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仲野 もうバチバチにしごかれました(笑)。脚本の通り、どうしたって大変にならざるを得ない物語で、大変な撮影だったんですけど、結構な数のキャストが戦をやっている中で、どんどん状況がしんどくなってきたところを、監督が腕を組みながら遠目からずっと見ているんです。それで、こっちが「もう駄目です。もうきついっす」と悲鳴を上げたところで、目がキラキラと輝き出して、「よしカメラ回そう」みたいな。すごい監督だなと。熟成するのを待っているわけです。
白石 それが仕事だから(笑)。ただ、僕は群像劇が得意なつもりだったんですけど、それは、こっちの勢力は5人で、もう一方の勢力は例えば7人でみたいな作品だったんです。それが今回は10人以上の人数が同じ場所にいる。それで「やろうぜ」と言った時に、みんなが一斉にリアクションを取るんだけど、それだけで5、6カットもあるんです。だから撮影がなかなか終わらない。同じ群像劇でも違うんだ、こんなに大変なんだと思いました。
白石 結局はファンタジーだということです。資料を探せばいろいろと出てきますけど、その時代に生きいていた人は今はいないわけですから。だから、積み上げたものを壊せる面白さとか、リアルなところが追求できる面白さとか、映画のエッセンスが詰まっているところがある。やっぱり今とは社会の仕組みが違うので、その中で起きる不条理を描きやすいということです。ただ、人間の喜怒哀楽は変わらないので、基本的にはそれを描くことで、現代へのメッセージを送りやすいというか、やれることが本当にいっぱいあるなと思います。別に時代劇はジャンルではないので、時代劇の中でいろんなジャンルが作れるということです。そう考えるともう無限に可能性があるかなと。
仲野 今監督がおっしゃったように、人間の感情は昔も今も変わらない。でもフィクションというか、ファンタジーというところが現代への逆説的なメッセージとして届いたらいいなと。やっぱり生きるとか死ぬとか、斬る斬られるという究極の状態が体現できるのは時代劇ならではだと思います。戦争ものとかでもそれはあるんですけど、時代劇にはそこに美学や美意識があります。それを踏まえた上での表現は、なかなか他ではできない魅力があると思います。時代劇ならでは様式美もあるし、今回みたいなどろどろになる戦もある。そういう振れ幅の広さみたいなものが現代劇よりもあるのかなと思います。
白石 僕は、基本的にはいつもエンタメとして映画を作っているので、作るたびにやっぱり自分はエンタメをやりたいんだということを自覚するんです。この映画が日本の映画界でどういう役割を果たすのかは分かりませんが、集団抗争時代劇を作れるチャンスはなかなかないので、「時代劇はまだまだいけるぞ」と海外の人たちにも興味を持っていただける作品になって、「時代劇やろうぜ」という起爆剤になってくれるとこんなにうれしいことはないです。あとは、この映画を見て仲野太賀みたいな役者になりたいと思う人が絶対に出てくると思います。
仲野 そう言っていただけるとすごくうれしいです。
(取材・文・写真/田中雄二)
(C)2024「十一人の賊軍」製作委員会
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