「寅子が裁判官としてキャリアを切り開いていくことに」連続テレビ小説「虎に翼」制作統括・尾崎裕和氏が語る舞台裏と今後の展望【インタビュー】

2024年6月1日 / 08:15

-第8週で寅子に娘が生まれた際、出産シーンが描かれなかった一方で、女性の生理が描かれるなど、今までの朝ドラのイメージを覆す部分もありますが、その狙いは?

 基本的に、脚本執筆の段階でこちらから吉田さんに「この場面を入れましょう」あるいは「これはやめましょう」とお願いしているわけではありません。いずれも、吉田さんが脚本を書かれる際に物語の展開において、必要な要素を入れている。だから、出来上がった脚本を読むと、生理については、女性の人生やキャリアを描くならあってしかるべきだと思えますし、逆に出産シーンはなくても違和感のない物語になっていました。

-吉田さんの脚本の魅力をどんなところに感じていますか。

 出産だけでなく、寅子の幼少期や終戦時の玉音放送などが、この作品にはありません。吉田さんは「虎に翼」の物語の中で、そのシーンが必要かどうか思考して脚本を作り上げています。すべてをゼロベースで見て、物語を組み立てていけるのが、吉田さんの素晴らしいところです。そういう意味で、吉田さんに執筆を依頼したわれわれが期待していた以上の脚本になっています。

-今後の物語について伺います。第10週以降はどのような展開になるのでしょうか。

 終戦を迎え、新たなスタートを切る寅子が、裁判官への道を歩み始める過程も含めて「裁判官編」となります。再び法律と向き合う仕事を始めた寅子が、いかに職場で戦っていくか、というところから幕を開けるのが、第10週です。そんな寅子の前に現れるのが、久藤頼安(沢村一樹)、多岐川幸四郎(滝藤賢一)といった法曹界の人たち。寅子が彼らといかに対峙(たいじ)し、乗り越えていくかが今後の一つの見どころになります。ただ、久藤も多岐川も共に仕事に対しては誠実ですが、それぞれ個性的で、寅子を振り回す形になるので、コミカルなテイストも楽しんでいただけると思います。沢村さん、滝藤さんと対峙する伊藤さんのお芝居にもぜひご注目ください。

多岐川幸四郎役の滝藤賢一(左)、久藤頼安役の沢村一樹(C)NHK

-寅子と共に法律を学んだ梅子(平岩紙)の姑・大庭常(鷲尾真知子)の登場も発表されましたが、その他の仲間たちのその後も気になります。

 主人公は寅子ですが、この作品はさまざまな女性たちの物語でもあり、女子部で一緒に法律を学んだ同級生たちも、寅子同様に人生を重ねていくつもりで描いています。ですから、梅子だけでなく、その他の仲間も今後、寅子の人生と再び交錯する機会が出てきます。

-吉田さんは寅子の学生時代からの親友で、兄嫁の花江(森田望智)を「もう1人の主人公のつもりで書いている」と語っていますが、花江に託した思いをお聞かせください。

 花江は、仕事に生きる寅子と異なり、家庭を守って生きる女性です。吉田さんには、寅子だけでなく、花江のような生き方も肯定したいという強い思いがあります。ですから、花江も寅子と並んで人生を歩み、折々に背負っているテーマが寅子とは対照的な言動となって現れます。そういうことをしっかり描きたいという意味で、吉田さんは「もう1人の主人公」とおっしゃったのだと思います。伊藤さんと森田さんの息の合ったお芝居も含め、花江の今後にもぜひご注目ください。

-最後に、これからの見どころを教えてください。

 やがて裁判官になった寅子の周りには、同僚の星航一(岡田将生)やその父で最高裁長官の星朋彦(平田満)、弁護士の杉田太郎(高橋克実)といった人物も現れます。さまざまな出会いや懐かしい顔ぶれとの再会を繰り返し、男性に囲まれた環境の中で孤軍奮闘する寅子が、困難や苦しさを乗り越えながら、やりがいや喜びを見つけ、女性としてキャリアを切り開いていく物語は今後、さらにパワーアップしていきます。ぜひご期待ください。

(取材・文/井上健一)

(C)NHK

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

蓮佛美沙子&溝端淳平「カップルや夫婦が“愛の形”を見直すきっかけになれたら」 グアムで撮影した新ドラマ「私があなたといる理由」【インタビュー】

ドラマ2025年7月1日

 ドラマ「私があなたといる理由~グアムを訪れた3組の男女の1週間~」が、7月1日からテレ東系で放送がスタートする。本作は、グアムを訪れた世代が違う男女3組のとある1週間を描いた物語。30代の夫婦(蓮佛美沙子、溝端淳平)、20代の大学生カップ … 続きを読む

風間俊介「横浜流星くんと談笑する機会が増えてきたことがうれしい」蔦重と和解した鶴屋喜右衛門役への思い【大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」インタビュー】

ドラマ2025年6月29日

-それが変わってきたということでしょうか。  物事は、ある程度加速がつき、歯車がスムーズに回り始めれば、少ないエネルギーで進んでいくようになりますが、スタートするときは膨大なエネルギーが必要です。この作品もそういう過程を経て、ようやく彼が笑 … 続きを読む

栗田貫一「今回はルパンたちが謎の世界に迷い込んで謎の敵と戦って、しかも前に倒した連中もよみがえってくるみたいな感じです」『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』【インタビュー】

映画2025年6月27日

-30年間やってきて、栗田さんなりのルパンに対する思いや魅力について。また栗田さんにとってルパンとはどういう存在でしょうか。  やっぱりルパン三世の声は、パート2や『ルパン三世 カリオストロの城』(79)の頃の、山田さんが一番元気だった頃の … 続きを読む

光石研、大倉孝二「ちょっと重いけれどちゃんとエンターテインメントになっていると思います」『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』【インタビュー】

映画2025年6月27日

-三池崇史監督の演出や映画に対する姿勢についてはどう感じましたか。 大倉 あまり無駄なことはおっしゃらないです。すごく明確な演出をなさいます。僕の場合は、校長と薮下先生との間に挟まれているという、スタンスにちょっとよどみがあったのかもしれな … 続きを読む

【週末映画コラム】『トップガン マーヴェリック』と兄弟のような『F1(R)/エフワン』/過酷な救急医療現場にリアルに迫った『アスファルト・シティ』

映画2025年6月27日

『アスファルト・シティ』(6月27日公開)  犯罪と暴力が横行するニューヨークのハーレム。クロス(タイ・シェリダン)は医学部への入学を目指し勉学に励む一方で救急救命隊員として働き始める。  ベテラン隊員のラット(ショーン・ペン)とバディを組 … 続きを読む

Willfriends

page top