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俳優を主人公に、“演じること”について描いた映画が相次いで公開された。まずは、是枝裕和監督が撮ったフランス映画『真実』から。
フランスを代表する大女優ファビアンヌ(カトリーヌ・ドヌーブ)が『真実』というタイトルの自伝を出版することに。そこに、アメリカで脚本家として活躍する娘のリュミール(ジュリエット・ビノシュ)と夫のテレビ俳優ハンク(イーサン・ホーク)と娘のシャルロットがやって来る。
彼らに、ファビアンヌの現在のパートナー、元夫、執事を加えた、出版祝いを口実に集まった“家族たち”の騒動の様子を、ファビアンヌの新作映画の撮影と並行して描く。
是枝監督自身が「自分の中でも最も明るい方へ振ろうと考えて現場に入った」と語る通り、彼の映画にしては珍しくトーンが明るく、軽やか。いつも通りに“家族”を描いてはいるが、説教も主張も、問題提起もなく、すがすがしい印象を受けた。
ドヌーブが、亡くなった姉のフランソワーズ・ドルレアックとの関係をほうふつとさせるエピソードも含めて、「どこまでが演技でどこからが真実なのか」という女優の性(さが)を見事に体現。それを受けて立ったビノシュもまた見事だった。
この映画を見ながら、昔、名女優の杉村春子が「病気の夫を看病し、涙した際に『今のは演技か』と言われて悔しかった」と語っていたと、どこかで聞いたことを思い出した。