「人見絹枝さんの思いを、次の世代の子どもたちに伝えたい」菅原小春(人見絹枝)【「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」インタビュー】

2019年7月7日 / 20:50

 金栗四三(中村勘九郎)が日本人として初めて出場したストックホルムから16年。1928(昭和3)年のアムステルダムオリンピックで、ついに日本初の金メダルを獲得する。この大会で選手たちの奮起を促したのが、日本人女性初のオリンピック選手・人見絹枝の800メートル走銀メダルだった。第26回で描かれた彼女の物語に、心動かされた視聴者も多いに違いない。演じたのは、ダンサーとして世界的に活躍する菅原小春。初めて演技に挑戦した感想、人見絹枝役に込めた思いなどを聞いた。

人見絹枝役の菅原小春

-第26回、絹枝が銀メダルを取る800メートル走の場面は素晴らしかったです。ご自身でご覧になった感想は?

 すごい…としか言えません。私自身、まだ冷静に見られる状態ではなく、何と言ったらいいのか分かりませんが、全身の毛穴が開いて、大きな波に自分の感情を全部持っていかれたような感覚になりました。

-その前、絹枝が「800メートル走に出場させてほしい」と泣きながら訴える場面では、菅原さん自身の気持ちが表れていたように感じました。

 私にはお芝居の知識がないので、演技を作り込むようなことはできません。ただ、人見さんや(彼女に陸上を勧めてくれた)シマ(杉咲花)さん、その他いろんなことを考えたら、ああなっていました。だから多分、私は普段からあんなふうに泣いているんだと思います(笑)。

-人見絹枝役を演じる上で、どんな準備をしましたか。

 資料は読まないようにしました。人見さんの写真を見たとき、その顔から、ただ走るのが早いだけの人とは違う、魂を燃やして生きてきた人ならではのすごみが伝わってきたんです。それを一瞬で感じさせるようなすさまじい人だったんだ…と。そう考えたら、誰かが書いたものを読んで情報を得るのではなく、三段跳びや走り幅跳びなど、残っている人見さんの映像を見て、そこから自分が得たインスピレーションで演じたいと思いました。
 撮影後に、岡山で人見さんの親族の方にお会いし、お話を伺ってきました。写真を撮ることが好きだったそうで、シンガポールなどいろいろな場所に遠征に行ったときの写真を貼ったノートも見せていただきました。そこに書き込まれた言葉にはユーモアがあふれている上に、文字もチャーミング。とても女性らしい方ですが、言葉の端々から内に秘めた燃える思いが伝わってきました。

-お芝居の中で、ダンスの経験が生きた部分は?

 人見さんの頃は、トレーナーなんていないし、今のようにきちんとした走り方や投げ方もなく、みんなで試行錯誤しながらやっていたはずです。だから、演じる上では気持ちを優先しようと。ダンスのときは、私もどちらかというとテクニックより魂が先行することが多いので、そういう意味では、ダンスに近い感覚で演じることができました。

-人見さんに共感する部分はありましたか。

 とても共感しました。私も体が大きいので、バックダンサーをやっていた頃、目立ち過ぎて「少し下がって」と言われることが多く、コンプレックスを感じていた時期があったんです。でも、海外に飛び出してみたら、私ぐらいの体格はごく普通。それ以来、コンプレックスが強みに変わるように、自分を磨いていかなければ…と考えられるようになりました。そういう点では、人見さんに通じるものがあります。

-第26回は、居場所のなかった人見絹枝という人が、自分の居場所を見つけていく物語としても心打たれるものがありました。どんなことを感じましたか。

 その点も、自分と重なるものがありました。私も、いつも1人で行動しているので、孤独を感じることが多いんです。海外に出掛けるときも、1人で大きな荷物を持ってバックパッカーのようなことをしていますし。だから、家に帰ると寂しくなって、お風呂で大泣きしたり…(笑)。ダンスも、自分で振り付けをして、自分で踊らなければいけません。そのために自分を追い込み過ぎて、犬が自分の尻尾を追いかけてグルグル回っているような状態になることも多くて…。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

門脇麦、「芝居に対してすごく熱い」田中圭と夫婦役で5度目の共演 舞台「陽気な幽霊」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年4月2日

 田中圭を主演に迎え、若村麻由美、門脇麦、高畑淳子ら豪華共演者で贈る舞台「陽気な幽霊」が5月3日から開幕する。本作は、20世紀を代表する劇作家ノエル・カワードによるウェルメイド・コメディー。1945年にはデヴィッド・リーン監督により映画化も … 続きを読む

今田美桜「『アンパンマン』のように、幅広い世代に愛される作品に」連続テレビ小説「あんぱん」いよいよスタート!【インタビュー】

ドラマ2025年4月1日

 3月31日から放送スタートしたNHKの連続テレビ小説「あんぱん」。『アンパンマン』を生み出したやなせたかしと妻・暢の夫婦をモデルに、何者でもなかった朝田のぶと柳井嵩(北村匠海)の2人が、数々の荒波を乗り越え、“逆転しない正義”を体現した『 … 続きを読む

坂本昌行&増田貴久がミュージカルで初共演「笑顔になって、幸せになって帰っていただけたら」 ミュージカル「ホリデイ・イン」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年4月1日

 坂本昌行と増田貴久をはじめとした豪華キャストが出演するミュージカル「ホリデイ・イン」が4月1日から開幕する。本作は、1942年に公開された映画『Holiday Inn』(邦題『スウィング・ホテル』)をもとに舞台化されたミュージカル作品。「 … 続きを読む

藤原竜也が挑む「マクベス」 「1日1日、壁を突破することが目標」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年3月29日

 2024年5月にスタートした、吉田鋼太郎が芸術監督を務める【彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd】。待望の二作目となる「マクベス」が、藤原竜也を主演に迎え、5月8日から上演される。藤原に初めて挑む「マクベス」への思いや吉田とのクリエイトに … 続きを読む

竈門炭治郎を演じる阪本奨悟が語る、舞台「鬼滅の刃」の魅力 「生身の人間が演じているからこそ、リアルに共感できる」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年3月28日

 「週刊少年ジャンプ」で2020年5月まで連載していた吾峠呼世晴による大ヒット漫画『鬼滅の刃』。2020年に初めて舞台化されて以降、シリーズを重ね、4月11日からはシリーズ5作目となる、舞台「鬼滅の刃」其ノ伍 襲撃 刀鍛冶の里が上演される。 … 続きを読む

Willfriends

page top