「充希ちゃんはすごく勘がいいと思います」 唐沢寿明(花山伊佐次) 【とと姉ちゃん インタビュー】

2016年7月29日 / 14:46

 二人の妹と母を守って奮闘する小橋常子(高畑充希)を描く連続テレビ小説「とと姉ちゃん」。戦後、常子が出版した実用雑誌『あなたの暮し』のカリスマ的な編集長として、同誌を人気雑誌へと導いていく花山伊佐次を演じている唐沢寿明。豪放な性格と反骨精神、ユーモアあふれる人物であると同時に、常子の人生最大の「魂のパートナー」であった花山をどう演じているのか、唐沢が現場での様子を語った。

 

花山伊佐次役の唐沢寿明

花山伊佐次役の唐沢寿明

-今回の役は、生活雑誌『暮しの手帖』の創刊者メンバーである花森安治さんをモチーフにしたものですが、演じる上でのポイントは?

 やっぱり“ユニークな人だった”というところに焦点を当ててやっています。見た目がご本人と違うのは当たり前。ハリボテの顔をつけても何か変でしょ(笑)。なので、見た目とは別のアプローチ法でやっています。

-具体的なアプローチ法とは?

 お芝居の部分で、せりふにないようなことを少し付け加えたりします。あまり“足し算”は好きでないけど、そうしないと「この役は成立しないな」と思っていて。普通にやると普通にワンシーンが終わってしまうので、多少はアドリブも入れながらやっています。

-アドリブとは具体的にどんなことをするのですか。

 それは秘密です。見てのお楽しみじゃないですか(笑)。リハーサルの時にはなかった物が本番にはあるわけで、それを見て思いついたことだったり、その時によって違います。(アドリブを加えることで)“普通の感じ”が出たほうがいい。せりふのやり取りをしているな、というのは嫌じゃないですか。僕らがこうやって話していても、互いにせりふのやり取りなんてしてないでしょ。

-常子を演じる高畑充希さんの印象はいかがですか。

 彼女はアドリブをやってもちゃんとついてきてくれます。しかもちゃんと役の雰囲気でついてくるから怖い(笑)。すごく勘がいいと思います。あと、充希ちゃんは、僕がアドリブをしても、終わった後は「はい、はい」というクールな対応だからね。先輩という意識はもうあまりないのかも(笑)。彼女は日々のハードなスケジュールや重圧で、少なからずストレスもたまっているはず。そりゃそうだよね。でも、朝ドラのヒロインは修行みたいなもの。でも、やり切れば、その分いいこともあるでしょうし。

-現在の朝ドラの“盛り上がり”を唐沢さんはどう見ていますか。

 やっぱり、ヒロインがオーディションから出てきた新人ではないという部分が大きいと思います。例えば、28年前、当時はまだ結婚してなかったうちの奥さん(山口智子)が主演でやっていた時(1988年の「純ちゃんの応援歌」)は素人じゃないですか。右も左も分からないから、演出家に言われたことは、何であれ「はい」とやっていたわけです。それが充希ちゃんぐらいになると結構キャリアがあるので、「私はこうやりたいと思う」と演出家に意見を伝えることもあるんです。その辺が随分変わったんじゃないかな。どちらがいいとか悪いとかではないけどね。

-現在の朝ドラの良さはどこにあると思いますか。

 今回のストーリーを見ていても非常に分かりやすいし「本来テレビってこういうものじゃないかな」と感じます。テレビはテレビの良さが絶対にあるはず。楽に見られた方がいいよね。みんなが、血が出てきたり、人の首が飛んだりというのを見たいわけじゃない。考えても答えが出ないようなものもあまり良くないと思う。好きならチューしちゃえばいいじゃんって(笑)。

-シンプルさが“受けている”ということですか。

 あとは、そのヒロインがとにかく“一生懸命頑張る”という部分。今の時代に一番欠けていることが、いまだに詰まっているというところじゃないですか。そういう、現代ではなくなってきていることが描かれているから、余計に主人公たちを応援したくなったり、自分も「もうちょっと頑張らなきゃ」と思ってみたり。そういう単純なことが実はエンターテインメントで一番大事なんじゃないかなと思います。

-今回はいわゆる「天才」の役どころですが、唐沢さんが思う天才とは?

