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今回、続編を監督したヴィルヌーヴは、自ら「『ブレードランナー』の大ファン」と公言するだけに、ファン代表として映画を作ったようなところがある。
記憶が鍵を握るストーリー展開、フィルムノワール的な美学、くすんだ色調、ダークでウエットな都市の雰囲気、魅力的でありながら恐ろしい未来の光景、ヒーローと悪役の境界線にいる主人公など、前作からの踏襲を前面に出しながら、同時に前作が残した謎解きにも挑んでいる。
従って、自分も含めた前作からのファンには満足感を与えるものの、前作を見ていない一般的な観客が理解するには少々厳しいものがあると思われる。
前作が描いた2019年の世界は、今われわれの目前にある現実の2019年とは大きく異なっている。だから本作が描いた未来世界も、必ずしも現実の先にあるものというわけではない。あくまでも『ブレードランナー』という映画における未来図なのだ。
その点を忠実に描いたところが本作の最大の魅力ではあるのだが、同時に『ブレードランナー』という素材を使って描く世界の限界も、露呈させてしまったのではないだろうか。(田中雄二)