【真田丸 インタビュー】長澤まさみ(きり) 「行儀の良いヤンキーみたいな感じが私と共通する」

2016年1月2日 / 09:04

 NHKの大河ドラマ「真田丸」の主人公・真田信繁(堺雅人)と青春時代から親しく、側室になった後も、大坂夏の陣で信繁が戦死するまで、常にそばに居てその波乱の生涯を支え続けたきりを演じている長澤まさみ。きりに託された戦国時代の女性の思いを語る。

 

きり役の長澤まさみ

きり役の長澤まさみ

-大河ドラマは3回目ですね。

 忍びの役しかやったことがなかったので(笑)、初めて側室を演じるのが楽しみです。

-三谷幸喜さんが描く戦国の女性たちのことをどう感じましたか。

 これまで戦国時代の女性というと、一般的には「物」というイメージしかなくて、当時の女性の身分の低さを考えざるを得ないという状況がありました。でも今回は、三谷さんが戦国時代に生きる女性に人間らしさという息吹を吹き込んでくれている感じがして、戦国時代に対する愛を感じます。

-きりはどういう女性だと考えていますか。

 おせっかいなおばさん(笑)。信繁の隣でずっとしゃべっているんですよ。

-プロデューサーや監督からは、きりは“戦国のヤンキー”と言われていますね。

 きりは自分を貫いている。それがヤンキーという言葉に通じているんだと思います。

-きりの人間性が分かるような役作りはしていますか。

 食べるシーンではよく食べ、しゃべるシーンではよくしゃべるように表現しています。感情の赴くままというのが若い時のきりだと思っていますので。

-堺雅人さんはいかがですか。

 毎週月曜日のリハーサルでは、監督が決めてきた三谷脚本の笑いどころみたいな部分だけでなく、演じていく上でのいろんな気づきみたいなことを堺さんも提案して芝居を作っています。そういうところを見ると、本当に笑いのセンスがある人なんだなと思います。視聴者の方がちゃんと信繁の気持ちに沿っていけるような芝居をされているので、すごいなと思います。掛け合いが多いので、必死で付いていっています。とにかく、すごく頼りになる方です。

-三谷さんからは何か言われましたか。

 「きりのせりふは現代語に近いからこそ、どう読むかはあなたがちゃんと考えてやりなさい」と言われています。現代語的ではありますけど、言い回しをちゃんと気を付ければ時代劇になると思います。きりがそういう言葉遣いをすることで、若い人が時代劇に興味を持つ入口になれるのかなと思います。

-三谷作品の魅力は?

 わざわざ役者の側から笑わせようと思わなくてもいつのまにか笑いになっているという脚本の正確さがすごいと思います。

-きりは信繁のどういうところに引かれているのでしょうか。

 きりにとっては、常に悩んだり疑問を抱えたりしながら生きている信繁がかわいく思えるのかなと。母性本能というよりは、純粋な乙女心の方が強い気がします。今後もこの力関係は変わらないでしょうね。信繁が頑張って敵や難局に立ち向かっている姿にほれぼれとしているきりが、それをずっと見ている。良い意味で一歩下がった女性である側室に、いつしか支えられている信繁なのかなと思っています。

-きりは真田家の重臣の娘。家族のシーンで大事にしていることはなんですか。

 武家の娘として厳しく育った姿を見せられたらと思っています。お父さんに反抗するシーンもありますが、きりは基本的には枠からはみ出せない人間なので、行儀の良いヤンキーみたいな感じです(笑)。私と共通する点もそこで、割と自分の出番が来るまでじっと待っている方なんです。

-真田の里で印象に残ったことは?

 長野県は自然が豊かでのどかなところです。真田の里で育った人たちはすごく穏やかで伸び伸びとしています。私も静岡で伸び伸びすくすくと成長させてもらったので、きりと(育った環境が)似ているなと思いました。

-きりは信繁の初恋の相手で最初の子どもを産む梅ちゃんのことはどう思っているんでしょう。

  良い子だなと思っていると思いますけど、やっぱりうらやましいんだと思います。自分とは違う魅力を持った人だからこそ、かなわないと思うのではないでしょうか。

-演じている黒木華さんはどうですか。

 ずっと共演してみたかったんです。年下なんですけど、一緒にリハーサルをやっていると楽しいし、他の人にはない強さがある女優さんだと感じます。

-これまでで楽しかったシーンは?

 草笛(光子)さんと一緒にお芝居したこと。せりふ回しは歌のように聞こえますし、着物を着ている時のたたずまいはとても勉強になります。共演者のお芝居を見ていると、きりという役の伸びしろを作ることができるので、役者同士のお芝居の化学反応が楽しいです。

-ドラマの見どころは?

 戦国時代を知らない人でも回を重ねるごとに分かっていける、分かりやすいドラマ。きりが今後、信繁にとってどれほど重要な人物になっていくかが面白いところだと思います。

 


特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【映画コラム】映画は原作を超えたか 沖縄の現代史を背景に描いた力作『宝島』/純文学風ミステリーの趣『遠い山なみの光』

映画2025年9月18日

『宝島』(9月19日公開)  1952年、米軍統治下の沖縄。米軍基地を襲撃して物資を奪い、困窮する住民たちに分け与える「戦果アギヤー」と呼ばれる若者たちがいた。  村の英雄でリーダー格のオン(永山瑛太)と弟のレイ(窪田正孝)、彼らの幼なじみ … 続きを読む

【Kカルチャーの視点】レジェンドたちの「朝鮮の旅」たどった写真家の藤本巧さん

2025年9月18日

 朝鮮の文化を近代日本に紹介した民藝運動家の柳宗悦や陶芸家の河井寛次郎。彼らが1930年代に見た朝鮮の風景に憧れ、1970年に韓国の農村を訪れたのが写真家の藤本巧さんだ。以来50年以上にわたり、韓国の人々と文化をフィルムに刻み続けてきた。 … 続きを読む

エマニュエル・クールコル監督「社会的な環境や文化的な背景が違っても、音楽を通して通じ合える領域があるのです」『ファンファーレ!ふたつの音』【インタビュー】

映画2025年9月18日

 世界的なスター指揮者のティボ(バンジャマン・ラべルネ)は、突然白血病を宣告され、ドナーを探す中で、生き別れた弟のジミー(ピエール・ロタン)の存在を知り、彼の隠れた音楽的な才能にも気付く。兄弟でありながらも異なる運命を歩んできた2人。ティボ … 続きを読む

前田旺志郎「世の中に関心を持つ大切さに気付いた」窪塚愛流「止まっていた時間が動き出した」初共演の2人が福島原発事故を題材にした映画で感じたこと『こんな事があった』【インタビュー】

映画2025年9月16日

 東日本大震災から10年後の福島を舞台に、原発事故で引き裂かれた家族と青春を奪われた若者たちの姿を描いた『こんな事があった』が9月13日から全国順次公開中だ。監督・脚本は、『追悼のざわめき』(88)などで日本のみならず世界の映画ファンから支 … 続きを読む

グイ・ルンメイ、真利子哲也監督「お互いが思い合うからこそすれ違う。でもそこには愛があるという家族の形を描きたかった」『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』【インタビュー】

映画2025年9月12日

 ニューヨーク・ブルックリンで暮らすアジア人夫婦を主人公に、息子の誘拐事件をきっかけに夫婦の秘密が浮き彫りとなり家族が崩壊していく姿を、全編NYロケで描いた『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』が、9月12日から全国公開され … 続きを読む

Willfriends

page top