前田公輝、朝ドラ出演を経て「大きく自分のステージが変わったような感覚」 ミュージカル初主演で「多くの人の胸に届く作品に」【インタビュー】

2024年11月28日 / 08:00

-「ロミオ&ジュリエット」に続いて、ミュージカル「スリル・ミー」に出演されました。これもまたかなりの大きな挑戦だったのでは?

 かなり大きな挑戦でした(笑)。まさか出演させていただけると思っていませんでしたので驚きました。「スリル・ミー」は、100分の2人芝居で、ずっと舞台に立ち続けるという作品ですが、僕はストレートプレイでもそうした作品に挑戦したことがないですし、なおかつそこに歌が入るとまたエネルギーの使い方も変わる。自分の中では衝撃でした。今、改めて作品を見返すと、自分の声帯が時間をかけて育てられることができ、それが体に生きついていることを実感できます。今回は、伝えるべきワードがどのような音楽になるのかはまだ分かりませんが、ミュージカル3本目ということを感じさせないような出来であるべきだし、しようとは思っています。

-こうしてみていくと、どの作品も前田さんにとっては「挑戦」という意味合いが強い作品でもありますね。

 挑戦はし続けたいと思っています。コロナ禍で仕事が止まったときに、オンラインサロンと洋服のブランドを作らせていただいたんです。その自分の洋服のブランドをドラマでリースすることができ、クレジットが出たときに、相乗効果をすごく感じたんですよ。自分がもう少し可能性を広げることによって、世界が大きく広がり、効果も大きくなるのかもしれないと感じたんです。それから、20代のうちは、いろいろな経験をしたいという思いもあったので、30代に向けての準備という意味でも、臆することなく、何事にも挑戦していたというのもありました。

-今、33歳になりましたが、30代になって、そうした思いや目指すところは変わりましたか。

 挑戦をするということに関しては変わっていないですが、30代になって、自分のまいた種にどれだけ花を咲かせられるかという作業をしているような感覚はあります。

-では、前田さんにとって、俳優としてのターニングポイントは?

 NHK連続テレビ小説「ちむどんどん」だと思います。20代前半に夢の一つとして「朝ドラ出演」を掲げていたので、それが30歳のときにかない、大きく自分のステージが変わったような感覚がありました。見てくださる方の層も幅広くなったように思います。

-そうした変化によって、前田さんの俳優業への思いにも変化はありましたか。

 より意識が高まりましたが、それ以上に、僕は仕事をさせていただける喜びが大きくて。「俳優でご飯を食べていきたい」を1番の目標として掲げているので、仕事をさせていただけることが僕の中で生きがいです。皆さんへの感謝の気持ちが大きいので、自分にできることがあれば、例えそれがプライベートの時間を割くことになってもやらせていただきたいという思いです。

-本作は「自分らしく生きること」をテーマにした物語ですが、前田さんにとっての「自分らしさ」とは?

 家族かなと思います。やっぱり家族は自分を作っている大きなものだと思うので。家族がいなければ、自分は今、こうした性格でもないと思うし、家族に支えられて生きていると思います。自分の中で大切にしていることという意味では、「感謝」です。俳優は、いろいろな方々が準備をした上で、参加させていただくことが多いので、周りの方に感謝して生きていきたいと思っています。

-最後に、読者にメッセージをお願いします。

 自分のことにふたをして生きていくことは、社会に生きる上では必要なことだと思いますが、やるべきことをやっていれば、そこにもし不条理なことがあったとしても、幸せを感じられる瞬間があると思うんです。この作品を見て、自分をもう一回、愛してあげることができるのではないかなと思います。短い言葉で余白を持たせているけれども、温かさがあるせりふで溢れています。きっと多くの人の胸に届く作品になると思います。

(取材・文・写真/嶋田真己)

 

 ミュージカル「ミセン」は、2025年2月6日~11日に都内・めぐろパーシモンホール 大ホールほか大阪、愛知で上演。

ミュージカル「ミセン」

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

高橋克典「これは吉良の物語でもあるのだと感じていただけるような芝居をしたい」 堤幸彦「『忠臣蔵』は、演劇的に言えば1丁目1番地的な作品」 舞台「忠臣蔵」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年12月10日

-堤さんと高橋さんは高橋さんのドラマデビュー作以来のタッグと聞いています。堤さんは高橋さんの吉良上野介にどのような期待を寄せていますか。 堤 ぴったりだと思いますよ。生き馬の目を抜く芸能界で酸いも甘いも知り尽くしていますから。デビューの瞬間 … 続きを読む

生田斗真が驚きの一人二役!「最初から決まっていたわけではありません」制作統括・藤並英樹氏が明かす舞台裏【大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」インタビュー】

ドラマ2025年12月8日

-治済に対する仇討ちのため、対立関係にあった蔦重と松平定信(井上祐貴)がタッグを組む展開にも驚かされると同時に、思わず胸が熱くなりました。 藤並 白河藩に戻った後の定信は、それまでとは打って変わって、大田南畝や山東京伝に本を書かせているんで … 続きを読む

板垣李光人「最初から、戦争を考えて見るのではなく、実際に見て感じたことを広めていっていただければ、それが一番うれしいです」『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』【インタビュー】

映画2025年12月5日

-戦場で、田丸が絵や漫画を描くことにどのような意味があったと思いますか。  功績係に任命された田丸には、もちろん何かを書き記すという使命感もあったでしょうが、いつ自分や仲間が命を落とすか分からない状況の中で、自分の世界の中で向き合えるものが … 続きを読む

【物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家ストーリー】(8)百年ぶりの復活へ 四代目が掲げた三つの大願

舞台・ミュージカル2025年12月4日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。    2016年に四代目・玉田玉秀 … 続きを読む

多部未華子「学びの多い現場でした」DV被害者役に挑んだヒューマンミステリー「連続ドラマW シャドウワーク」【インタビュー】

ドラマ2025年12月1日

  -雰囲気のいい現場だったようですね。  中でもしのぶさんは、「これはこういうことなのかな?」といった感じで、積極的に質問をされるんです。その上、「私、緊張しちゃう」などと、ご自身の気持ちを織り交ぜながら現場にいてくださるので、私も質問が … 続きを読む

Willfriends

page top