紅ゆずるの“ゼロ地点”は「宝塚歌劇団の公演を初めてテレビで見た日」【インタビュー】

2024年9月3日 / 08:00

 「ミステリーの女王」と呼ばれる推理小説家アガサ・クリスティーが1944年に発表した長編小説を原作とした舞台、ノサカラボ「ゼロ時間へ」が10月3日から東京・三越劇場ほかで上演される。ミステリーを専門に舞台を制作しているノサカラボの代表であり、これまでも数々のミステリー作品を手がけてきた野坂実氏が演出を務める本作は、ある貴族の邸で起こった殺人事件を解き明かしていくストーリー。主人公の資産家でプレイボーイのネヴィル・ストレンジを原嘉孝、ネヴィルの最初の妻・オードリーを紅ゆずるが演じる。紅に本作への意気込みや役作りについて、さらには紅自身の「ゼロ時間」(スタート地点)について聞いた。

紅ゆずる (C)エンタメOVO

-ノサカラボには2023年上演の「ホロー荘の殺人」以来のご出演になりますが、当時の思い出を教えてください。

 当時、私が最初に感動したのは、お芝居が終わった後に野坂さんからとても細かく、丁寧なノート(ダメ出し)があったということでした。演者は何人もいる中、演出家お一人なのに、昨日と今日の違いについても言及いただき、しかもそれがとても的確なんです。私たちの意見を聞きながらも、こうすれば良いと明確に答えてくださるので、お芝居することがものすごく楽しいと思いました。なので、こうして再びノサカラボに出演できることがうれしいです。

-本格的なミステリーを舞台で表現するのは難しいことだと思いますが、それについてはいかがですか。

 本当にミステリーは難しいですね。(「ホロー荘の殺人」を上演した)東京三越劇場は、お客さまとの距離がものすごく近いので、(観客が)嘘だと感じたら興ざめしてしまうんですよ。うそがすぐにバレてしまう距離感なので、どれだけリアルにお伝えできるのかということを大事にしました。

-そうすると、「ホロー荘の殺人」で一番、難しさを感じたのはそうしたいかに観客を引き込むかという点だったのでしょうか。

 そうですね。もちろん、全てが難しかったですが(苦笑)。「リアルを目指す」ということ自体がうそだという感じがしてしまうので、何が正しいんだろうと。今回も模索したいと思います。

-では、今作の脚本を読んだ感想を教えてください。

 ミステリーではあるけれども、人間関係のもつれを描いた作品だと思いました。(原作の)アガサ・クリスティーは、どのようにその殺人を行ったかという手口よりも、人間模様や人間関係を多く描く作家さんだと思います。野坂さんも人との関わりを大切に描かれているので、原作をさらに凝縮してお見せするという作品になっていると思います。それから、伏線が多数張られている作品ですが、関係ないと思うようなことも実は伏線で…ということがたくさんあるんですよ。全員が犯人っぽいというミステリーはよくありますが、この作品はそうではなく、全員が核心に触れていない。殺人なんか起こりそうにない空気の中、起こるんです。核の部分を全員が避けているような感じがして、犯人を明かしてくれないと犯人が誰か分からないままだと感じる作品でした。

-今回はそうした作品で元妻のオードリーを演じられますが、脚本から感じた役柄の印象は?

 控えめな女性という印象です。ただ、控えめに見えるけれども、本当はそれほど控えめではないのかなとも思います。ネタバレになってしまうので、あまり詳しくは言えないのですが、自責の念に駆られるタイプの人だと思うので「私が我慢すればいい」「私が悪かったんだ」という考え方をして自分でなんとかしようとする。それを淡々としているように見えるので、感情を表に出さず、落ち着いた人だと思われがちですが、決して感情がないわけではなく、暗いわけでもないんだと思います。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【週末映画コラム】『六人の嘘つきな大学生』/『アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師』(11月22日公開)

映画2024年11月22日

『六人の嘘つきな大学生』(11月22日公開)  大手エンターテインメント企業「スピラリンクス」の新卒採用の最終選考に残った6人の就活生への課題は「6人でチームを作り、1カ月後のグループディスカッションに臨むこと」だった。  全員での内定獲得 … 続きを読む

生駒里奈が語る俳優業への思い 「自分ではない瞬間が多ければ多いほど自分の人生が楽しい」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2024年11月20日

 ドラマ・映画・舞台と数多くの作品で活躍する生駒里奈が、ストーリー性のある演劇的な世界観をダンスとJ-POPで作り上げるダンスエンターテインメント集団「梅棒」の最新作、梅棒 19th GIFT「クリス、いってきマス!!!」に出演する。生駒に … 続きを読む

史上最年少!司法試験に合格 架空の設定ではないリアルな高校2年生がドラマ「モンスター」のプロデューサーと対談 ドラマ現場見学も

ドラマ2024年11月17日

 毎週月曜夜10時からカンテレ・フジテレビ系で放送している、ドラマ「モンスター」。趣里演じる主人公・神波亮子は、“高校3年生で司法試験に合格した”人物で、膨大な知識と弁護士として類いまれなる資質を持つ“モンスター弁護士”という設定。しかし今 … 続きを読む

八村倫太郎「俊さんに助けられました」、栁俊太郎「初主演とは思えない気遣いに感謝」 大ヒットWEBコミック原作のサスペンスホラーで初共演『他人は地獄だ』【インタビュー】

映画2024年11月15日

 韓国発の大ヒットWEBコミックを日本で映画化したサスペンスホラー『他人は地獄だ』が、11月15日から公開された。  地方から上京した青年ユウが暮らし始めたシェアハウス「方舟」。そこで出会ったのは、言葉遣いは丁寧だが、得体のしれない青年キリ … 続きを読む

「光る君へ」第四十三回「輝きののちに」若い世代と向き合うまひろと道長【大河ドラマコラム】

ドラマ2024年11月15日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。11月10日に放送された第四十三回「輝きののちに」では、三条天皇(木村達成)の譲位問題を軸に、さまざまな人間模様が繰り広げられた。  病を患い、視力と聴力が衰えた三条天皇に、「お目も見えず、お耳 … 続きを読む

Willfriends

page top