エンターテインメント・ウェブマガジン
(C)NHK
一条天皇とのシーンは、総じてとても複雑でした。最初は、かわいい弟分だった相手を男性として見るようになり、愛し合い、その後はただ「好き」というだけでなく、「この人に見放されたら、自分と子どもには行くところがなくなる」という保身的な意味も加わってくるので。それに対して、一条天皇は愛一筋のキャラクターだったので、その温度差に、お互いのすれ違いも見えましたし。後半は、愛情を注がれることはうれしいし、それに全力で応えたいけど、ほかにも考えなければいけないことがあるし…という混沌(こんとん)とした感情が、私の中でも渦巻いていました。
最も難しかったのが、途中、政治的な考えを持ち始めるくだりです。父や兄のために政治的な動きをしつつも、そこに夢中になると一条天皇への愛がうそに見えてしまいます。家族のことを考えるのと同時に、一条天皇との愛も本物であることを表現したかったので、そのバランスに悩み、監督にも細かく相談しながら演じていきました。
ただ、定子にとって一条天皇は、清少納言と同じくらい大切な相手なので、共演経験のある塩野さんとご一緒できたことは良かったです。しかも、塩野さんもウイカさんと同じように、「定子さん好きです」と言葉でストレートに表現してくださったので、そこにも救われた感覚が強くありました。
定子を応援してくださった皆さんの評判は今一つのようですが、実は私は伊周のことが結構好きなんです。最初のうちは「この人さえしっかりしていたら、こんなことにならかったのに」という思いもありました。でも、三浦さんが全力で不格好な伊周を演じられる姿を見ていたら、怒りよりもあまりに哀れで涙が出てきて。それは、台本を読んでいるときには生まれなかった感情で、あそこまで生き切ってくださると、一周回って愛せてしまうなと。
三浦さんとのお芝居では、私が激しく罵倒されるハードなシーンも多かったのですが、三浦さん側を撮り、次に私側を撮り…という段取りで進む撮影で三浦さんはすべてのカットを全力で罵倒し、暴れてくださって。私も感情を同じテンションに持っていくことができました。三浦さんの伊周を「すてきだな」と思って見ていました。
出家のシーンは、台本では最後に「切ってしまった!」と衝撃的な幕切れを迎える印象だったので、熱量の高い場面にしたいと思っていました。当時の出家は、自死に近い感覚だったそうですし。ただ、現代の感覚では、髪を切ることがそれほど大事には感じられないので、「髪を切ったくらいで、どうしたの?」と、白けた印象にならないか不安だったんです。でも、定子が髪を切るまでに、伊周が駄々をこね、母上(高階貴子/板谷由夏)が号泣し…と皆さんが一段一段、階段を上るようにお芝居を構築してつないでくださって、無事に演じることができました。家族みんなで協力して作り上げたシーンでした。
全てのキャラクターが生き生きしていますよね。誰しも、よい面もあれば悪い面もあり、それが絡み合いながら、気付くと史実に沿って話が進んでいる…そんな印象があって。平安時代の人と人との関わり合いは、令和の時代に生きる私たちにとって一見、縁遠い感じなのに、大石さんが描かれると、とても身近に感じられるんです。恋愛にときめき、政治や陰謀など感情の交錯にハラハラし…。そんなふうに、1年もの間、「次はどうなるんだろう?」と毎回思わせてくださる大石さんは、本当にすてきだなと。
今回、自分が学校で学んできたものと演じているときの体感が一致する感覚を初めて味わい、とても新鮮でした。「枕草子」をはじめ、この歳になって改めて日本の文化の美しさを知ることができた気がします。日本の地上波のテレビドラマでそういう作品をやれることが幸せで、海外の方にもご覧いただけたら…と思いました。シリアスで大変なシーンも多かったのですが、現場自体はとても穏やかで楽しく過ごすことができました。この作品に出演することができ、本当に幸せでした。
(取材・文/井上健一)
(C)NHK
映画2025年8月29日
-今回は、実年齢より年上の役で年上の吉岡里帆さんの先輩役でもありましたが難しかったですか。 水上 難しかったです。30代の工藤は単純に今の自分を老けさせればいいという話でもなく、精神的な部分で年上の人間として、令子がほれるような人間像を作っ … 続きを読む
舞台・ミュージカル2025年8月28日
YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。 ▼講談は落ちない 「今日の話はオ … 続きを読む
映画2025年8月26日
-同年代の共演者とはアドリブでやり取りをしたこともありましたか。 奏介がテルオたちと大きなオブジェを作るシーンがあって、映画のスピードはずっとゆっくりなのに、あのシーンだけ会話のスピードが速くなるんです。そこで結構アドリブを入れたんですけ … 続きを読む
舞台・ミュージカル2025年8月26日
-皆さんの歌唱シーンもあるのですか。 橋本 それはもちろん、ちょくちょくあります(笑)。歌います。アンサンブルの方と一緒に歌うシーンもありますが、ミュージカルではないんです。バックに流れていて、それに合わせて芝居していくという形だと思います … 続きを読む
ドラマ2025年8月25日
また、原作から得た気付きも大きいという。「原作には、読者の感情を揺さぶる瞬間が描かれています。それがどこにあるのかを探りながら、ドラマにもそのエッセンスを取り入れるようにしています」。 原作の短編では、百々がさまざまな医療機関を受診して … 続きを読む