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続いては、『ソーシャル・ネットワーク』(10)、『マネーボール』(11)、『スティーブ・ジョブズ』(15)と、実在の人物の知られざる裏側を描いてきた名脚本家アーロン・ソーキンの監督デビュー作『モリーズ・ゲーム』。
今回のソーキンは、ジェシカ・チャステインを主役に迎え、スキー、モーグルのオリンピック候補から一転、26歳でセレブが集う高額ポーカールーム(レオナルド・ディカプリオも顧客の一人だった)の経営者となりながら、違法賭博の罪でFBIに逮捕された実在の女性モリー・ブルームの数奇な半生を描いている。
チャスティンが『女神の見えざる手』(16)に続いて、悪女と見せかけておいて、実は…という主人公のモリーを見事に演じている。それは、ソーキン監督が「これは正しい決断をした人の物語なんだ。だがその結果彼女は、大金も名声も失う」と語るように、モリーがFBIによる司法取引で顧客名を要求されながら、断固として断ったこと事実を指す。モリーは“男前な女性”なのだ。
そしてモリーはもとより、彼女の弁護士(イドリス・エルバ)、個性的な顧客たち、モリーと対立する父親(ケビン・コスナー)などの人間ドラマがしっかりと描かれているから、ポーカーのルールを知らなくても十分に楽しめる。さすがは実録映画の名手ソーキン。この映画も見事に面白い。
(田中雄二)