龍雲丸一党は衣装も派手ですね。

 いわゆる“傾奇(かぶき)者”です。最初に写真で見た時は、大柄で力持ちで粗暴という印象でした。その後、衣装合わせで着てみたら、「赤いひもを巻いたらいいんじゃない?」となって。俺は普段プロレスで首にチェーンを巻いているんです。その代わりに真っ赤なひもを巻いたら、落ち着いた色の中に差し色が入ってしっくりきました。でも、他のみんなと違って、俺だけ履き物が草履。ものすごく寒いんですよ。真冬の山でロケした時、死ぬかと思いました(笑)。

-直虎役の柴咲コウさんの印象は?

 俺は女優さんがどういう心持ちで演じ、どんな力量を持っているのかということを全く知りませんでした。でも初めて現場に入った時、撮影の合間に1人でせりふを練習している姿を見たら、ものすごく真剣。大河ドラマの主演は、やっぱりすごいなと。その時は、邪魔しちゃいけないと思って遠くから会釈だけしたら、手を付いてあいさつしてくれました。美しいなと思いながら、自分も本腰を入れて頑張らないと駄目だという気になりました。

-真壁さんのファンには、このドラマのどんなところを見てほしいですか。

 真壁刀義を見てもらいたい気持ちはもちろんあります。でもそれだけではなく、自分を入り口に「直虎」というドラマの面白さを知ってほしい。本当に面白いから。事実を基にしている大河ドラマには、いろいろ考えさせられるところがあります。見ている人が、それを自分の人生と重ねてくれたら、もっと面白いと思うんです。それと、役者それぞれの味とすごさ。

-というと?

 俺が絡む相手を見たら、その役者さんの魅力が伝わると思うんです。柳楽くんや一党の連中、殿(直虎)や六左さん(六左衛門)もいる。高橋(一生)さんも、カッコいい。俺は普段、ずっとしゃべっているけれど、彼らは沈黙で見ている人をうならせるし、心に響くことを普通に言うんだから、すごいですよ。一流の人に囲まれると、受ける刺激もすごい。今年の初めに撮影が始まって、今まであっという間でした。それでも、心に残っているものはものすごい。それを視聴者の方にも感じてもらいたいです。

(取材・文/井上健一)


特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【映画コラム】映画は原作を超えたか 沖縄の現代史を背景に描いた力作『宝島』/純文学風ミステリーの趣『遠い山なみの光』

映画2025年9月18日

『宝島』(9月19日公開)  1952年、米軍統治下の沖縄。米軍基地を襲撃して物資を奪い、困窮する住民たちに分け与える「戦果アギヤー」と呼ばれる若者たちがいた。  村の英雄でリーダー格のオン(永山瑛太)と弟のレイ(窪田正孝)、彼らの幼なじみ … 続きを読む

【Kカルチャーの視点】レジェンドたちの「朝鮮の旅」たどった写真家の藤本巧さん

2025年9月18日

 朝鮮の文化を近代日本に紹介した民藝運動家の柳宗悦や陶芸家の河井寛次郎。彼らが1930年代に見た朝鮮の風景に憧れ、1970年に韓国の農村を訪れたのが写真家の藤本巧さんだ。以来50年以上にわたり、韓国の人々と文化をフィルムに刻み続けてきた。 … 続きを読む

エマニュエル・クールコル監督「社会的な環境や文化的な背景が違っても、音楽を通して通じ合える領域があるのです」『ファンファーレ!ふたつの音』【インタビュー】

映画2025年9月18日

 世界的なスター指揮者のティボ(バンジャマン・ラべルネ)は、突然白血病を宣告され、ドナーを探す中で、生き別れた弟のジミー(ピエール・ロタン)の存在を知り、彼の隠れた音楽的な才能にも気付く。兄弟でありながらも異なる運命を歩んできた2人。ティボ … 続きを読む

前田旺志郎「世の中に関心を持つ大切さに気付いた」窪塚愛流「止まっていた時間が動き出した」初共演の2人が福島原発事故を題材にした映画で感じたこと『こんな事があった』【インタビュー】

映画2025年9月16日

 東日本大震災から10年後の福島を舞台に、原発事故で引き裂かれた家族と青春を奪われた若者たちの姿を描いた『こんな事があった』が9月13日から全国順次公開中だ。監督・脚本は、『追悼のざわめき』(88)などで日本のみならず世界の映画ファンから支 … 続きを読む

グイ・ルンメイ、真利子哲也監督「お互いが思い合うからこそすれ違う。でもそこには愛があるという家族の形を描きたかった」『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』【インタビュー】

映画2025年9月12日

 ニューヨーク・ブルックリンで暮らすアジア人夫婦を主人公に、息子の誘拐事件をきっかけに夫婦の秘密が浮き彫りとなり家族が崩壊していく姿を、全編NYロケで描いた『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』が、9月12日から全国公開され … 続きを読む

Willfriends

page top