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彼がアセクシャルだったということは、彼の内面を描く上ではとても大切な要素の一つでした。つまり彼は、性衝動を全て音楽に注ぎ込んだ人だったのです。性衝動の代替として音楽に注力したところを見せたいという思いもありました。それから母への愛がすごかったというのは事実です。母が亡くなって3年間も何も書けなかったというぐらいの溺愛ぶりでした。ラベルはひょっとしたら抑圧された同性愛者ではなかったのかという仮説があります。実際に実現してはいないけれども、そういうところがあったのではないかという。けれども真実は決して分かりません。今回、映画作りを通してラベルと身近に付き合った私の感覚としては、彼はどちらかというと性生活を持たない人だったというところに落ち着いています。
その通りです。彼女たちをちゃんと表現する、ちゃんと表象としてスクリーンで見せることを心掛けました。ラベルの周りにいた女性たちは私にとっても大切な存在でした。しかも、それぞれが違うキャラクターでラベルを支えました。なので、ラベルが亡くなる時に、夢の中で彼女たちの姿が順々に現れて…という形で描いたわけです。セックスだけが、男女関係を結ぶものではないですよね。幸いなことに、彼女たちは本当に深い関係性でラベルと結びついていたと思います。ラベルには大人に成り切れない永遠の少年みたいな部分があった。だから、それ故のオーラみたいなものがあったのではないかと思います。
私がオーディションで彼を選んだのは、この人だったらラベルの繊細さやデリケートな部分、ちょっと脆弱な部分、感受性の鋭いセンシティブなところを分かって演じてくれるのではと感じたからです。もちろん彼に全てを任せたわけではなく、2人で一緒に作り上げていったラベル像ですけれども、とても満足しています。ラベルは、感情を爆発させるような人ではありません。全てを抑圧してしまうような、何かフィルターをかけたような感受性を、ラファエルは本当に見事に繊細に演じてくれたと思います。
日本で上映されることをとてもうれしく思っています。日本には何度か訪れたことがあって、日本の皆さんがフランスの文化、あるいはフランスのさまざまな映画に興味を持ってくださっていることを知っています。なので、この映画も「ボレロ」の揺りかごに揺られながら、映画に身を任す感じでうっとりと見て、聞いてくださればと思います。それから、ラファエル・ペルソナの素晴らしい演技に魅了されてほしいです。
(取材・文/田中雄二)
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