「大久保さんの妻らしく、なるべく手際よく振る舞うことを心掛けました」美村里江(大久保満寿)【「西郷どん」インタビュー】

2018年11月25日 / 20:50

 各地で士族たちの反乱が勃発する中、政府の中枢で活躍する大久保利通(瑛太)の家族にも危険が及び始める。難を逃れるため、鹿児島で暮らしていた妻の満寿は、ついに子どもたちを連れて東京へ。だが、東京には大久保との間に息子・達熊をもうけた元芸妓・ゆう(内田有紀)がいた…。物語が緊迫の度合いを増す中、第44回では懸案だった大久保の家族の問題がユニークな形で山場を迎えた。薩摩時代から大久保を支えてきた満寿を演じる美村里江が、これまでの撮影を振り返ってくれた。

大久保満寿役の美村里江

-第44回、東京にやって来た満寿は、ついにゆうと対面しました。

 内田さんも私も「何を話すのかな?」と、とても楽しみにしていたんです。女同士の本音のぶつかり合いは、中園(ミホ/脚本家)さんの得意とされるところ(笑)。どんな台本になるのか楽しみに待っていたら、意外にも何を話したのか明らかにしないという展開。本妻対愛人として思い切りやり合いたかった気持ちもありますが、中身をつまびらかにしないことで、大久保さんに謎のプレッシャーがかかるというのも面白かったです(笑)。

-これまで大久保の妻として満寿を演じてきた印象は?

 大久保夫妻に対する私の印象は「器用になりたい不器用な人たち」。2人ともどんどん変化していけばいいと考えているけど、その実、なかなか変わることができない不器用な面がある。大久保さんは立場も変わったし、ひげを生やして洋服を着たりしているけど、その本質は変わっていない。昔ながらの嫁として大久保家を守ることを考え、ゆうとの対面を避けてきた満寿からも、現状を維持しようとする意識がうかがえます。そういうふうに、先進的に見えて保守的なところがある者同士の2人だったから、夫婦でいられたのではないかなと。どちらかが器用に変わっていったら、夫婦の関係を続けるのは難しかったのではないでしょうか。

-満寿は大久保をどんなふうに見ていたのでしょうか。

 その点で、印象に残っているのが第20回です。「なぜ、自分は吉之助のようにできないのか」と嘆く大久保さんに、ほほ笑みながら歩み寄り「あなたは西郷吉之助さまになりたいのですか?私はそのままのあなたがいい」と告げる場面がありました。満寿としては、「ようやく本当のことを話してくれた」といううれしさがあると同時に、「ほんのこて情けなかなあ」とも思っている。だけど、それは悪い意味での「情けない」ではなく、「しょうがないわねぇ」と、大久保の全てを抱え込もうとする思いが込められている。それこそ本当の愛情ですよね。

-2人の夫婦愛を示す印象的な場面でした。

 ただ、そのときは、まだ大久保さんの全てを受けとめる器としては、満寿自身も不足していて、一生懸命大きくしていきたいという気持ちだったと思います。そして、周りからどんなに「変わった」と言われても、その内側にある、少し臆病で、西郷さんのようになりたいと思っている大久保さんから、自分だけは目をそらさないでいようと。それが妻としての矜持(きょうじ)であり、西郷さんとは別の意味で、一番近くで見守ってきた人間の強さではないかと。

-満寿を演じる上で、心掛けたことは?

 なるべく手際よく振る舞うことです。不器用というのは性格的な意味合いに過ぎません。初登場のとき、囲碁を打つ場面もあったように、日常的なことに関して満寿は、二手、三手先を考えて動ける人。大久保さんのスピードと切れ者感にも付いていける人でなければいけませんし。今もよく覚えているのが、何も言われないのに大久保さんの考えを察して、お漬物を手に「お父さまのところにあいさつに行ってきます」と出掛けて行った場面(第17回)。ものすごい速さでお漬物を包んで、さっさと出ていくんです(笑)。あそこは映像的に少しうそをついていて、普通だったら有り得ないスピード。だけど、満寿ならできるかも…と思える。そういう面白いキャラクターでしたね。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

吉田恵里香氏 憲法第十四条は「人間らしく生きるためのスタートライン」 「虎に翼」脚本家が作品に込めた思い(後編)【インタビュー】

ドラマ2024年9月15日

 NHKで好評放送中の連続テレビ小説「虎に翼」。女性として日本で初めて法曹界に飛び込んだ主人公・佐田寅子(伊藤沙莉)の物語は、まもなくクライマックスを迎える。数十年前の戦前から戦後の昭和を舞台にした物語は、私たちが生きる現代にも重なり、大き … 続きを読む

吉田恵里香氏「みんなが自分の望む場所に立てることが大切」 「虎に翼」脚本家が作品に込めた思い(前編)【インタビュー】

ドラマ2024年9月15日

 NHKで好評放送中の連続テレビ小説「虎に翼」。女性として日本で初めて法曹界に飛び込んだ主人公・佐田寅子(伊藤沙莉)の物語は、まもなくクライマックスを迎える。「女性の社会進出」や「女性の生きづらさ」を描いた物語は、数十年前の戦前から戦後の昭 … 続きを読む

「光る君へ」第三十四回「目覚め」一条天皇との関係に悩む中宮・彰子に訪れた変化の兆し【大河ドラマコラム】

ドラマ2024年9月14日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。9月8日に放送された第三十四回「目覚め」では、興福寺の僧侶たちによる騒動や「曲水の宴」といった出来事を通じ、これまで、夫である一条天皇(塩野瑛久)との関係に悩む中宮・彰子(見上愛)に変化の兆しが … 続きを読む

【週末映画コラム】どちらもだまされる楽しさが味わえる『ヒットマン』/『スオミの話をしよう』

映画2024年9月13日

『ヒットマン』(9月13日公開)  ニューオーリンズで暮らすゲイリー・ジョンソン(グレン・パウエル)は、大学で哲学と心理学を教える傍ら、偽の殺し屋に扮(ふん)して依頼殺人の捜査に協力していた。普段はさえないゲイリーが、「顧客」に合わせたプロ … 続きを読む

鈴木伸之「何かを諦めてしまった人や挫折した人に響く作品にしたい」 戦力外通告を受けた元プロ野球選手役【インタビュー】

ドラマ2024年9月13日

 鈴木伸之が主演するドラマ「バントマン」(東海テレビ・フジテレビ系)が10月12日23時40分から放送スタートする。  本作は中日ドラゴンズの全面協力で実現したスポーツ・エンターテインメントドラマ。元プロ野球選手の主人公・柳澤大翔(鈴木)が … 続きを読む

Willfriends

page top