NHKの大河ドラマ「花燃ゆ」で、吉田松陰(伊勢谷友介)に師事した塾生の中で、高杉晋作(高良健吾)と共に松陰に最も期待された久坂玄瑞を演じている東出昌大。松陰の妹、文(井上真央)と結婚するものの、討幕運動に身を投じ、悲しい運命にのみ込まれてしまう。2013年の連続テレビ小説「ごちそうさん」でも鮮烈な演技を見せた若手俳優が、大河ドラマ初出演に熱い思いを語る。
-大河ドラマに出演オファーがあった時の心境は?
もともと歴史好きということもあり、素直にうれしかったですね。同い年の高良健吾くんや、伊勢谷友介さんら他のキャスト陣の名前も聞いて心強く感じました。芸歴も4年目に入ったので、「挑戦、挑戦」とばかり言ってないで、しっかり地に足を着けてできればと思って腹をくくった形です。
-久坂玄瑞をどう思いますか。
(司馬遼太郎の)『世に棲む日日』などいろんな小説を読む中で、長州藩の急先鋒で、一番過激な人というイメージがあったんですが、勉強すると決してそれだけではありませんでした。だからもっと掘り下げて、久坂玄瑞という人を皆さんに知ってもらえるように演じたいです。
-参考にしたものは?
博物館で久坂の書状を見せていただいたり、あとは古川薫先生の『花冠の志士』とか、久坂や松陰、松下村塾についての本を読んだりしました。
-初めて知った久坂の一面というのはありますか。
吉田稔麿(瀬戸康史)が、暴れ牛とかみしもを着けて座っている人物と、木刀と棒切れを描いた一枚の絵を山県有朋に見せて「これは何か」と聞いたそうなんです。稔麿は「暴れ牛は高杉晋作で、建物の中にかみしもを着けて座らせていてもちゃんと絵になる男は久坂玄瑞。木刀は入江九一で、おまえが棒切れだ」と言ったとか。久坂は仲間内でも尊敬されていたと思いました。それに文の兄の梅太郎に無心する書状を送っていたりして、ちゃんと生きていた人間的な部分も描けたらいいなと思います。
-今回は高良さんとも一緒の出演ですね。
もともと役者、モデルになる前から、16歳のころからの知り合いです。共演が決まって事前に勉強会をしてクランクインの前日を迎えました。そうしたら夜になって高良くんから電話があり「緊張して寝られない」って。なんとも高良くんらしいなと思いました。
-勉強会とはまさに松下村塾のワンシーンみたいですね。
アドリブで議論する場面などが結構あり、共通認識を持っていた方がやりやすかったりするので、今後もやっていきたいです。松陰先生は「高杉は久坂を失ってはならない」と二人を並べて評したそうなので、僕にとっても現場で高良くんの存在は大きいです。お芝居は決して勝ち負けではないんですけど、ライバル関係というかそういう二人に通ずる感情がドロドロと流れている気がします。
―松下村塾を見てどう思いましたか?
狭いですよね。すごい人口密度です。そのすごい熱量がドラマの映像として絵にならないといけないなって。それに萩という土地が奇跡的なものに思えます。萩で久坂の家から松下村塾までの距離を歩いてみたんですが、海が見えて山も川もあるその3、4キロの田舎道を若い久坂が一人で歩きながら日本を変えようと思っていたというのは、並大抵のスケールじゃない。奇跡的な人たちが集まった土地、時代だったんだなと感じました。
-久坂の生涯をどう思いますか?
命を懸けた久坂に続けとその後討幕派が影響を受けた部分もあるので、無念だったという言葉では語りたくないところがありますね。志を持って生きた方です。
-プレッシャーはありますか?
やらねばならぬという感じ。
-文との結婚生活。どんな夫婦関係を描きたいですか。
文は後に楫取素彦(小田村伊之助)と結婚した時、久坂と交わした手紙を持って嫁いでいったのですが、楫取はそれを「涙袖帖(るいしゅうちょう)」というものにまとめて保存するように取り計らったんです。それはきっと文と久坂の愛情がきらきらしていて本物で、青春だった。そんなすてきなものだったから保存しておこうと考えてくださったのだと思います。久坂にとって文は掛け替えのない存在だったし、そういう意味でも久坂という人物をしっかり生きないといけないなと思います。
-「イケメン大河」という呼び声もあり、期待されている方へのメッセージを。
みんな本気の人たちなので、見たら大河の印象が変わると思います。