妻夫木聡、「キッドナップ・ツアー」父親役に感慨深く 父親になったら「夜のキャンプで星空観測」

2016年7月30日 / 06:00

kidnap_53_014t 8月2日に放送されるNHKの夏休みドラマ「キッドナップ・ツアー」に主演し、親子を軸にした作品で初めて父親役に挑んだ妻夫木聡がこのほど報道陣のインタビューに応じ、父親役を演じるようになったことへの思いや物語のために子役・豊嶋花と作り上げた微妙で絶妙な親子関係、あらためて思う理想の父親像などを振り返った。

 角田光代氏の同名小説を原作にしたこのドラマは、小学5年生のちょっとクールな女の子ハル(豊嶋)とろくでもない父親タカシ(妻夫木)の、互いを知り成長していくひと夏の誘拐(キッドナップ)旅行を描く。妻夫木は2カ月前に家からいなくなっていた、ミュージシャン志望でお金なし仕事なしのだらしなく情けないタカシという役柄を演じた。

──初めての父親役ということですが、演じてみての感想をお願いします。

 父親役は初めてではなくて、でも親子が軸になる話を演じるのは初めてでした。僕は父親になったことがないので父と子どもの距離感はどういうものかを考えて現場に行きましたが、岸善幸監督から「普段の妻夫木さんらしく、父親っぽくない感じの方が作品に合っているからあまり意識しないで」と言われて、父親というものを捉えては演じませんでした。

──だらしなく職もお金もないというダメな父親でしたが、演じる上で意識したことやキャラクターの魅力は?

 どうしようもないところはあるけど、ただのバカには見せたくなくて…。タカシはどこか放っておけないようなかわいげのある男で、実は情に深いところもある。不器用だけど人間らしいところは残していきたいと思って意識はしていました。社会にまみれていく中で、ルールにあらがいたくもなるけど従っている方が楽だし、そうしていくうちに自分らしさってなんだっけ?となるのが人間だと思うんです。タカシのマイペースで自由に生きられることもひとつの魅力なんだろうなと思うし、うらやましくもあります。

──子役の花ちゃんとの共演を振り返ってみて、どんな子でしたか。

 初対面のときからかまえずにぶつかってきてくれる子で、言い方がおかしいかもしれないけど一緒に演じさせてもらってすごく楽というか…。父親っぽくしないでほしいと言われていたけど、“友達以上父親未満”という感じの距離感でいられたんじゃないかな。それはすごく面白かったです。

──オールロケで行われた撮影でもっとも印象的だったことは何ですか。

 キャンプですかね。テントを張ってキャンプをした経験がなかったので、一緒にハルと寝てみて、いつか自分もこういう立場になったらやってみたいなって思いました。穴のあいたテントでしたけど(笑)。いつも当たり前にある星がその小さな穴から見るととてもきらきらして見えて、気づかないものが見える瞬間っていうか。すごくよかった。

kidnap_54_038──父親っぽく演じないとはいえ、見えない親子の絆や親子感のようなものがにじみ出ていました。花ちゃんとの共演で意識したことはありますか。

 へんに「お父さんって呼べよ」って言うのも変だと思ってそういうことはしなかったんです。気を使うという年ごろじゃないからかもしれないけど、芝居でも普段の生活でも純粋に遊び相手としてぶつかってきてくれました。順撮りではなかったけど徐々に仲良くなっていって、原作でも印象的だったお別れのシーンはお互いが過ごしてきた時間があって出てきた感情が出せた気がします。一緒に過ごした時間はうそじゃなかったと思えました。

──親子を軸にしたドラマは初めてということですが、父親役を演じるようになって感じることはありますか。

 岸監督が僕のそういう部分を見てくれていたのかなと思って、オファーは単純にうれしかったです。プレッシャーは一切ないけど、自分もそういう歳になったのだとちょっぴりですが感慨深いものがありました。大人っていつからが大人なのかわからないけど、ようやく大人の仲間入りというか一歩踏み出せたかなという気持ちはあります。

