【Kカルチャーの視点】「ユミの細胞たち」の原作者、ウェブトゥーン作家イ・ドンゴン

2025年11月17日 / 15:30

 韓国文化の“今”を再構築し続けるKカルチャー。今回は、デジタル空間で物語を紡ぐウェブトゥーンの世界に焦点を当てる。平凡な会社員ユミの頭の中で繰り広げられる細胞の物語――。2015年に連載を開始した「ユミの細胞たち」は、全512話で32億ビュー、コメント500万件という驚異的な記録を打ち立てた。今回はその作者であるイ・ドンゴンさんに、作品誕生の背景とウェブトゥーンの現在地を聞いた。 

※本稿は、111日に駐大阪韓国文化院で行われたトークイベントとインタビューの内容をまとめたものです。 

駐大阪韓国文化院主催のトークショーに登壇したイ・ドンゴンさん

 主人公の頭の中を描く「ユミの細胞たち」 

「ユミの細胞たち」の紹介パネル

–「ユミの細胞たち」の発想はどこから? 

 すごく単純なんですけど、細胞より先に石臼を思いついたんです。韓国ではあれこれ考えて頭をひねる時に「石臼を回す」という表現をよく使います。いい考えが思いつかない時に「動かない石臼を回すなよ」と言ったり。妻とその話をしていて、「これを漫画にしてみたら面白いかもしれない」って。思いついた時は大成功すると思いました。僕は細胞たちを“ギミック”と呼び、ストーリーというよりギミックやキャラクターを中心に物語を紡いでいきました。 

 –頭の中の世界を描いたピクサーアニメ「インサイド・ヘッド」(2015年)、細胞を擬人化した日本の「はたらく細胞」(2015年連載開始)と公開時期が重なります。 

 そうなんです。実は「インサイド・ヘッド」の予告編が公開された翌日から「ユミの細胞たち」の連載がスタートしました。アニメが公開されるまでソワソワして眠れませんでした。「インサイド・ヘッド」は韓国で8月に公開されましたが、真っ先に見に行き、全然違う内容だったのでホッとしたのを覚えています。「はたらく細胞」は白血球や赤血球が人体を巡る様子を物語化して専門的に描いたものですよね。すごく良い作品です。僕が描いた話は、細胞と表現しましたが、欲望の話なんです。頭の中は秘密の場所だから。人気があったのは“チュルチュルセポ(腹ペコ細胞)”で、僕が好きだったのは“ウンクムセポ(好奇心細胞)”。今までにない想像ができて楽しかったですね。 

 –連載中に大変だったことは? 

 週2回の連載だったので、大変だったのはタイムマネジメント。即興で物語を作るのが大変でした。「ユミの細胞たち」までは長編を描いたことがなかったので、中編くらいで終えるつもりだったんです。57カ月も続き、後半はほとんど即興でした。「ユミの細胞たち」を終えてようやく長編も描けるようになりました。 

 –女性の共感を呼びました。 

 女性が共感を狙ったわけではなく、自分の悩みをそのまま描いただけなんです。女性の読者が「私も同じだ」と共感してくれたのを見て、逆に男女関係なく同じようなことを悩むんだなと思いました。 

 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

DAIGO「クリスマス気分を盛り上げてくれる作品なので、『パーシーのクリスマス急行』にぜひ乗車してください」『映画 きかんしゃトーマス サンタをさがせ!パーシーのクリスマス急行』【インタビュー】

映画2025年12月12日

 イギリスで最初の原作絵本が誕生してから80周年を迎えた人気児童向けアニメ「きかんしゃトーマス」の劇場版『映画 きかんしゃトーマス サンタをさがせ!パーシーのクリスマス急行』が12月12日から全国公開された。シリーズ初のクリスマスムービーと … 続きを読む

高橋克典「これは吉良の物語でもあるのだと感じていただけるような芝居をしたい」 堤幸彦「『忠臣蔵』は、演劇的に言えば1丁目1番地的な作品」 舞台「忠臣蔵」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年12月10日

 元禄時代に実際に起こった仇(あだ)討ちを題材に歌舞伎などで取り上げられて以来、何度もドラマ化、映画化、舞台化されてきた屈指の名作「忠臣蔵」が、上川隆也主演、堤幸彦演出によって舞台化される。今回、吉良上野介を演じるのは、高橋克典。高橋はデビ … 続きを読む

生田斗真が驚きの一人二役!「最初から決まっていたわけではありません」制作統括・藤並英樹氏が明かす舞台裏【大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」インタビュー】

ドラマ2025年12月8日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」。“江戸のメディア王”と呼ばれた“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く物語は、まもなくクライマックスを迎える。謎の絵師“写楽”が、蔦重の下で歌麿(染谷将太)ら当 … 続きを読む

板垣李光人「最初から、戦争を考えて見るのではなく、実際に見て感じたことを広めていっていただければ、それが一番うれしいです」『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』【インタビュー】

映画2025年12月5日

 戦争がもたらす狂気を圧倒的なリアリティーで描き、第46回日本漫画家協会優秀賞を受賞した武田一義の戦争漫画をアニメーション映画化した『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』が12月5日から全国公開された。太平洋戦争末期、激戦が繰り広げられたペリリ … 続きを読む

【物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家ストーリー】(8)百年ぶりの復活へ 四代目が掲げた三つの大願

舞台・ミュージカル2025年12月4日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。    2016年に四代目・玉田玉秀 … 続きを読む

Willfriends

page top