河合優実「すごいところに羽ばたいていく予感はありました」金子大地「面白い映画になるのは間違いないと」恋人役で共演の2人が語るカンヌ受賞作の舞台裏『ナミビアの砂漠』【インタビュー】

2024年9月6日 / 10:00

-恋人でありながら緊張感のあるカナとハヤシの関係は、そういう山中監督の演出が生んだものかもしれませんね。現場の様子はいかがでしたか。

河合 ワンシーン、ワンシーン、みんなが面白がりながら撮っていました。「このシーン最高!」みたいな空気が毎日のように漂い、カメラマンの方も「毎日楽しい」と言っていて。もちろん、緊張感のあるシーンもあるんですけど、映画作りをみんなが楽しんでいましたよね。

金子 ものすごく楽しんでいたね。若い人たちが集まっていたせいか、熱量も高くて。しかも、仕事ではあるんだけど、それ以上にクリエーティブなことを考える人たちばかりでした。

河合 山中監督も「毎日、全シーン面白いんですけど、面白いシーンを立て続けに見ることが映画なんでしたっけ? わからなくなってきました」と言っていて(笑)。それくらい毎日、見たことないものができている実感はありました。

(c)2024『ナミビアの砂漠』製作委員会

-現場でリーダーシップを取る方はいたのでしょうか。

金子 ぐいぐい引っ張るわけではありませんが、山中監督と河合さんが、現場を作っていた気がします。みんなが山中監督を信じ、監督が「うーん…」と考え込んだときも、誰もがその決断を信じて待って。さらに、そういう山中監督の思いを河合さんがいち早くつかみ、現場を締めてくれました。だから、撮影が止まっても、何の不安もなかったです。むしろ、「山中監督を悩ませた方が面白いのでは?」と思ったくらいで。

河合 山中監督には、みんなが寄り添いたくなるようなところがあるんですよね。「このシーン、どうしよう?」となったとき、みんなが監督の中にあるものをすくい取りたくなるような、人を引き寄せる力がある。私自身、「誰も見たことのない面白い映画を作るんだ」という監督の思いを絶対的に信頼していたので、積極的にそれをキャッチしに行きたくなりましたから。

金子 みんながこの作品を良くしようと思って動いたのは、山中監督の人柄のたまものだよね。そういう姿勢がすてきで、今まで経験したことのない現場のあり方だと思った。おかげで、とても濃密な経験ができ、最高の現場だった。

-現場の雰囲気の良さがうかがえるお話ですが、その結果、完成した映画の印象は?

金子 最初は自分の芝居が気になり、冷静に見られませんでしたが、2度目はすごく面白く感じた上に、カナが本当に魅力的で。かっこ悪いんだけど、かっこよくてかわいい、みたいな、一言で言い表せない不思議な魅力があり、今までいそうでいなかったキャラクターだなと。

河合 私も最初は冷静に見られませんでした。でも、2度目に見たら、やっぱりすごく軽やかでかっこいい映画だなと。取っ組み合いのケンカをしたり、かなり激しいことが起きるんですけど、明るいんですよね。山中監督が「元気が出る映画」と言っていましたが、ポジティブなエネルギーをもらえる映画になったんじゃないかなと。

金子 カナの熱量が高すぎて、人によってはくらくらしちゃうかも(笑)。

河合 そうかもしれませんね。生命力があふれすぎていて(笑)。

金子 でもそんなふうに、見る人からいろんな感情を引き出すということは、いい映画なんだと思う。

河合 自分が演じた分、完全に客観的にはなれませんが、私もカナが大好きです。不器用な女の子で、「駄目だよ」「そんなことをしても意味ないよ」「いつか彼氏たちに謝りなよ」とか、言いたいことはたくさんあるんですけど。でもいつかきっと、カナは自分のことも他人のことも大切にできる気がします。

-本作は2024年の第77回カンヌ国際映画祭で国際映画批評家連盟賞を受賞しました。お二人も映画祭に参加しましたが、感想は?

河合 うれしかったです。ただ実は、クランクアップする頃には、この映画はすごいところに羽ばたいていくんじゃないか、という予感はありました。さすがにカンヌの受賞までは予想できませんでしたが。だから、うれしさと同時に「やっぱり!」という気持ちも少しありました。

金子 僕も作品には自信があったけど、文化が違う国の人に、カナの魅力が伝わるのか半信半疑でした。でも、カンヌでは皆さんがすごく楽しんでくれて。日本映画が世界に通用することを実感し、自分に自信がつくと同時に、さらに頑張ろうとモチベーションが上がった。

-河合さんは念願の山中作品への出演が実現した今、どんな手応えを感じていますか。

河合 経緯を含めて、これまでの人生でこういうことは他になかったので、私にとって山中監督は特別な存在です。だから、またご一緒したいと思っていますが、軽々しくそう言えない怖さがあります。今回宝物のような経験ができた分、それ以上の作品にしなければ、というプレッシャーもあって。でも、必ずまた一緒に映画を作りたいです。

(取材・文・写真/井上健一)

(c)2024『ナミビアの砂漠』製作委員会

9月6日 TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

石橋静河「皆さんに『一歩前進してみようかな』と思っていただけたら」連続テレビ小説主演に懸ける思い【連続テレビ小説「ブラッサム」インタビュー】

ドラマ2026年9月26日

  -劇中では、渡部篤郎さん演じる珠の父・清治が強烈な存在感を放っています。珠と清治の関係も物語の重要なカギになりそうですが、2人の関係をどのように捉えていますか。  実際のお父様は、宇野千代さんが「ドストエフスキーの小説に出てくる狂人のよ … 続きを読む

【映画コラム】戦争が終わった後に残るものは…『ハート・オブ・ビースト』『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』

映画2026年9月25日

『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』(9月11日公開)  ニューヨークの貧しい家庭に生まれたアフリカ系アメリカ人のアレン・ネルソン(ロドニー・ヒックス)は、貧困と差別から抜け出すため18歳で海兵隊に入隊する。1966年、ベトナム戦争 … 続きを読む

市川團十郎、市川新之助「こういう形で記録に残せたのは非常によかったと思います」【インタビュー】『襲名』

映画2026年9月24日

-クライマックスの「勧進帳」で、歴代の團十郎さんによる弁慶と富樫が重なって映るシーンも、三池監督の発案でしょうか。 團十郎 私からは何も言っていません。三池さんが一生懸命にお作りになって、ああいう形になってよかったと思います。父(十二代目) … 続きを読む

尾上松也「金田一耕助を演じる喜びがふつふつと」奥智哉「今の時代にふさわしい作品に」名作ミステリー映画で共演『八つ墓村』【インタビュー】

映画2026年9月18日

-お二人は今回が初共演だそうですが、そういう金田一と辰弥の関係をどのように作っていったのでしょうか。 松也 僕のクランクインが、ロケ地の岡山でちょうど奥さんや堀田(真由/森美也子役)さんと3人のシーンでしたので、初日の撮影が終わった後にみん … 続きを読む

有村架純、石田ひかり、姫野花春「見終わった後ですごく幸せな気持ちになれる映画です」『さとこはいつも』【インタビュー】

映画2026年9月18日

有村 花春ちゃんは、その青さといい輝きといい、本当に今しかないものがしっかりと画面に映っていました。15歳の聡子ちゃんには、まだ名の知れぬ感情がいっぱいある。これからこの子はいろいろな感情を知って大人になっていく。今はそのスタートラインにい … 続きを読む

page top