「大嫌いなキャラクターを演じるのが結構好きなんです」『白日青春 生きてこそ』アンソニー・ウォン【インタビュー】

2024年1月27日 / 12:51

ー監督の談話を読んだら、「この映画は、父の愛を渇望する息子と、息子を理解しようともがく父親の物語」だと語っていましたが、駄目おやじを演じることは、どんな感じだったのでしょうか。

 役者としては、役を演じるに当たって、何か切り口になるものを見つけなければなりません。そこから出発して、演技全体の中で、どういうふうにバランスを取るかを考えるのですが、今回は、脚本を読んだ時に、この役のポイントはどこにあるのかということを一生懸命考えました。それで、これは頑固な駄目おやじの話だというポイントは見つかったのですが、では、演じる時にはどうしたらいいのか、単にこいつは駄目おやじだというふうに演じればいいのかと悩みました。そんなふうに演じると、多分観客の皆さんは、見ていて飽きてしまうのではないかと思いました。なので、どうしたらいいのかと考えたら、嫌なやつだけど、どこかかわいいところもある、そのバランスを取りながら演じることが、とても大事だと気付きました。実は、今まで役者をやってきて、今回のように自分が大嫌いなキャラクターを演じるのが結構好きなんです。

ーウォンさんは、これまでいろんな役を演じてきました。今回の役は、嫌いなキャラクターだけど演じるのは好きだとおっしゃいましたが、この映画は、ウォンさんのキャリアの中でどんなものになったのでしょうか。

 この映画のおかげで賞を頂きました(笑)。でも、その喜びは1週間も続かなかったです。それで終わりです。

ー日本の観客に向けて、映画の見どころなども含めて、一言お願いします。

 私は、映画のどこがお薦めなのか、見どころはどこなのかを説明するのがとても下手なので一言では言えません。自画自賛になってしまうとまずいかなとも思います。それに「ここは素晴らしいですよ」と言っても、観客の皆さんがいいと感じるところとは違うかもしれない。何かだましてしまうみたいな感じがするんです。昨日も、インタビューの中で、似たような質問があったのですが、私としては、やはり映画を見るときは全体を見ないと…と思います。例えば、私たちが文章を読むときも、最初から最後まで読まずに、ここだけ読めばいいということにはならないですよね。だから、映画の見どころを聞かれて、どう答えたらいいのかと思いました。

 それに、日本のインタビュアーの皆さんは、「この映画好きですよ」「すごく良かった」「とてもリアルで演じているようには見えない」などと褒めてくださいますが、香港のインタビュアーの皆さんとは全く違います。香港では「この映画はまあまあだね」とか「その程度だね」という感じです。だから、この映画を見た日本の人たちは、本当にいいと思ったのかなと不思議な感じがします。私も映画はたくさん見ますが、私の鑑賞の基準とか、趣味とか、これを持ってお薦めするというのは、なかなか言えません。だから、日本の皆さんが、これを見て本当に良かったということであれば、ぜひ周りの人にも見ることを薦めていただきたいと思います。

(取材・文・写真/田中雄二)

PETRA Films Pte Ltd (C)2022

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

田中真弓「70歳、新人のつもりで頑張っています」憧れだった朝ドラレギュラー出演 連続テレビ小説「虎に翼」【インタビュー】

ドラマ2024年7月26日

-「女の幸せ」という稲の一連のせりふは、田中さんご自身の生き方と相反するようにも感じますが。  友人たちから「真弓が絶対に言わない言葉だな。お前は絶対に反対側だな」という連絡がいくつもきましたし、自分でもそう思いました。女性は結婚や出産を機 … 続きを読む

真彩希帆、憧れの「モーツァルト!」でコンスタンツェ役 「この作品を見に来て良かったと感じていただきたい」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2024年7月26日

-では、真彩さんのこれまでの歩みも聞かせてください。2012年に宝塚歌劇団に入団し、雪組ではトップ娘役を務めました。その後、21年に退団し、現在は俳優として活動されています。まず、宝塚をめざしたきっかけを教えてください。  子どもの頃から東 … 続きを読む

【週末映画コラム】歴史の「if」を描いた2本『もしも徳川家康が総理大臣になったら』/『お隣さんはヒトラー?』

映画2024年7月26日

『お隣さんはヒトラー?』(7月26日公開)  1934年の東欧のある町。幸せそうなポーランド系ユダヤ人一家の日常が映る。一転、1960年の南米・コロンビア。ホロコーストで家族を失い、ただ一人生き延びたポルスキー(デビッド・ヘイマン)は、町外 … 続きを読む

鈴木梨央「特撮映画の魅力を実感しました」子役時代から活躍してきた若手俳優が、ファンタジー映画に主演『カミノフデ ~怪獣たちのいる島~』【インタビュー】

映画2024年7月25日

-ご自身が演じた時宮朱莉役に対する思いをお聞かせください。  朱莉と同世代ということで、家族に対して素直になれない部分など、自分にも当てはまる部分もあり等身大で演じることができました。 -鈴木さんは子役時代から数多くの役を演じてきましたが、 … 続きを読む

児玉すみれ、『怪盗グルーのミニオン超変身』で声優初挑戦「アグネスになりきれるのが楽しかった」【インタビュー】

映画2024年7月24日

-一番難しかったシーンは?  スーパーで叫ぶところが難しかったです。あまり普段の生活で叫ぶことがないので、どうやって叫んだらいいのか分からなかったですし、タイミングも合わせなくてはいけないので。でも、そこが一番楽しいシーンでもありました。 … 続きを読む

Willfriends

page top