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水上 難しかったです。30代の工藤は単純に今の自分を老けさせればいいという話でもなく、精神的な部分で年上の人間として、令子がほれるような人間像を作っていかなければなりませんでした。それができたかどうかはいまだに分からないです。だからすごく苦しかったのですが、池田さんをはじめ、スタッフの皆さんがヘアメークや衣装も含めて一緒に作ってくださったので、現場は楽しくてとても刺激的でした。
池田 今の話で言うと、年齢差がある役を演じてもらうのは、私にとっても挑戦だったんです。外側の見せ方はもちろん、表面だけにならない内面も含めた実在感を得たいと思っていました。事前に水上くんとかなり深くやり取りをさせてもらい、互いの感覚を伝え合いながら役作りを共にできたことがありがたかったです。その積み重ねがあったことで、撮影が始まった瞬間から水上くんが演じる工藤はこの人だと感じられ、日々撮影を重ねていく中で、どんどん工藤が令子よりも年上に見えてきました。最後の撮影日は半年ほど期間が空いていたのですが、テストをした瞬間に水上くんが工藤になって。彼の中に工藤が生きているんだと感動しました。その時に、この人は本当の意味で工藤をつかんだんだなと改めて思いましたね。
吉岡さんと水上くんのお芝居はアプローチの仕方が違うんです。水上くんは、芯を太くしていく作業をずっと重ねて、太い芯を作ることによって、自由なお芝居を生み出していく。一方、吉岡さんはその場にパーンと体当たりで飛び込み、反射を大切にしながら役柄を生きていく。全くアプローチが違うことが見ていて面白かったし、まさにこの物語の中の令子と工藤とも重なっていると感じました。
水上 非常にたくさんの要素が詰まった映画だと思いました。僕と吉岡さんとのW主演で、令子で始まって工藤で終わるような印象を受けました。僕はどんな作品でも自分のあらを見てしまうので、冷静な評価はまだできていないと思いますが、撮影クルーの方たちと貴重な時間が過ごせたので、それだけでも十分幸せな気分になれるような作品でした。
池田 今水上くんが言ったように、人間のさまざまな思いが交錯しますし、世界の謎もたくさん埋まっていますので、謎を謎として楽しんでほしいと思います。人間の心が一番の謎。人の心が分からないからこそ、それを知ろうとする2人の話です。2人が恋をしたことによって、人の気持ちを知ろうとするし、自分が何者なのかを知ろうとする。でもその答えが出なくてもいい。それと向き合うことによって、何か乗り越えられるものがあるということを描いたつもりなので、その謎を一緒に楽しんでもらえたらと思います。
水上 今の話を聞いてすごく納得したんですけど、この映画の魅力について僕がお答えしたいのは、孤独を感じるということです。僕は基本的に人間は孤独であると思います。どんなに愛する人がいても一緒には死ねないわけですから。でも、人間は人を求めて、人に傷つけられて、人を愛して、そして愛されてまた傷つけられてという繰り返しだと思っています。この映画が孤独を感じている人たちにとっての救いになるかどうかは分かりません。でも、これを作った人間からのメッセージとして、「孤独でいいんだ。俺も孤独だよ」と言いたいです。孤独だからこそ、好きな人からかけてもらった言葉や表情を、一生大事な思い出として残していく。そんなふうに人生を捉えているような人たちと、この映画を通して共感したいと思います。
(取材・文・写真/田中雄二)

(C)眉月じゅん/集英社・映画「九龍ジェネリックロマンス」製作委員会
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