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NHKで放送中の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」。9月16日に放送された第39回「穏やかな一日」では、政治の実権を握った主人公・北条義時(小栗旬)の姿が描かれた。
これまで義時は、源頼朝(大泉洋)、頼家(金子大地)、実朝(柿澤勇人)という、主君“鎌倉殿”を支え、巧みな交渉術を武器に、幕府を何とかあるべき姿に導こうと尽力してきた。
そして前回、父・時政(坂東彌十郎)を追放し、自分が政(まつりごと)を仕切っていくと宣言した義時は、居並ぶ御家人たちの前で三浦義村(山本耕史)から「おまえは己の欲のために、父親を執権の座から追い落したのか?」と問われ、「そうではない。時政になり代わり、私はこの鎌倉を守る。それができるのは、私しかいない」と答えている。
この言葉を受け、実権を握った今、義時らしい私利私欲のない筋の通った政治が実現するのかと期待を込めて迎えた今回。
ところが義時は、各地の守護を交代制に改めようとする一方、北条家が務める国司は終身制を維持するなど、「おやじを追い出した途端にやりたい放題」(和田義盛)と、御家人たちの反発を招く結果となった。
急変したかのように傍若無人に振る舞う義時の真意はどこにあるのか。演じる小栗が番組公式サイトに公開されたインタビューで、その思いを次のように語っている。
「義時は『確実に、こうした方がこの東の武家が生活していくためにはいいはず』とずっと考えているんですけど、それを理解してくれる人間があまりに少ないという状態が続いている。結局みんなは『自分の立場を上にしたい』と思っているから…」
「本来、義時は恐怖で人を支配するなんてしたくなかったはずなんですけれど、『力によってある程度みんなを抑えておかないと反発が起こる』と徐々に気付かされて、『そうしないと、なかなかみんなで同じ方向を向くことは難しいんじゃないか』と思っている」
なるほどと納得できる言葉だ。御家人たちの不満を知った政子(小池栄子)とのやり取りで、「それでもやらねばならぬのです。二度と北条に歯向かう者を出さないために」と語ったのも、和田義盛(横田栄司)の上総之介推挙に待ったを掛ける一方で、主君・実朝を脅して北条家の家人に過ぎなかった鶴丸改め平盛綱(きづき)を御家人にしようとしたのも、その布石と考えると合点がいく。
だが、そこには危うさもある。今まで“鎌倉殿”という重しを背負いながら働いてきた義時だが、それが外れた今、暴走する可能性はないのか。独裁的な権力が腐敗していくのは、歴史の必然だ。
前述した小栗の言葉でその真意は理解しつつも、ドラマを見ていると、どことなくそんな不安も漂ってくる。(その微妙な不安をにじませる小栗の名演には拍手を送りたい)。