「『純ちゃんって月っぽいね』と言われました」 阿部純子(中田綾)【とと姉ちゃん インタビュー】

2016年7月22日 / 16:28

 二人の妹と母を守って奮闘する小橋常子(高畑充希)を描く連続テレビ小説「とと姉ちゃん」。戦後、女性のための雑誌作りに目覚めた常子は女学校時代の親友・中田綾(阿部純子)と再会する。名家の出で、卒業と同時に結婚した綾だったが、戦争で夫と父、そして家を同時に失ったことで、幼子を抱えながら貧しい生活を送っていた。連続テレビ小説初出演となる阿部が、役に対する思いを語った。

 

中田綾役の阿部純子

中田綾役の阿部純子

-綾から見た常子はどんな人物ですか。

 常子さんは、おてんばでどこかおちゃめなところがある方。そんな常子さんといると、綾さんも、少し前向きになれるんだと思います。戦争未亡人となった綾さんは、「頑張ろう」「頑張らなきゃ」と一時期心の余裕をなくしてしまいますが、常子さんを見ていると「自分ももっと力を抜いていいんだな」と思えてくる。綾さんにとって常子さんはなくてはならない存在だと思います。

-戦後、境遇が変わってしまった綾ですが、お芝居で特に心掛けた部分はありますか。

 綾さんは“品のある女性”だなと思っています。そういう部分が私もとても好きです。なので、生活が貧しくなっても、そういう綾さんの品の良さみたいなものは一貫して持ち合わせていられたら、と思いながら演じています。

-綾のどんなところに共感しますか。

 綾さんは、時代にどんどん振り回されてしまう女性で、時代の移り変わりと共に、表情、目つき、服装、身なりが変わっていく役どころです。それでも、彼女は「(自分の中に)軸を作りたい」、「もっと強くなりたい」と思って奮闘するのですが、そういう部分には共感しますし、私も役と共に成長できたらと思います。

-朝ドラ初出演となりましたが、周囲の反応はいかがでしたか。

 家族、特に祖父母が喜んでくれました。祖父母は、朝、昼、晩の3回、見てくれているようで、この前、実家に帰った時にも「純子が笑顔でテレビに出ているのがすごくうれしいから、毎日の楽しみにしてる」と言ってくれました(笑)。

-出演前の1年間は、ニューヨークに留学していたそうですが、ご自身の中で何か変化はありましたか。

 今まで私は「自分を表現しなくちゃ」「自分を見てほしい」という気持ちが強かったのですが、留学してからは「自分は作品を通して何を伝えられるのか」ということを考えるようになりました。これは、留学中に自分自身が本当にいろんな方に助けられた経験が大きいと思います。また学校の友達には、留学後に「キラキラするようになったね」と言ってもらえました。

-今後はどういう役に挑みたいですか。目標としている女優さんも教えてください。

 私自身は一つ一つ、山を登っていくタイプなので。ただ、できれば、すごくエネルギッシュな女の子を演じてみたいと思います。綾さんがとても落ち着いているので、ギャップを感じさせられるような役柄に出会えたらいいと思います。目標としている方は竹内結子さん、山口智子さん、深津絵里さん。皆さん、女性としてしなやかな強さをお持ちだなと思っていて、憧れます。

-戦中の苦しい時期も平塚らいてうの「青鞜」を心の支えにしていた綾ですが、阿部さんが道標としてきたものはありますか。

 いつも太陽のような存在である「とと姉ちゃん」とは違って、綾さんも私も、いつも太陽ではいられないタイプ。そんな中、「純ちゃんって月っぽいね」って言われたことがありました。その時は「何で月なんだろう?」と思っていたのですが「いろんな人のいいところを反射できるから純ちゃんは月でいいんだよ」と言ってもらって、「そうか、私はこのままでいいんだ」と思えました。その言葉は自分の中で大切にしています。

-今後の綾の見どころは?

 自分の足で踏みしめていく綾の過程を、また綾の表情がどんどん変わっていく様子を見ていただけたらと思います。後に、雑誌作りのお手伝いで、綾がお洋服を試着するシーンがあるのですが、闇市で買った衣類でなんとかやりくりしてきた綾が、初めて心の余裕を持てる場面です。着るものによってこんなにも心が豊かになるんだ、というのを実感できるシーンになっているので、そこでの綾のこぼれるような笑顔にも注目してほしいです。


特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【映画コラム】映画は原作を超えたか 沖縄の現代史を背景に描いた力作『宝島』/純文学風ミステリーの趣『遠い山なみの光』

映画2025年9月18日

『宝島』(9月19日公開)  1952年、米軍統治下の沖縄。米軍基地を襲撃して物資を奪い、困窮する住民たちに分け与える「戦果アギヤー」と呼ばれる若者たちがいた。  村の英雄でリーダー格のオン(永山瑛太)と弟のレイ(窪田正孝)、彼らの幼なじみ … 続きを読む

【Kカルチャーの視点】レジェンドたちの「朝鮮の旅」たどった写真家の藤本巧さん

2025年9月18日

 朝鮮の文化を近代日本に紹介した民藝運動家の柳宗悦や陶芸家の河井寛次郎。彼らが1930年代に見た朝鮮の風景に憧れ、1970年に韓国の農村を訪れたのが写真家の藤本巧さんだ。以来50年以上にわたり、韓国の人々と文化をフィルムに刻み続けてきた。 … 続きを読む

エマニュエル・クールコル監督「社会的な環境や文化的な背景が違っても、音楽を通して通じ合える領域があるのです」『ファンファーレ!ふたつの音』【インタビュー】

映画2025年9月18日

 世界的なスター指揮者のティボ(バンジャマン・ラべルネ)は、突然白血病を宣告され、ドナーを探す中で、生き別れた弟のジミー(ピエール・ロタン)の存在を知り、彼の隠れた音楽的な才能にも気付く。兄弟でありながらも異なる運命を歩んできた2人。ティボ … 続きを読む

前田旺志郎「世の中に関心を持つ大切さに気付いた」窪塚愛流「止まっていた時間が動き出した」初共演の2人が福島原発事故を題材にした映画で感じたこと『こんな事があった』【インタビュー】

映画2025年9月16日

 東日本大震災から10年後の福島を舞台に、原発事故で引き裂かれた家族と青春を奪われた若者たちの姿を描いた『こんな事があった』が9月13日から全国順次公開中だ。監督・脚本は、『追悼のざわめき』(88)などで日本のみならず世界の映画ファンから支 … 続きを読む

グイ・ルンメイ、真利子哲也監督「お互いが思い合うからこそすれ違う。でもそこには愛があるという家族の形を描きたかった」『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』【インタビュー】

映画2025年9月12日

 ニューヨーク・ブルックリンで暮らすアジア人夫婦を主人公に、息子の誘拐事件をきっかけに夫婦の秘密が浮き彫りとなり家族が崩壊していく姿を、全編NYロケで描いた『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』が、9月12日から全国公開され … 続きを読む

Willfriends

page top