“伝統×メタル”新感覚サウンドが日本初上陸、境界を打ち破る韓国バンドKARDI

2025年9月26日 / 16:45

 KARDI。カルディではなくカーディと読む。伝統を壊さず、ロックに飲み込まれず、二つの境界を揺さぶる韓国のハイブリッドバンドだ。2021年、オーディション番組「スーパーバンド2」(JTBC)で結成。伝統楽器を交えた唯一無二のサウンドは、アーティストとして高い評価を受けている。

▼ “イマドキ”の日韓アーティストはこんな人たち

 韓国音楽に多様性を――駐大阪韓国文化院主催「K-MUSIC Festival in Osaka “多様多感”」で9月13日、KARDIの日本初ライブが行われた。伝統弦楽器を中心に据えたニューメタル「7000RPM-1」、2030年釜山万博(残念ながら誘致できなかったが)のテーマソング「CITY OF WONDER」、シンプルなフレーズで会場と一体化する「PARTY」など次々と披露。初めて彼らの音楽に触れた観客でさえ、圧倒されるほどの迫力で会場を盛り上げた。

 日本のアニメや音楽に詳しい日本語堪能なリーダーでギターのファン・リン、小柄な体格からは想像もつかないパワーボイスのキム・イェジ、普段は寡黙でも演奏中は誰よりも躍動的なベースのファン・インギュ、1992年生まれの最年長で伝統弦楽器コムンゴ奏者のパク・ダウル。そして、スペシャルゲストとして同バンドとコラボした日本人シンガーソングライターRol3ert(ロバート)の日韓アーティスト5人に聞いた。

-今日の感想は?

Rol3ert まず一言で最高でしたね、エネルギーが。こういうコラボ初めてだったんで、エネルギーがぶつかり合って最高のものになったと思います。

リン 僕も日本の文化が大好きなので、日本でいつかライブができたらなと思っていました。こうして公演できて、実はまだ信じられません。これで夢が一つかなったので、さらに大きな夢に向かっていきたいですね。日本のフジロックとかサマーソニックに出られる日が来るとうれしいです。

インギュ 思っていた以上に楽しんでもらえてすごく感動しました。僕らの音楽を日本で楽しんでくれる人がいるんだと思うと、すごく楽しい時間でした。

ダウル 日本で初めて成功、って言っていいのかな? 成功裏に終えられて、良い気分です。これからも日本と行ったり来たりできるとうれしいです。

イェジ 大阪に祖母がいたことがあって、大阪は初めてなのに、飛行機に乗った瞬間からワクワクしていました。大阪の観客がとても喜んでくれて、良い思い出になりそうです。

▼グローバルに聴いてほしい

迫力のステージを繰り広げるKARDI(大阪韓国文化院提供)

-ご自身について教えてください。

Rol3ert 今年1月に本格的に活動を始めました。日本人だけど日本だけにとらわれたくないというか、グローバルに僕の音楽が届いてほしいなと思っているので、英語で歌詞を書いているのもそうだし、サウンドもそういった部分で幅広い音楽をやっています。いろんなジャンルに影響されているのもあるんですけど、普通の音楽とはちょっと違う、新しい雰囲気とかが楽しんでもらえるかなと思います。(ステージでは流ちょうな英語でしたが?)僕はごりごりの日本人です。アメリカで生まれて2歳になる前に帰ってきました。(リンが日本語で「英語力すごいっすよ」)

リン 僕らは韓国の伝統楽器のコムンゴがミックスされたロックバンドです。韓国だけでなく世界に出ていきたいし、そのために新しい曲作りをしていて、挑戦し続けています。(なぜコムンゴとロックを合体?)僕らはテレビ番組で結成されたんです。バンドを結成するためのオーディション番組でした。そこで、最終6チームのうちの1チームに選ばれて。活動して4年目です。

-どちらもグローバルを目指しているようですね。これまで、どんな音楽に影響を受けた?

Rol3ert 80sのマイケル・ジャクソンとかティアーズ・フォー・フィアーズ(英ニューウェーブバンド)。それから、90sのレディオヘッド(英オルタナ・ロックバンド)とかアークティック・モンキーズ(英ロックバンド)とか。僕が生まれる前の音楽に影響された今の音楽も好きで、keshi(ケシ:1994年生まれ、ベトナム系アメリカ人シンガーソングライター)というアーティストもそうだし、sombr(ソンバー:2005年生まれ、アメリカ人シンガーソングライター)も。ジャンルも年代もバラバラなんですけど、聞いていてノスタルジックに感じる曲が好きです。

リン 僕らは、音楽的趣向がそれぞれバラバラで。なので、意見を合わせると予想もしない方向に流れることがよくあります。僕は、やはり子どもの頃からロックやヘビメタを聴いていたので。好きになったのはスリップノット(米国9人組ヘビメタルバンド)を聞いたのがきっかけでしたね。

▼「もっと違う音楽を」という反抗心

KARDIのステージと一体化し盛り上がる会場(大阪韓国文化院提供)

-K-POPも聞いたことはありますか?

