NHKの大河ドラマ「花燃ゆ」で、高杉晋作(高良健吾)や久坂玄瑞(東出昌大)と共に松下村塾の有能な塾生として知られた吉田稔麿を演じている瀬戸康史。特に情報収集能力に優れた稔麿は、江戸から松陰に幕府の動きなどを逐一伝える重要な役割を担い、池田屋事件で命を落とさなければ総理大臣になっていたともいわれる人物。舞台で鍛えた演技力を武器にテレビ、映画と活躍の幅を広げる瀬戸が、稔麿の実直な人柄と幕末への熱い思いを語る。
-「花燃ゆ」はどんな印象ですか?
若い世代にも分かりやすいと思います。群像劇ですが、キュンとする要素も含まれていて、女性の心にも突き刺さる内容です。男女共に楽しんでいただけるのではと思います。幕末物はきれいに描かれがちですが、志士たちの描き方に、ものすごくリアリティーがあります。彼らも今の若者と同じように悩んでいますし、思っている根本は同じ。すごく身近に感じます。
-萩で印象に残ったことは?
いろいろな所を歩いて回り、萩の空気感を感じることができました。萩の人は町に誇りを持っています。塾生たちもそうだったのではと思います。稔麿に関しては残っている資料が少なかったのですが、それを伝えようとしてくれている人がいるのがものすごくうれしかったです。世に出ていなかったような手紙も見せていただきましたが、走り書きした文面から伝わってくるものを肌で感じることができて、演じる上でとても良かったと思います。
-ほかにイメージを膨らませたものはありますか?
台本を読んでいくうちに、久坂に食って掛かったり、すぐかっとなったり、ものすごく人間的なことが分かってきました。文(井上真央)に思いを寄せているのに、気持ちをはっきり言えないかわいらしさもありますし、家族を養うために自分が働かなければならないという責任感の強さも持っています。いろんなことを重ねつつ役を作っています。僕自身も稔麿と一緒に少しずつ成長できればいいなと思います。
-稔麿が命を落とした京都の池田屋には行きましたか?
はい。今は居酒屋になっていますが、店員さんに吉田稔麿を知っているかと聞いたら「知りません」と言われました(笑)。店員さんにも知ってもらえるように頑張りたいです。
-文は理想の女性でしょうか?
そうですね。家庭のこと、料理や洗濯はちゃんとできる女性じゃないと嫌だなと思います。自分のことより他人のことを考えられる人。それでいて控えめにしているだけではなく、時にはがつんと言って支えてくれる人。文はそんな女性です。
-ドラマ全体での見どころはどういうところですか?
松陰先生が亡くなってから立て続けにいろんな人が亡くなっていきます。それぞれの死に様には感銘を受けると思います。ぜひとも見届けてほしいですね。
-ご自身のシーンに限定するとどうですか?
松陰先生に「君の志は何だ」と聞かれるシーンです。稔麿は漠然としか考えていなくてすぐには返答できなかったのですが、その後考えて松陰に答えを出します。そのせりふはものすごく胸に突き刺さりました。シンプルでストレートなせりふですけどものすごい熱意がにじみ出ていて、瀬戸康史としても問われている内容でもあると思えました。役と自分がダブって聞こえてしまうところがあって、何のために俳優をやっているんだろうとか自分を見詰め直せる不思議な言葉だと思います。それと、やはり池田屋で命を落とすシーンですね。志半ばの無念の死を精一杯表現したいです。