「演じたかった武将ですから体が喜んでいます」藤岡弘、(本多忠勝)【真田丸インタビュー】

2016年9月18日 / 20:45

 NHKの大河ドラマ「真田丸」で、徳川家康(内野聖陽)の重臣、本多忠勝を演じている藤岡弘、。天下の猛将として名をとどろかせる一方、真田信繁(堺雅人)の兄・信幸(大泉洋)に嫁がせた娘の小松姫(吉田羊)を思う一人の父親でもある忠勝の人間くささを語る。

 

本多忠勝役の藤岡弘、

本多忠勝役の藤岡弘、

-本多忠勝にはどんなイメージを持っていましたか。

 個人的には武士道精神の基を作った、原点の人だと考えているので、親近感がありました。文献ばかり読んでいましたし、ゆかりの地や城まで行って疑問を探求するのが楽しくて仕方がありませんでした。そこに急に出演のお話が来たから、忠勝が呼んだのかとびっくりしました。演じたかった武将ですから体が喜んでいます(笑)。こういう経験はなかなかあるものではないです。

-忠勝は、乱世でなければ生きられない男とも言われています。

 でも、忠勝は戦が大好きだった訳ではない。敵であろうと味方であろうと敬うという気持ちがあり、生きるために仕方なく、宿命の中で戦わざるを得なかった人間の悲しみや痛みを分かっていた武将だと思います。いつも努力して弱者、敗者の気持ちを考える。それが忠勝の下げていた数珠に表れていると想像します。「最も剛毅なる者は、最も柔和なる者なり、最も愛ある者は最も勇気ある者なり、おごれし者を打ち砕き、敗れし者を慈しみ、失われる他者への憐みの心。平和の道に立つること、これすなわちもののふの道、武士道なり」という言葉があるんですが、まさしくそれにはまるのが忠勝なんです。

-もし今忠勝に会えたら、どんな話をしますか。

 やっぱり生きざまですね。なぜいつも先陣を務めて、家康に忠義を尽くしたのか。それを本音で聴きたいです。

-藤岡さんはそうした武将の雰囲気をお持ちです。

 恐れ多いです。私は未熟で、修業の身です。

-忠勝役に臨むために特別なトレーニングはされましたか。

 僕は槍術、つまり槍もたしなみますし、手裏剣、小太刀、なぎなた、全部やります。忠勝は長い蜻蛉(とんぼ)槍の達人なので、長い槍でも練習してみました。

-信幸には最初怖がられていましたが、関係はだんだん変化していきますね。

 自分のまな娘を嫁がせてしまった婿がこの戦乱の世を生き延びていけるか、血筋を守っていけるかを試していたのではないでしょうか。決意、決断、覚悟、信念がないと当時の武将は生き抜いていけません。しかしそうして信幸を見ているうちに、だんだんほれ込んでいったと解釈して、そう表現しました。

-関ヶ原の戦いで西軍側についた信繁と父親の昌幸(草刈正雄)の助命嘆願を、東軍についた信幸と共に家康に訴えますね。

 周りがどう思おうと、次なる未来のために自己を捧げる犠牲精神が忠勝にはあります。家康は分かってくれるだろうと信じた上で、親子や一族の絆の深さを伝えたかった。真の男の侍魂をぶつけていますから。楽しみに見てください。

-本番は一発オーケーでしたか。

 ええ。俳優生活51年、先輩諸氏の中で鍛えられてきたので、たえず一発勝負。あの緊迫感、緊張感を表現している中では一発でやってほしいですしね。日ごろから、心の乱れがあると道場で真剣を振ります。真剣って少しでも心の乱れがあると、手をさーっと切ってしまう。だからいつも身と心を引き締め集中します。それを何十年もやって、夜にろうそく一本の中にいると、「ああ昔の侍はすべてこの一瞬一瞬に命を懸けた」と分かります。それに俳優同士って相手の機が熟していると分かるもの。内野さんも一発でやりたがっていましたから。

-堺さんの印象は?

 撮影現場にいて楽しみなのは、若い俳優さんがどんどん成長して、雰囲気や目つきが変わってくること。中でも堺さんは将来が楽しみです。あらゆる戦乱を超えて今の私たちや社会は存在しています。そんな戦乱の時代を支えてきた侍の姿を描くドラマがなくなると、日本の映像界はおしまいです。その思いを若手がしっかりと真剣に支えていってほしいですね。


特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

板垣李光人「最初から、戦争を考えて見るのではなく、実際に見て感じたことを広めていっていただければ、それが一番うれしいです」『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』【インタビュー】

映画2025年12月5日

 戦争がもたらす狂気を圧倒的なリアリティーで描き、第46回日本漫画家協会優秀賞を受賞した武田一義の戦争漫画をアニメーション映画化した『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』が12月5日から全国公開された。太平洋戦争末期、激戦が繰り広げられたペリリ … 続きを読む

【物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家ストーリー】(8)百年ぶりの復活へ 四代目が掲げた三つの大願

舞台・ミュージカル2025年12月4日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。    2016年に四代目・玉田玉秀 … 続きを読む

多部未華子「学びの多い現場でした」DV被害者役に挑んだヒューマンミステリー「連続ドラマW シャドウワーク」【インタビュー】

ドラマ2025年12月1日

 WOWOWで毎週(日)午後10時より放送・配信中の「連続ドラマW シャドウワーク」は、佐野広実の同名小説を原作にしたヒューマンミステリー。  主婦の紀子は、長年にわたる夫の暴力によって自己喪失し、すべて自分が悪いと考えるようになっていた。 … 続きを読む

森下佳子「写楽複数人説は、最初から決めていました」脚本家が明かす制作秘話【大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」インタビュー】

ドラマ2025年12月1日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」。“江戸のメディア王”と呼ばれた“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く物語は、まもなくクライマックスを迎える。これまで、いくどとなく視聴者を驚かせてきたが、第4 … 続きを読む

富田望生「とにかく第一に愛を忘れないこと」 村上春樹の人気小説が世界初の舞台化【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年11月30日

 今期も三谷幸喜の「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう」に出演するなどドラマや映画で注目を集め、舞台やさまざまなジャンルでも活躍する富田望生。その富田が、2026年1月10日から上演する舞台「世界の終りとハードボイルド・ワンダ … 続きを読む

Willfriends

page top