堤真一、三宅唱監督「実はこういうことも奇跡なんじゃないのということを感じさせてくれる映画だと思います」『旅と日々』【インタビュー】

2025年11月6日 / 08:00

-シム・ウンギョンさんを演出してみていかがでしたか。

三宅 よくバスター・キートンの映画の話をしていたので、ある種の軽やかさをお持ちなんだなと思いました。それはウケを狙うということではなくて、徹底的に真剣なんですけど、それが重くなるのではなくて、軽やかな方向にも行けるということです。本当に撮っていてすごく面白かったです。べん造さんとの宿の中のシーンを撮っている時に、僕の思い込みかもしれませんが、昔の日本の大スターの女優さんを撮っているような気がしました。全部の光を反射しているような、光り輝いているような感じがあって、「うわっ銀幕だ」と。そういうスターを撮れるような喜びがありました。役どころはスターとは真逆の人ですけど、俳優としての存在感というか、美しさはスターだなと思いました。

-堤さんは、共演していかがでしたか。

 見ていて思ったのが、あんな状況になったら、普通は一晩ですぐ逃げ出すはずだと(笑)。でも居続けて、あそこで脚本を書こうとしている不思議な人というのは、シム・ウンギョンにしかできないなと。普通は逃げますよね。まして女の子だったら、あそこにいること自体があり得ないですよ。それを不自然に感じさせない真っすぐさとか、大事なところしか見ていない感覚というのは、彼女だからこそ出せたのだろうと思います。

-今回のロケは神津島と山形の庄内で風景が印象的でしたが、どういう基準で選んだのですか。

三宅 まず海岸は、原作の房総半島から西日本までいろんな所を回りましたが、最終的に神津島に一番ひかれたので選びました。冬に関しては庄内にある撮影スタジオに漫画と似たような、まるでかまくらのように雪が積もる三角屋根の日本家屋があったことがポイントでした。通常の場所で雪の中の撮影をすると本当に大変なので、スタジオで撮影しやすいことが大きかったですね。

-堤さん、完成作を見てどんな印象を持ちましたか。

 もともと脚本の中で、特別なことが起きるわけではないことは分かっていましたが、夏バージョンの方は撮影現場も全く知らなかったので、何かものすごくきれいなものを見た気になりました。あの男の子(髙田万作)も女の子(河合優実)も、2人とも中学生ぐらいに見えるんですよ。実際は違うんですけど、すごくピュアな雰囲気が出ていて、ちょっとびっくりしました。高校生とか中学生の恋愛みたいな。

三宅 でもべん造さんもピュアですよね?

 べん造さんの場合はばかなんです(笑)。

-これから映画を見る観客や読者に向けて、映画の見どころや魅力も含めて、一言お願いします。

三宅 今の世の中、いろいろ忙しくて旅にも行けない。そんな時には、現実から違うところに行ける場所として映画館があります。この映画は夏にも冬にも行けますし、しかもそれが約90分で行けますから。やっぱり映画館で見てほしいと思っているので、忙しい方も何とか約90分という時間を作って、ふらりと映画館に立ち寄っていただければ、妙にスッキリするんじゃないかなと思います。別に映画を見たからといって何かが解決するわけではありませんが、面白い経験ができるということは断言できます。

 この映画から、営みということをすごく感じます。下手したら全部が奇跡だと思えるような、実はこういうことも奇跡なんじゃないのということを感じさせてくれる映画だと思います。きっといろんな意味で、自分の中にある何かにはっと気付かされる映画になっています。こんなに人がいるのに、出会わない人の方が多いのですから。そのことにふと気付くような映画だと思います。

(取材・文・写真/田中雄二)

(C)2025「旅と日々」製作委員会

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