 モチーフとなった花森さんは、要は絵も描けて文章力もずば抜けていて、雑誌の構成力も半端じゃなかった。そういう人ってなかなかいないと思うんですよ。例えば、何か一つのことに才能が突出している人は結構いるけど、トータルで優れている人ってなかなかいないじゃないですか。天才と言われる人は、大体、自分で全部をやってしまう人だと思います。そうしないと気が済まない。人に任せられないといいますか…。

-花森さんについての研究はされましたか。

 彼に関して書かれている本は読みましたけど、そこに答えはないので。何の本を読んでもそこに“人生”は書いてないじゃないですか。実際に転んだ人にはかなわないでしょ。経験に勝るものはない。本を読んで、取り入れられるものは取り入れて、演技でどう出すかということは考えていますけど。要らないものは全部捨てています。使えないものもね。ブルース・リーのまねは誰にもできないもんね。それと一緒ですよ(笑)。

-彼に魅力を感じましたか。

 彼は表紙なども描いていたけど、イラストや残された絵に人間性がすごく出ているなぁと思いました。「どうやったらあの人からあんなに優しい絵が…」って言うと失礼ですが、あんな絵、普通は描けないでしょ(笑)。あれに心が現れているんですよ。すごくピュアな人なんだと思います。

-唐沢さん自身にも相通ずるものがありましたか。

 それはどうですかね。僕の中にピュアなものがないので。


特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

川口春奈、高杉真宙「自分や家族、周りの人たちを大事にしようと思うきっかけになったらうれしいです」『ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記』【インタビュー】

映画2026年10月1日

 大腸がんによって24歳で他界した遠藤和(のどか)さんが亡くなる10日前までつづり続けた手記を映画化した『ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記』が、10月2日から全国公開される。本作で、主人公の和と夫の将一を演じた、川口春奈と高杉真 … 続きを読む

木戸大聖「悲しいと思っていてもそれを表情に出せないのが難しかったです」『沖晴くんの涙を殺して』【インタビュー】

映画2026年10月1日

 余命1年の音楽教師・京香(広瀬アリス)と、喜び以外の感情を失った高校生・沖晴が織りなす、切なくも温かい感動の人生賛歌『沖晴くんの涙を殺して』が10月2日から全国公開される。本作で、訳あり高校生の沖晴を演じた木戸大聖に話を聞いた。 -沖晴の … 続きを読む

小瀧望「ファンの皆さまの声に応え続けたい」 舞台「ロックンロール」では「僕たちの芝居とともに、当時のロックミュージックも楽しんで」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2026年9月30日

 小瀧望が主演する舞台「ロックンロール」が、11月6日から上演される。本作は、世界的な劇作家トム・ストッパードが祖国チェコスロバキアを舞台に、20年以上にわたる歴史のうねりを描きながら、自由の尊さをうたう物語。愛するロックンロールと母親を守 … 続きを読む

佐津川愛美「酒井監督に惚れました(笑)」念願だった酒井麻衣監督との初タッグ『時給三〇〇円の死神』【インタビュー】

映画2026年9月30日

 10月2日から全国公開となる『時給三〇〇円の死神』は、累計発行部数36万部を突破した藤まるの同名小説を原作にしたファンタジーだ。生きる希望を失った大学生・佐倉真司(西畑大吾)が、謎めいた同級生・花森雪希(福本莉子)に誘われ、この世に未練を … 続きを読む

【K-POPもKドラマも深読みしたら韓国が見えた】#受験競争だけではない韓国の教育問題、「鉄槌教師」が問う教師の役割

2026年9月29日

 K-POPや韓国ドラマは、エンターテインメントであると同時に、韓国社会を映す鏡でもある。何気ない言葉やしぐさ、習慣の背景をたどると、その国ならではの価値観や歴史、人との関わり方が見えてくる。この連載では、韓国カルチャーを入り口に、知ってい … 続きを読む

page top