Rol3ert もちろん。wave to earth(3人組インディーロックバンド)っていうバンドとか。結構バンド系が多いかもしれないですね。THE ROSE(4人組インディーロック・ポップロックバンド)って分かります? アイドルももちろんかっこいいと思うんですけど、結構バンドが好きかもしれないです。

-K-POPというとアイドルのダンス曲やバラードのイメージが強いけど?

イェジ 一番の主流はアイドルで、それがK-POPと呼ばれているんだと思いますが、今はバンドも増えたし、それらもK-POPのくくりにできるかなと。

リン K-POPは道端で流れているので自然と耳に入りますが、やはり僕らがバンドを始めたのは、「ああいうのより、もっとこういう音楽の方がいいのに」という反抗心からで。K-POPは、いや応なしに聞くことにはなりますね、韓国人として。

イェジ 私もポップスをより聞いていました。Billboard Hot 100とか。アイドルも一時は大好きでした、一人の少女ファンとして(笑)。でも今はあまり聞かないし、私たちの音楽に影響を与えているのはポップスじゃないかなと思います。

▼伝統弦楽器のロックな使い方

コムンゴを演奏するKARDIのダウルはソウル大学国楽科出身のエリート。左はベースのインギュ、右はギターのリン

-皆さんの夢、これから成し遂げたいことは?

Rol3ert 目標は「マディソン・スクエア・ガーデンの舞台に立つ」とかもあるんですけど、自分自身、心がムシャクシャしたりとかネガティブになった時に音楽に落とし込んだりするので、僕の作った曲が他の人に届いて、そばにいて安心させてあげられるような存在になれたらうれしいなと思います。(癒やされる声です)夢がかないましたね(笑)。

ダウル 僕は地球征服。(グルーブに乗るコムンゴを初めて見たけど?)そうなんですよね。横でじゃんじゃん騒ぐから。(ロックはどう?)つらいです。こっちは座って優雅に演奏したいのに…(苦笑)。

インギュ こう見えても彼は韓国の音楽の教科書に載っているんです。

ダウル 変な人として(笑)。

リン いえいえ、国楽演奏者として。

▼新しいものを作り出すJ-POP、率直にさらけ出すK-POP

駐大阪韓国文化院主催「K-MUSIC Festival in Osaka “多様多感”」KARDIライブ後の記念撮影。右からインギュ、ダウル、イェジ、リン、Rol3ert(大阪韓国文化院提供)

-日韓それぞれの音楽の特徴は?

Rol3ert なんだろう、“新しい”っていうのが一番言い表していると思うんですけど、いろんな音楽に影響されながらも、独自のものをちゃんと作り上げて、それがJ-POPとして確立されているからこそ、アメリカとか世界中で聞かれるようになっていて。だから、今までにない“新しいものを作り出す”っていう点で、すごく特徴的だなって思います。

リン 韓国の音楽の特別なところ…。韓国にはある種の“率直さ”があると思います。80〜90年代に活躍したシンガーソングライターのキム・グァンソク(1964-1996)とかユ・ジェハ(1962-1987)などから連綿と続く歌詞の深み、そしてそれを伝える力。歌詞を書く時の率直さといったものが、韓国の音楽の魅力じゃないかなと思います。アイドル音楽は商業化されてしまっているので…。

ダウル そういうことは言わない!

インギュ 好きですよ、アイドル音楽も。

リン ちょっと話が逸れてしまいました。

ダウル 音楽は音楽。韓国の音楽も日本の音楽も、どこの国の音楽も、その国の優れたアーティストがその国の音楽を代表することになります。そういうアイコンとなるようなアーティストがその国のイメージを作るんだと思います。今のK-POPはアイドルが引っ張っていますが、そこは時代によって変わる。以前はシンガーソングライターが活躍していたし。そういうことかなと思います。

-これからは?

インギュ …KARDIが世界征服します! 僕らの夢をまだ言えていなかったので、「Rol3ertが成功して、僕らを日本に引っ張ってきてくれること」です!(一同笑)

イェジ 最後に、いつか…グラミー賞を取りたいです!
Rol3ert おお!グラミー賞!

※本企画は、Kカルチャーシリーズ。


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