「普通にやりながら、ほんのちょっとのスパイスを加えます」 栗原英雄(真田信尹)【真田丸 インタビュー】

2016年3月15日 / 14:02

 NHKの大河ドラマ「真田丸」の主人公、真田信繁(堺雅人)の叔父で、知略に長けた兄昌幸(草刈正雄)の命を受けて、北条家、上杉家との間でさまざまな策略に暗躍する信尹(のぶただ)を演じる栗原英雄。信繁にも大きな影響を与える信尹の覚悟を語る。

 

真田信尹役の栗原英雄

真田信尹役の栗原英雄

-信尹はどんな人物ですか。

 熱い戦国武将の中にあって信尹はクール。これまでさまざまな役をやってきましたし、ちょうど三谷(幸喜)さんが見てくださった舞台で演じていたのが、ちょっとさめた目でクールに世の中を見ている役柄だったので、信尹役に合っていると思っていただいたようです。

-演技面での工夫は?

 相手役と話す時に自分の本質を出さないような芝居はしています。でも見透かされないような芝居をし過ぎてもうそになるので、普通にやりながら、ほんのちょっとのスパイスを加えます。智将ぶりを出すために視線や目の置きどころ、筋肉の動きなども考えています。

-25年間いた劇団四季を退団後は映画にも出演していますが、今回が初めてのテレビドラマですね。

 ずっと演劇だけをやってきて、ソフトボイスでも2千人の観客の最後尾まで聞こえるような発声の訓練はしてきました。テレビの撮影では目の前の相手役と話して、それを音声さんが拾うという違いがありますが、例えば小さな声でも舞台での「芯のある声を出す」という発声は役に立っています。映像の演技は瞬発力が必要ですね。その瞬発力を発揮できる感性やキャッチする能力が大切だと思います。テレビでも舞台でも演技は「ツー・マッチ(やり過ぎ)にならないこと」を心掛けています。台本が面白いと役者はいろいろやろうとしてしまいがちですから。そこをいかにそぎ落とすか。水が流れるように芝居ができたらいいですね。

-兄昌幸役の草刈正雄さんの存在感はすごいですね。

 感覚的で何か飛び出すか分からない、びっくり箱みたいなところがいいですよね。兄との演技で意識しているのは、一歩先を読む気遣いです。せりふの言葉尻に反応するのではなく、兄が発する言葉や目の奥に何があるのか。そういう微妙な要素を拾った方が自分の役が生きると思うんです。相手役の演技をちゃんとキャッチできればできるほど、自分の演技も花開きます。それは徳川家康(内野聖陽)に対しても、上杉景勝(遠藤憲一)や北条氏政(高嶋政伸)に対してもそうです。そこから生まれる演技にこそ一番リアリティーがあると思います。

-内野さん、遠藤さん、高嶋さんとの演技合戦が見ものです。

 内野さんは妥協を許さない方ですね。遠藤さんは目の奥にさまざまな感情が流れていて、それが素直にうそがない言葉として出てくる方。上杉の苦悩をすごく理解して体現されている。高嶋さんは氏政の横柄な感じを出すためにダイナミックなお芝居をしていますが、こっちはそれにこびない信伊を作っています。

-信尹ゆかりの地は訪れましたか。

 信尹公のお墓に参ってきました。お寺の方のお話では、龍岸寺を開基されたのは栗原という方で、その後、中興開基されたのが信尹公だそうです。栗原姓の私が信尹役を演じる深いご縁を感じます。暖かくなったら、また墓前にごあいさつに伺いたいと思っています。


特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【映画コラム】映画は原作を超えたか 沖縄の現代史を背景に描いた力作『宝島』/純文学風ミステリーの趣『遠い山なみの光』

映画2025年9月18日

『宝島』(9月19日公開)  1952年、米軍統治下の沖縄。米軍基地を襲撃して物資を奪い、困窮する住民たちに分け与える「戦果アギヤー」と呼ばれる若者たちがいた。  村の英雄でリーダー格のオン(永山瑛太)と弟のレイ(窪田正孝)、彼らの幼なじみ … 続きを読む

【Kカルチャーの視点】レジェンドたちの「朝鮮の旅」たどった写真家の藤本巧さん

2025年9月18日

 朝鮮の文化を近代日本に紹介した民藝運動家の柳宗悦や陶芸家の河井寛次郎。彼らが1930年代に見た朝鮮の風景に憧れ、1970年に韓国の農村を訪れたのが写真家の藤本巧さんだ。以来50年以上にわたり、韓国の人々と文化をフィルムに刻み続けてきた。 … 続きを読む

エマニュエル・クールコル監督「社会的な環境や文化的な背景が違っても、音楽を通して通じ合える領域があるのです」『ファンファーレ!ふたつの音』【インタビュー】

映画2025年9月18日

 世界的なスター指揮者のティボ(バンジャマン・ラべルネ)は、突然白血病を宣告され、ドナーを探す中で、生き別れた弟のジミー(ピエール・ロタン)の存在を知り、彼の隠れた音楽的な才能にも気付く。兄弟でありながらも異なる運命を歩んできた2人。ティボ … 続きを読む

前田旺志郎「世の中に関心を持つ大切さに気付いた」窪塚愛流「止まっていた時間が動き出した」初共演の2人が福島原発事故を題材にした映画で感じたこと『こんな事があった』【インタビュー】

映画2025年9月16日

 東日本大震災から10年後の福島を舞台に、原発事故で引き裂かれた家族と青春を奪われた若者たちの姿を描いた『こんな事があった』が9月13日から全国順次公開中だ。監督・脚本は、『追悼のざわめき』(88)などで日本のみならず世界の映画ファンから支 … 続きを読む

グイ・ルンメイ、真利子哲也監督「お互いが思い合うからこそすれ違う。でもそこには愛があるという家族の形を描きたかった」『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』【インタビュー】

映画2025年9月12日

 ニューヨーク・ブルックリンで暮らすアジア人夫婦を主人公に、息子の誘拐事件をきっかけに夫婦の秘密が浮き彫りとなり家族が崩壊していく姿を、全編NYロケで描いた『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』が、9月12日から全国公開され … 続きを読む

Willfriends

page top