【真田丸 インタビュー】脚本・三谷幸喜 「敗者が好き。時代に取り残された人たちの人生に興味があります」 

2016年1月4日 / 09:00

 NHKの大河ドラマ「真田丸」で、「新選組!」以来12年ぶりに脚本を担当している三谷幸喜氏。「歴史の敗者が好き」と語る三谷氏が、あくまで希望に満ちた存在として描きたいという主人公・真田信繁(堺雅人)に懸ける思いと、個性的なキャスト陣への期待を語る。

 

脚本の三谷幸喜氏

脚本の三谷幸喜氏

-なぜ真田信繁を主人公に?

  敗者が好きなんです。時代を作った人よりも時代に取り残された人たちの人生に興味があります。戦国では信繁がやりたいと思っていました。その夢がかなったという感じです。勝者は1人だけど、敗者はたくさんいます。何かを成し遂げられず、世に出ずに人生を終える人の方が多い。そういう人たちのために、彼らの代表として敗者を描きたいんです。

-どのように描きますか。

 最後、大坂夏の陣で信繁は死にます。僕は敗者が好きだとは言いましたけど、滅びの美学みたいなものは苦手で、最後まで希望に満ちた信繁でありたいと思っています。死に花を咲かせるためではなく、勝つつもりだったと考えています。どんな思いで大坂城に入り、作戦を立て、兵を動かしたのかと考えれば考えるほどわくわくします。もしかしたら今回は大坂方が勝ち、徳川家康が死ぬのではないかと視聴者が思うような、前向きな信繁にしたいと思っています。

 -よく知られている「幸村」ではなく「信繁」としたことにどんなこだわりが?

 可能な限り史実に近く、歴史に残っていない分だけ想像力で埋めていこうと考えた時に、(豪傑のイメージの強い)真田幸村という名前や「真田十勇士」という物語が邪魔になるんですね。真実の信繁の人生を描きたい気持ちが信繁という名前に込められています。

-信繁はどのような人物だと考えていますか。

  極端に言うと、最後の最後だけ活躍して歴史に残ったものの、それ以外の95パーセントぐらいは何をしていたか分からない人。でも調べるといろんなところに名前が出てくる。そういう部分をつなぎ合わせて、僕らなりの信繁像というものを作っています。今回の信繁は常に部外者であり傍観者。歴史上の出来事を観察し、吸収していく人物なんです。

-堺さんをキャスティングしたポイントは?

 スタッフの方とも相談したのですが、信繁は智将であり、なおかつ傍観者としての存在感が必要。それには堺さんがふさわしいだろうと。実際の信繁って、資料によると、決して豪傑タイプじゃないんですよ。争いの嫌いな静かな人だったらしい。実は去年、堺さんに誘われて、徳川家や真田家の方々が集まったお茶会に行ったんですが、萎縮していた僕と違い、彼は子孫の方々とも堂々と渡り合っていました。そんな堺さんを見て、自分の描く信繁像がはっきりしました。繊細だけど度胸がある。物静かだけど剛胆。まさに堺さんしか演じられないキャラです。

 -その他の方は?

 言っておきますけど、僕にキャスティング権はないですからね。希望は言いますけど。それを踏まえた上で。兄の信幸は信繁の陰に埋もれさせたくなかったので、思い切って大泉洋さんにお願いしました。彼はお芝居が上手だし、心で演じられる。ただ本人にはくれぐれもふざけ過ぎないようにと毎日のように電話で言っています(笑)。きりはたぶん視聴者にとっては一番身近な存在で、感情移入する人が多いから、親しみやすくしたかったんです。去年、長澤まさみさんと舞台を一緒にする中で、役に対する取り組み方がとても素晴らしいと感じていたので、この方なら1年間、視聴者と共に信繁に付いていけると確信しました。家康役は、悩みや不安を山ほど抱えた小心者の家康が、彼なりの人生経験を経て、やがて僕らの知っているあの“たぬきおやじ”になっていく、そういう長いスパンで演じられる人ということで内野聖陽さんに。誰よりも戦国の香りが漂う方ですし。

-信繁にとってきりはどんな存在なのでしょうか。

 信繁ときりは付かず離れずで、けんかもする。でも信繁のたくさんの側室の中で、信繁の心の一番大事なところにいた人が、きりだということが最後の最後に分かる、そんな存在です。ずけずけとものを言うし、当時の戦国の枠からはみ出た破天荒なところもある。信繁も型にはまらない人なので、自由人である信繁が結局一番心を許したのは自由人であるきりだったということでしょう。

-ユーモラスなシーンも多そうですね。

 通常の大河ドラマよりは多いかもしれないですが、コメディーにしようとは思っていません。僕にとってユーモア、笑いとは人を描くことなんです。年表を見て笑う人はいませんが、だんだん目線を下げていくと、それぞれの登場人物として生きている人たちの顔が見えてきて、言葉や息遣いが見えてくる。彼らも泣いたり怒ったりするのと同じように笑ったでしょう。そうなると当然そこにはユーモアが必要です。

-脚本執筆の中で一番難しいと感じたのは?

  本能寺の変の後、関東で何があったかを描く「天正壬午の乱」ですね。北条と上杉と武田、そこに真田がいる構図。資料を見ながらこれは日本版三国志だと思いました。権謀術数が入り混じったこの歴史劇を、まだドラマできちんと書いた人はいないんじゃないかな。だからプレッシャーだったし、力も入りました。

-真田家の描き方にも注目です。

  真田信幸が大大名ではなかったのが、面白いですね。なんかこじんまりしている。真田家はアットホームで理想の家族像。そういう人たちが歴史の中にもまれ、どう分散していくのか。それでも心の隅に家族というものをずっと抱えて生きている。そんなイメージがあります。

-「新選組!」「真田丸」といずれもグループの名前ですね。

  僕が書きたいものは群像劇のイメージがあり、当然、「新選組!」もそうです。「真田丸」でも各地の武将や真田家、そして大坂城に住む人たち、そして最終的には大坂の陣で大坂城に集まってきた人たち。それぞれの群像劇です。そういう意味で誰か1人の名前を置くよりは、グループの名前にしました。本当は「真田丸!」にしたかったんですが、悪のりって言われそうなので、やめました。

-大河ドラマの魅力は?

 昔は日曜日の夜はテレビの前に集まって、家族で一緒に大河ドラマを見ていました。一家だんらんの要みたいな存在でした。そういう大河を僕は今回の「真田丸」で再現したいと思っています。 


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