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ところで、映画の中の人物が現実に現れるさまを描いたのは本作が初めてではない。『キートンの探偵学入門』(24)では映写技師が現実とスクリーンの中を行き来するし、『ボギー!俺も男だ』(72)では、ハンフリー・ボガートのそっくりさんが映画から出てきてウディ・アレンに恋の指南をし、そのアレンの監督作『カイロの紫のバラ』(85)では、ジェフ・ダニエルズ演じる映画の中の探検家が、外に出てきて人妻のミア・ファローと恋に落ちる。ただ、いずれも映画と現実を行き来するのは男性なので、今回は映画の中から女性が出てくるところに新味がある。
また、現実と非現実のはざまで展開する、時を超えた恋愛という点では、『幽霊と未亡人』(47)や『ある日どこかで』(80)があるが、どちらも年を取るのは女性の方で、男性は若いまま。この点も今回は逆になっているのが面白い。
レンタル店などを利用すれば、本作のアイデアの基になったであろうこれらの映画は簡単に見ることができる。本作が気に入った人は、見比べてみるのも一興だろう。(田中雄二)