【インタビュー】松本幸四郎&吉田都が語る、古典芸術の未来「新たなやり方も必要だと実感」

2021年6月2日 / 08:00

 松本幸四郎が構成・演出を手掛ける「第4回 日本舞踊 未来座=祭 (SAI)=『夢追う子』」が6月4日から都内・国立劇場小劇場で上演される。今回の公演をきっかけに、新国立劇場バレエ団の芸術監督を務める吉田都との対談が実現。それぞれの舞踊について、そして古典芸術への思いを聞いた。

松本幸四郎(左)と吉田都(撮影:阿部章仁)

-幸四郎さんは歌舞伎の世界を、吉田さんはバレエの世界をけん引していますが、お互いの踊りに対する印象を教えてください。まず、吉田さんは、日本舞踊については、どのような印象がありますか。

吉田 バレエとは踊り方が真逆なところがあるのかなと思います。バレエでは、重力に逆らう動きが多いのですが、日本舞踊では重心を、下に、下に持ってくると先ほどお伺いしました。そのように踊りの違いはありますが、伝統という意味では共通するところもあると感じます。

-幸四郎さんは、バレエについてどう感じていますか。

幸四郎 繊細ではあるけれども、研ぎ澄まされた力強さのある芸術だと思います。その繊細さは壊れそうな繊細さではなく、力強さがある。積み重ねて作り上げられた肉体があるからこその力強さなのかなと思います。

-同じ古典の舞踊ということの親近感はありますか。

幸四郎 そうですね、それはあります。どちらも、古典作品であっても演出が変わったりと、変化があって、進化していく。時代に対応しているという共通点もあると思います。

-幸四郎さんが手掛ける「第4回 日本舞踊 未来座=祭 (SAI)=『夢追う子』」の見どころを教えてください。

幸四郎 「未来座」は、毎年行っている、日本舞踊協会の新作公演になります。今回は、昨年、新型コロナの影響により中止となってしまった公演を行うことになりました。この「未来座」では、さまざまな題材、音楽、演出を取り入れ、日本舞踊の新たな可能性を探りたいと思っています。「夢追う子」では、日本舞踊を得意技とする日本舞踊家たちが存分に踊る姿を見ていただきたいです。多くの流派の方々から構成された47人が再び集まりました。皆さんが踊るパワーやエネルギーを感じていただけたらと思います。

-新国立劇場バレエ団では、6月5日から「ライモンダ」が上演されます。本作の見どころを吉田さんからお願いします。

吉田 「ライモンダ」は私も初演のときに踊らせていただいた演目になりますが、久しぶりの上演になります。牧阿佐美先生が演出されたバージョンは、シンプルでストーリーがより分かりやすく感じられるものになっています。恋の三角関係が繰り広げられる、ドラマチックな舞台展開展開を楽しんでいただきたいと思います。私自身が出演した際には、「踊りで見せる」ということにすごく苦労した思い出がありますが、まさに純粋に踊りも堪能できる作品でもあります。そして、ルイザ・スピナテッリさんの衣裳と美術が素晴らしいので、そちらも注目していただければ。衣裳はシルエットもすてきですが、色合いはまるで宝物のようです。総合芸術として、踊りも美術も音楽も、全てを楽しんでいただける作品になると思います。

-現在も、演劇界では新型コロナウイルスによる影響が続いている状況ですが、コロナ禍での舞台芸術についての考えを教えてください。幸四郎さんは、2020年から「図夢歌舞伎」の生配信やYouTubeでの限定配信なども積極的に行っていますね。

幸四郎 僕は、歌舞伎や日本舞踊を見ていただくことが役目だと思っているので、それだけを考えれば、必ずしも(生で)舞台をお見せするという形だけではないだろうと思ったのです。では、お芝居をするにはどうしたらいいかと考えると、必然的に配信という選択肢になりました。もちろん、立ち止まるというのもすごい決断だと思いますが、僕は半歩でも、1ミリでもいいから前進し続けたいと思い、そのために何ができるかと考えて動きました。昨年、「未来座」が公演中止になってしまった際には、映像でお見せしようと考え、NHKの「にっぽんの芸能」という番組にお願いし、放送していただけることになりました。ただ、コロナ禍で47人の出演者が集まって撮影することはできませんでしたので、1人ずつ撮影し、47人分の映像を1つに構成して1つの作品といたしました。こういった映像、配信は舞台とはまた違う魅力があるものだと思います。現在、舞台は開いていますが、配信での歌舞伎も、ここがこれから100年続くうちの1年目だと思って挑んでいき、どんどん進化していければいいなと思っています。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

二宮和也「子どもたちの映画館デビューに持ってこいの作品です」『シナぷしゅ THE MOVIE ぷしゅほっぺダンシングPARTY』【インタビュー】

映画2025年5月17日

 テレ東系で毎週月~金、朝7時30分から放送中の乳幼児向け番組「シナぷしゅ」の映画化第2弾。番組のメインキャラクター「ぷしゅぷしゅ」と相棒「にゅう」が、バカンスで訪れた「どんぐりアイランド」を舞台に繰り広げる冒険をオリジナルストーリーで描き … 続きを読む

【週末映画コラム】異色ホラーを2本 デミ・ムーアがそこまでやるか…『サブスタンス』/現代性を持った古典の映画化『ノスフェラトゥ』

映画2025年5月16日

『サブスタンス』(5月16日公開)  50歳の誕生日を迎えた元人気女優のエリザベス・スパークル(デミ・ムーア)は、容姿の衰えによってレギュラー番組を降ろされたことから、若さと美しさと完璧な自分が得られるという、禁断の再生医療「サブスタンス= … 続きを読む

新原泰佑、世界初ミュージカル化「梨泰院クラス」に挑む「これは1つの総合芸術」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年5月16日

 世界中で大ヒットを記録した「梨泰院クラス」が、初めてミュージカル化される。主人公のパク・セロイを演じるのは小瀧望。日本・韓国・アメリカのクリエーターが集結し、さまざまな人種が混じり合う自由な街・梨泰院で権力格差や理不尽な出来事に立ち向かう … 続きを読む

グレッグ・ターザン・デイビス「とにかく、ただ純粋に面白い映画を撮ることだけが、自分たちに与えられたミッションでした」『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』【インタビュー】

映画2025年5月15日

 トム・クルーズ主演の大ヒットスパイアクション「ミッション:インポッシブル」シリーズの第8作『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』が、5月23日の公開に先駆けて17日から先行上映される。前作『ミッション:インポッシブル/デッ … 続きを読む

研ナオコ、認知症のおばあちゃん役で9年ぶりの映画主演「主演女優賞を狙ってます(笑)」岡﨑育之介監督「研さんの人生の奥行きがにじみ出た」『うぉっしゅ』【インタビュー】

映画2025年5月12日

 人生に迷いながらソープ嬢として働く若い女性・加那と、彼女に介護されることになった認知症の祖母・紀江の交流を明るくポップなタッチで描いたユニークな映画『うぉっしゅ』が絶賛公開中だ。  本作で、加那を演じる若手注目株の中尾有伽と共に、紀江役で … 続きを読む

Willfriends

page top