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【インタビュー】「コールドケース~真実の扉~」吉田羊「主役は向いていない…」 “主演ブレーク”に覚える違和感とは

 舞台で培われた確かな演技力と美貌に、年齢非公表というミステリアスな一面も加わって一躍人気を博し、名バイプレーヤーとして映画やドラマに引っ張りだこの女優・吉田羊。そんな彼女が映像デビューから9年目の今年、“主演ブレーク”している。木村佳乃とのW主演映画『嫌な女』に続き、連ドラ初主演となるのが、未解決凶悪犯罪、通称“コールドケース”を扱う神奈川県警・捜査チームの活躍を描く「連続ドラマW コールドケース~真実の扉~」。喜びもひとしおかと思いきや、その胸中は意外なものだった…。

 

ヒロインの石川百合を演じる吉田羊

―ようやく巡ってきたビッグチャンスが刑事ドラマで、初めての単独主演ですが、オファーを受けた時の心境を教えてください。

 主役なんて柄ではないし、性(しょう)に合わないと思っていました。刑事役も、主演として経験のある方々が演じればハマると思うし、私よりはるかにすてきに演じられると思います。でも、プロデューサーや監督から「『この人はこういう芝居をするよね』という“色”のない女優にお願いしたかった」と言われ、それならまっさらな気持ちで臨めるかも…と思い、引き受けました。

―演じる石川百合は鋭い洞察力を持ち、正義感にあふれ、チームを強く優しく率いる警部ですが、ご自身との共通点はありますか。

 ある一定の距離を保って人付き合いをするところや、気持ち悪いと思ったものをそのままにしないで、答えが出るまで突き詰めていく頑固さや融通の利かなさは、限りなく私に近いと思います。だから、百合と自分との境が分からなくなるぐらい、心地良く演じさせてもらいました。他の作品で続編をやりたいと思ったことはありませんが、この作品や役に関しては一生やっていきたいと思うほどで、撮影後は“百合ロス”になりました(笑)。

―内面は百合と似ているということですが、外見などの役作りで意識したことはありますか。髪を無造作に結んでボサボサなまま牛丼を食べているシーンが特徴的でしたが。

 そこに注目していただいてありがとうございます。百合の日常が見えるように、左手首にヘアゴムをつけて、食事や臨場のシーンでは髪を結ぶことを私が提案しました。監督が求める「生きたドラマ」では、仕事の合間にデスクで牛丼を食べる時にわざわざ髪を整えないし、女優としての美しさや格好良さは必要ないと思いました。だから、髪形は各話によって少し違います。毎回判を押したような同じ髪形は生きている匂いがしないですから。

―三浦友和さん、滝藤賢一さんをはじめ、頼もしいベテラン勢が脇を固めていますが、現場での様子はいかがでしたか。

 それぞれが自立した方なので、私は私で好きなようにやることを許してくれる現場でした。滝藤さんは「よっ、座長!」なんて言って面白がっていましたけど(笑)。普通、撮影現場ではイラついて声を荒げる方が一人二人いますが、今回はそういう方がいませんでした。みんな穏やかで、とにかく作品を良くしたいという思いに集中した職人たちと座組みができたことが私の誇りです。

―各話のゲストキャストも多彩な顔ぶれで、演じる上で刺激になったかと思いますが、特に印象的だった人はいますか。

 仲代達矢さんには圧倒されて、まるで神と対峙(たいじ)しているような感覚になりました。せりふのない行間にこそ、役の思いがにじみ出ると思うのですが、仲代さんのその時の表情やしぐさはとても勉強になりました。お芝居から役が匂い立つようで、それを経験できただけで死んでもいいと思うほど幸せでした。

―ご自身の中で未解決なままの問題や、納得がいかないが故にあえて掘り起こし、もう一度対峙して終わらせたいと思うことはありますか。

 私は相手にきちんと謝ったつもりですが、本当の意味でわだかまりが溶けていないと思っていることがあります。でも、どれぐらいの強さで、どういうふうに痛みを感じているかはその人にしか分からないので、傷つけた側も傷つけられた側も最終的には分かり合えないのかも…。気持ちを伝えたことで自分を納得させて前に進むしかない。そうやって人は生きているのかもしれないですね。

―現在放送中のフジテレビ系連続ドラマ「メディカルチーム レディ・ダ・ヴィンチの診断」でも主演ですね。目覚ましい快進撃ですが、ご気分はいかがですか。

 居心地が良いかというと良くないですね(笑)。人を束ねていく性格ではなく、束ねてくれる人についていくことが好きだったり、頼りにされたり必要とされたりすることを良しとする人間なので。そういう意味では主役は向いていないといまだに思います。

 ドラマは10月22日午後10時からWOWOWプライムで第1話無料放送

(取材/文:錦玲那)

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