「『あの人たちの生きざまが面白かった』と記憶に残ってくれたら」岡本幸江(制作統括)後編【「おんな城主 直虎」インタビュー】

2017年12月17日 / 20:50

 ついにフィナーレを迎えたNHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」。番組を応援してきた視聴者は、主人公・井伊直虎(柴咲コウ)との別れを惜しみつつも、鮮やかな幕切れに喝采を送ったのではないだろうか。その余韻をより深く味わい、この1年を振り返ってもらうため、制作統括の岡本幸江氏に制作の舞台裏を聞いた。

柴咲コウ(左)と菅田将暉

-盛りだくさんの内容で、見事な最終回でした。途中、「真田が北条に付いただと!?」というせりふがありましたが、これは前作の「真田丸」で「向こうにもここに至るまでの物語があるのだろうな」とエールを送られたことに対するお返しだったのでしょうか。

 はい。ささやかなお返事のつもりです。「寝返った」というネタにこだわって、「この時期、何をしていましたか?」と時代考証の先生に相談して入れました(笑)。

-主演の柴咲コウさんをはじめ、全話を通して出演者の皆さんが役にぴったりはまっていました。配役が成功した理由はなんでしょうか。

 長い時間をかけて放送していくものなので、役者が演じているのを見て、森下(佳子/脚本家)さんが脚本に上手にフィードバックしていくんです。それが恐らく往復書簡のようになり、こういうお芝居ならそれを生かしてこうしよう、という部分があったのではないでしょうか。それを受けて、役者も寄り添っていってくれるので、やっていくうちにぴったりフィットしていく…。長くやっている作品の幸せなところです。

-その他、キャスティングで工夫した部分はありますか。

 今回、大河で初めてといわれているのが、早い時点で幅広い年齢層を対象に、大規模なオーディションをしたことです。恐らく大河では、これまで子役以外に大規模なオーディションをしたことはないと思います。私の頭にあったのは、六左と万福、高瀬の少女時代と成長後ですが、たくさんの方が応募してくれました。ご本人のお芝居を直接見させていただいて決めたわけですが、この四つのカテゴリーで600人以上は会ったと思います。ただ、その役に当てはまらない場合でも、魅力的な方がたくさんいました。その中から、他の役で出演していただいた方がかなりいます。時間をかけて準備できる大河ならではです。

-オーディションを実施したのは、どんな理由からでしょうか。

 朝ドラの時、オーディションでいろいろな方とお会いして、この役はちょっと違うと感じた方でも、他にぴったりな役が出てきたので出演してもらったケースが結構あったんです。それで、直接会うことは利点だと思ったことが一つ。

-もう一つの理由は?

 ある映画を見たときに知らない俳優さんがたくさん出演していて、調べてみたら舞台を中心に活躍されている俳優さんで。経緯を聞いたら、オーディションということだったので、「やはりオーディションをやらなくては」と刺激を受けました。そのときに気になっていた方の1人が、奥山六左衛門役の田中美央さんです。いい俳優さんだなと思っていたら、こちらのオーディションにも応募してくださったんです。

-オーディションで出会って出演された方は、他に誰がいますか。

 龍雲党のカジを演じた吉田健悟さん、中野直之の弟・直久の成長後を演じた冨田佳輔さん、第24回と最終回に出てくれた庵原助右衛門役の山田裕貴さんあたりはそうですね。他にも万千代(菅田将暉)が家康に仕え始めたころの小姓衆は、タモト清嵐さんをはじめ、みんなオーディションに来てくれた方です。石川数正役の中村織央さん、新野の三女・桜役の真凛さん、農民・角太郎役の前原滉さんもそうでした。他にも大勢います。

-視聴率については、どのように受け止めていましたか。

 過去の作品と比べて高いわけではありませんが、若い層が熱心に見てくださった印象です。中でも、30~40代の現役世代が多かったようで、実際に自分が今いる会社や社会で、矛盾やあつれきを感じながらも、一生懸命に生き延びようとしている方たちが身近に感じてくださっていたのかなと。NHKは普段なかなかその世代に見ていただけないのですが。

 
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