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この作品をミュージカルにするのは、すごくハードルが高いのではないかと思ったので、驚きました。ストレートプレーで上演した方が、もっとダイレクトに言葉を伝えられると思っていました。ですが、楽曲を聞いてみると、これは1つの総合芸術として成り立っているものなんだと。アートで演劇的。ミュージカルでしか見せられないものになるのではないかと思います。
小瀧さんは読売演劇大賞の杉村春子賞を数年前に受賞されていて、僕の先輩です。先輩にたくさんのことを学ばせていただきたいです。すごく熱意のある方なので、パク・セロイとして引っ張っていただきつつ、少しでも僕も支えられるように頑張りたいなって思っています。
「インヘリタンス-継承-」と「球体の球体」の2作で受賞させていただきましたが、この2作は、自分の人生を大きく変えた作品だったので、その結果として賞をいただけたことがすごくうれしいです。自分の芝居の世界観や芝居へのアプローチの仕方、役との向き合い方を改めて教えていただきました。向き合い方の可能性もまた与えていただいた2作だったので、すごくうれしかったです。
これまではせりふを口にして、その感情になって、放出することで精いっぱいでしたが、役を演じながらも、全く違うことを考えている瞬間が生まれるようになりました。例えば「お腹が空いたな」というような他愛もないことも考えます。でも、それこそが役を生きることの正解に近いのではないかと思います。演劇は、突出した感情をつまみ上げてピックアップしたものを羅列しているので、いろいろな感情を持っているように見えます。でも、そうではない感情だってあるんです。どうでもいい思考が生まれるくらい余裕を持って生きられるようになったからこそ、芝居をすることがより楽しく思えるようになったと思います。きっと緊張感は持ちつつ必死さがなくなったのだと思います。「インヘリタンス」のような長い演劇だと、公演中にどこかしら、誰かしら何かが起きるんです。せりふを飛ばしてしまったり、アクシデントが絶対に起きるので、そうしたときにも対応できるような余裕を持てるようになってきました。
難しいですね。それに、気を張り続けていてもいいことがない。僕は、気が張っていると、自分のペースを乱されることにフラストレーションを覚えてしまうタイプなので。余裕を持つようにしています。
映像も舞台もどちらもやりたい。それはいつも考えています。やっぱり映像と舞台はアプローチの仕方がまったく違うので、両方から学んだことを両方で生かしていけたらと思います。どちらか片方のアプローチしか持っていないのは嫌なんです。僕は欲張りなので、どちらも食べていきたい。ずっとどちらもつまみ食いしながら生きていきたいので、それをしながら、可能性をどんどん広げていきたいと思っています。
世界的に有名な作品の世界初ミュージカル化、そして日本のみならずさまざまな国のクリエーターの皆さんが携わっているこの作品に出演できることをとても光栄に思っています。原作を見た方も、ドラマを見た方も、そうでない方も、皆さんがこのミュージカル「梨泰院クラス」を思う存分楽しんでいただけるように稽古を重ね、劇場でお待ちしております。見ないと損をすると思います。そうした作品をお届けできるよう頑張ります。
(取材・文・写真/嶋田真己)
ミュージカル「梨泰院クラス」は、6月9日~30日に都内・東京建物 Brillia HALLほか、大阪、愛知で上演。
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