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「逃げんか、あほたわけ!」
4月16日に放送されたNHKの大河ドラマ「どうする家康」第14回「金ヶ崎でどうする!」のクライマックス、朝倉・浅井連合軍の挟み撃ちに遭った主人公・徳川家康(松本潤)が、撤退をためらう織田信長(岡田准一)に放った一言だ。
この回、家康は信長に従って越前の朝倉義景討伐に出陣するが、そこで見られたのは今までとは一味違う姿だった。
これまで、幼少期に受けた“しごき”のトラウマもあり、信長に全く頭が上がらなかった家康。だが今回は、浅井長政(大貫勇輔)の裏切りを察して撤退を進言した際、信長が「わが義弟は義の男じゃ。二度と辱めるな」と一蹴すると、「ただひたすらに、信長殿の機嫌をうかがうだけのやからとは違いまする。義の男であるが故に、裏切るということもあろうかと」と食い下がってみせた。
さらに信長が「俺がやっていることに、やろうとしていることに義がないとでも言いたいのか?」「おまえも俺を信じんのか!?」などと立て続けに詰め寄ると、「お主を信じられん者もおる!」「おまえの心のうちなど、分かるもんか!」と負けずにやり返す。
最終的に、お市(北川景子)の侍女・阿月(伊東蒼)が危機を知らせた際、信長が撤退を決断する決め手となったのが、冒頭の一言だった。
この家康の変化は何を意味するのか。これまで家康は、領地である三河周辺で戦いを繰り広げてきた。だが、その相手が育ての親の今川家だったこともあり、「(今川の本拠地である)駿府に帰りたい」「今川領に残された妻子を取り戻したい」と、過去を振り返る姿勢が端々で目についた。
そうなると、どうしても姿勢は後ろ向きにならざるを得ない。それが家康の弱気な姿勢につながっていたように思える。
だが、妻子を無事に取り戻し、今川との戦いも一段落した今、これからは天下を狙う信長と共に、三河の外に向けて歩みを進めていくことになる。そうなると、後ろ向きだった家康の姿勢も、必然的に変わってくるはずだ。
さらにこれまで積み重ねた成功体験も、家康にとって一つの自信となったに違いない。これらが、この回の家康の強気な姿勢を導き出したとはいえないだろうか。