──タカシというひとりの父親を演じて、あらためて妻夫木さん自身の理想の父親像を聞かせてください。

 タカシほど不器用ではいたくないしもう少し父親らしくはありたいけど、ある程度ああいう距離感で子どもといられるのはいいかなと思いました。同じ目線や立ち位置でいろいろなことを話しながら過ごしていける親子関係を築けたらいいのかな。理想像とタカシはあながち正反対でもないような気がします。人目を気にせず、世間とかもなしに子どもとバカなことができるのも魅力的だと思うし、見習うべきところでもあるのかなと思います。

──ドラマの見どころと視聴者へのメッセージをお願いします。

 僕自身が父親になっていないから説得力がないかもしれないけど、父と子のあり方は“こうあるべき”ってものはないんじゃないかな。一緒に過ごしていく中でお互いを知って、言葉にならない親と子の絆を再確認できるお話だと思います。からっぽだったビンが最後にはいろいろなエネルギーみたいなものであふれているみたいな、そういうものを感じ取ってもらえれば。でもそういうのは関係なしに、普通に楽しんでもらえればいいです(笑)。

──ここから合流した花ちゃんにうかがいます。妻夫木さんの最初の印象と、共演して変わったことを教えてください。

kidnap_53_023豊嶋 オーディションに受かったとき、お父さん役はお笑い芸人みたいなおもしろそうでもうちょっと年上の人だと思っていたので、妻夫木さんだと聞いてびっくりしました。お母さんも妻夫木さんのことが好きだったので、家族みんなで、お兄ちゃんもびっくりしていました。妻夫木さんは演技がうまい方っていうイメージでした。

妻夫木 たいしたことなかった?(笑)

豊嶋 ちがうちがう!(笑) 演技がうまいのに、おもしろいのがプラスされてました。撮影期間中もおもしろくて、現場を盛り上げてくれました。カメラのアングルを変えて何回も撮るので、毎回同じように演技することも勉強したし、合間に遊んだり。2週間一緒だったので勉強になったし楽しかったし仲良くなれました。

 ドラマはNHK総合で8月2日午後7時30分からオンエア。

 


特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

グイ・ルンメイ、真利子哲也監督「お互いが思い合うからこそすれ違う。でもそこには愛があるという家族の形を描きたかった」『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』【インタビュー】

映画2025年9月12日

 ニューヨーク・ブルックリンで暮らすアジア人夫婦を主人公に、息子の誘拐事件をきっかけに夫婦の秘密が浮き彫りとなり家族が崩壊していく姿を、全編NYロケで描いた『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』が、9月12日から全国公開され … 続きを読む

【物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家ストーリー】(3)無鉄砲小僧、恐れを知らぬ行動力

舞台・ミュージカル2025年9月12日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。 ▼無鉄砲小僧、恐れを知らぬ行動力 … 続きを読む

北村匠海 連続テレビ小説「あんぱん」は「とても大きな財産になりました」【インタビュー】

ドラマ2025年9月12日

 NHKで好評放送中の連続テレビ小説「あんぱん」。『アンパンマン』を生み出したやなせたかしと妻・暢の夫婦をモデルにした柳井のぶ(今田美桜)と嵩(北村匠海)夫婦の戦前から戦後に至る波乱万丈の物語は、ついに『アンパンマン』の誕生にたどり着いた。 … 続きを読む

中山優馬「僕にとっての“希望”」 舞台「大誘拐」~四人で大スペクタクル~の再始動で見せるきらめき【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年9月11日

 中山優馬が主演する舞台「大誘拐」~四人で大スペクタクル~が10月10日に再始動する。本作は、天藤真の小説「大誘拐」を原作とした舞台で、2024年に舞台化。82歳の小柄な老婆が国家権力とマスコミを手玉に取り、百億円を略取した大事件を描く。今 … 続きを読む

広瀬すず「この女性たちの化学反応は一体何なんだという、すごく不思議な感覚になります」『遠い山なみの光』【インタビュー】

映画2025年9月9日

 ノーベル文学賞受賞作家カズオ・イシグロが自身の出生地・長崎を舞台に執筆した長編小説デビュー作を、石川慶監督が映画化したヒューマンミステリー『遠い山なみの光』が9月5日から全国公開された。1950年代の長崎に暮らす主人公の悦子をはじめ、悦子 … 続きを読む

Willfriends

page top