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一方、物語の中心となるこはぜ屋の社員たちも個性的な顔ぶれがそろっている。その中でもひときわ熱い芝居で存在感を示しているのが、中堅社員・安田を演じる内村遥だ。
ひげを伸ばした風貌から“老舗の足袋屋”の雰囲気を漂わせつつ、熱のこもった演技で“従業員たちのまとめ役”らしさを発揮。いい意味で“田舎のあんちゃん”ぽさがある。今までに10年以上のキャリアを持つ俳優だが、これをきっかけに活躍の場を広げるのではないだろうか。
続いては、こはぜ屋のメインバンクの企業融資担当・大橋を演じる馬場徹。本作と同じ池井戸潤原作の日曜劇場「ルーズヴェルト・ゲーム」(2014)では社会人野球の選手を演じたが、故障でチームを去った際には、退場を惜しむ声が続出するほどの人気を集めた。
本作では、好青年ぶりを披露した「ルーズヴェルト・ゲーム」から一転、融資を渋ってこはぜ屋を苦しめる銀行員役。だが、第5話では、こはぜ屋の将来性を認めて陸王開発をサポートする一面も見せ、単なる憎まれ役とは言い切れない人間味をにじませた。
この他、連続ドラマ初レギュラーながら、ムードメーカーとして存在感を発揮する阿川、元陸上選手という自身のキャリアを生かしてダイワ食品陸上部の選手を好演する和田正人など、出演者の適材適所の活躍が、物語を引き立てている。池井戸潤原作のドラマは、日曜劇場としては「半沢直樹」(2013)から数えて4作目となるが、これまでも絶妙なキャスティングで何人もの俳優の魅力を引き出してきた。「陸王」からもそんな俳優が現れることを楽しみに、ドラマの行方を見守っているところだ。(井上健一)