西銘駿、デビューから10年「まだ全然満足していない」 目標は「その場にいたら安心できる俳優」【インタビュー】

2024年5月22日 / 08:00

 -西銘さんが演じる浜岡という役柄について、今はどう感じていますか。

 稽古場に入ってから変わってくるとは思いますが、(結城伽寿也が演じる)早崎との距離感が大事になるだろうと考えています。この作品は、劇中に野球をプレーするシーンがたくさん出てくるのですが、野球をプレーする上ではセカンドとショートは相棒のようなところがあるんですよ。なので、お互いに信頼し合っている関係性を作っていきたいですし、芝居の距離感や雰囲気でお互いのキャラを立たせていければと思います。

-浜岡に共感できるところはありましたか。

 めちゃくちゃあります。僕は俳優という皆さんに見てもらうお仕事をしてるので、どうしても強がってしまうところもありますし、「明るい」という自分のイメージに合ったキャラクターを演じなければいけない場面もあります。もちろん、それも本来の自分ではあるんですが、内に秘めたところでは「本当はこうしたい」「本当はこうなりたい」という思いもあるので、そういう意味では浜岡の心情はすごく分かりやすいです。僕はビビりですし、人見知りですし、お芝居することへの恐怖心もあります。自分の芝居はだめだなと客観的に思って自信をなくすこともあります。意外と弱いところがあるんですよ。浜岡も同じように、戦時中だからこそ感じる不満や恐怖、我慢を抱えながらも、それを見せないで生きています。きっと現代の若者にはない思いもたくさんしていると思うので、それをリアルに深掘りできればいいなと思います。浜岡は人間魚雷としての出陣を控えているという人物ですが、みんなの前で強がって「お前らは飛行機の故障とかで不時着すればいいけど、俺は乗った瞬間に絶対に死ぬんだ」と言うんですよ。本当は怖いのに、覚悟を持っているからこそ、それを言う。彼の心の深みをどれだけ出せるのか、今から考えているシーンです。

-戦時中の若者たちの心境も理解できるところがありますか。

 今、もし「特攻しろ」と言われたらなかなか難しいとは思います。現代にはSNSがあって、批判の声も上がるだろうし、炎上だってある。なので、戦時中とは前提が大きく違うとは思います。スタートが違うので現代でも同じだとは思いませんが、演じる上では当時の状況をよく理解して、それを前提としたお芝居をしないと、ただのかわいそうな人たちになってしまうと思うんですよ。彼らは彼らの信念をしっかりと持っていた。でも、「本当は怖い」「本当に死ぬのか」というリアルな心も持っている。それを表現できたらと思います。実は、僕は戦時中を描いた作品に出演するのは初めてなんですよ。なので、この作品はより演じる難しさを感じていますし、役者というお仕事は本当に特殊なものだなと思わされています。戦争が目の前にある中で「野球をしたい」と思う。それを演じるのはどんな感覚だったんだろうと、今はそれを強く感じています。

(取材・文・写真/嶋田真己)

 舞台「野球」飛行機雲のホームラン~Homerun of Contrailは、6月22日~30日に都内・天王洲 銀河劇場、7月6日~7日に大阪・サンケイホールブリーゼで上演。

舞台「野球」飛行機雲のホームラン~Homerun of Contrail

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

井之脇海「ものすごい達成感がありました」蔦重に見守られながら迎えた新之助の最期【大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」インタビュー】

ドラマ2025年9月4日

-新之助の親友ともいえる蔦重を演じた横浜流星さんの印象はいかがでしたか。  横浜さんほどストイックな座長は見たことがありません。共演は今回が初めてですが、実は横浜さんとは10年位前からオーディションでよく見かけていて、ワークショップでも一緒 … 続きを読む

坂東龍汰「この映画は絶対に映画館で見てほしいです。特にドラゴンライドのシーンは圧巻です」『ヒックとドラゴン』【インタビュー】

映画2025年9月4日

-吹き替えで難しかったところと楽しかったところはありましたか。  初めてのことだったので、付いていくのに必死な部分もありましたし、基本的には全てが難しかったのですが、それと同じぐらいの楽しさもありました。自分が当てた声を見たり聞いたりする時 … 続きを読む

小池栄子、45歳を目前に控えて見据える未来「小池栄子が出ているから見てみようかなと思ってもらえる存在でいたい」 劇団☆新感線「爆烈忠臣蔵〜桜吹雪 THUNDERSTRUCK」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年9月3日

-劇団☆新感線は45周年を迎えますが、小池さんも今年、45歳になります。40代になって変わったところはありましたか。  みんな同じだと思いますが、疲れが取れない(笑)。気持ちだけではどうにもいかないことがあるなと思いました。女性の場合、更年 … 続きを読む

間宮祥太朗「周囲に合わせようとせず、自分のペースを保つことを考えていた」“自分らしさ”の大切さを描くアニメ映画に声の出演『不思議の国でアリスと -Dive in Wonderland-』【インタビュー】

映画2025年9月2日

-確かにその通りですね。  そういう意味では、その両方が真実でもあると思います。その中で自分でどうにかできるのは、「自分の考える自分らしさ」なのかなと。自分が「こうしたい」「こういうことはしたくない」と考えることが、自然と「自分らしさ」につ … 続きを読む

【映画コラム】夏の日の少年たちが頑張る映画『ベスト・キッド:レジェンズ』『蔵のある街』『海辺へ行く道』

映画2025年9月1日

『蔵のある街』(8月22日公開)  岡山県倉敷市に住む高校生の蒼(山時聡真)と祈一(櫻井健人)と紅子(中島瑠菜)は、小学校からの幼なじみ。ある日、蒼と祈一は、紅子の兄で自閉スペクトラム症のきょんくん(堀家一希)が神社の大木に登って叫んでいる … 続きを読む

Willfriends

page top