X


片岡愛之助、孫悟空役は「子どもの頃から憧れていた」 演出・堤幸彦のもと令和の「西遊記」を作り上げる【インタビュー】

 片岡愛之助が主演を務める、日本テレビ開局70年記念舞台「西遊記」が11月3日から開幕する。本作は、1978年に「日本テレビ開局25年記念番組」として制作され、一世を風靡(ふうび)した人気ドラマを令和版として舞台化。マキノノゾミが脚本、堤幸彦が演出を担当し、壮大なアクションスペクタクルを作り上げる。ドラマ版の堺正章からバトンを引き継ぎ、孫悟空を演じる愛之助に役柄への思いや公演への思いを聞いた。

片岡愛之助(メーク:青木満寿子/ヘア:川田舞/スタイリスト:九〈Yolken〉) (C)エンタメOVO

 

-最初にマキノさんの脚本を読んだときの感想を教えてください。

 僕は(1978年に放送されたドラマの)堺正章さんが孫悟空を演じた「西遊記」で育ってきましたので、どうしてもそのイメージを持って読んだのですが、それをいい意味で大きく覆してくださったすばらしい脚本でした。

-堺さんのイメージがある孫悟空を自分が演じると決まったときは、どんな心境でしたか。

 子どもの頃から憧れていた物語だったので、恐れ多くてこれまで自分が演じたいと思ったこともありませんでした。昨今は、さまざまな物語が歌舞伎化されていますが、「じゃあ、西遊記をやろう」なんて気軽には言えない作品。完成された、触れてはいけないという印象がありました。ですから、今回、自分がやらせていただけるとなって、役者冥利(みょうり)に尽きるなと感謝しかありません。お話をいただいて、堺正章さんが演じられていたドラマを見直したのですが、当時は、妖怪が本当に怖くて、子どもながらに集中して見ていたことを思い出しました。今、改めて見ても本当に面白い作品で、エンターテインメント性に溢れていて、当時は最先端だったんだろうなと思います。

-孫悟空を演じるにあたって、堺さんにはない愛之助さんらしさについてはどう考えていますか。

 僕ならではということはあまり意識していません。マキノさんが今回書かれた脚本が何よりも大切で、僕らにとっての1番大事な道しるべであると思っています。そして、堤監督が分かりやすい演出で導いてくださるので、僕はベクトルが向いている方向に突き進んでいくだけだと考えています。僕らしさはお客さまがどう感じていただくか。もちろん、「堺さんとは全然違った」と思う方もいらっしゃれば「共通するものがあったね」と感じられる方もいらっしゃるでしょうし、どう感じていただけるかはお客さまに委ねます。それぞれのお客さまに令和の「西遊記」を感じていただきたいです。

-なるほど。では、演じる上ではどんなところを意識したいと考えていますか。

 孫悟空は、やんちゃで暴れん坊で、乱暴ものですが、物語の中では彼の心情もしっかり描かれているので、気持ちの移り変わりは特にしっかり演じたいと思います。

-今回は、最新鋭の技術を使った堤さんの演出も注目されています。そうした技術効果についてはどんな楽しみがありますか。

  LEDの映像技術は僕にとって未知なる世界です。(2021年に堤監督が演出を手がけた舞台)「魔界転生」に声で参加させていただいて、拝見もしているので、そのすごさは知っていますが、実際に自分が出演し、それに合わせて芝居をするというのはとても難しいのだろうと思います。映像と合わせて動かなければいけないと思うので、そこは稽古で作り上げていきたいです。

-現在、堤さんとはどんなディスカッションをしていますか。

 そもそも、この作品のお話をいただいたのが2年くらい前で、その頃からご飯を食べながら、雑談はもちろん、この作品についてもたくさんお話してきました。でも、当時は、マキノ先生の脚本が出来上がるのを待っている状態でしたので、具体的なお話はまだできていなかったんです。今、稽古場でも机が隣同士なのですが、雑談ばかりですね(笑)。ただ、僕は分からないことがあればすぐに質問しますし、キャッチボールは常にさせていただいています。

-堤さんの演出を受けて、どんなことを感じていますか。

 プレ稽古という、本来のキャストではない方たちに演出をつけて、まず演出を固めてから本来のキャストたちが出来上がったものを体験するというものを初めて拝見しました。若手の皆さんのお稽古にもなりますし、僕たちにとっても勉強になります。それに、方向性が見える。作品を作り上げるときは、どこからステージに出て、どこに立つかといったことをすべて考えていくわけですから、シンキングタイムがすごく長くなる。それをあらかじめプレ稽古でやってくださって、出来上がった状態から入らせてもらえるので、すぐに通し稽古ができるんです。もちろん、僕たちは大変ですよ。ヒーッとなりながらやっていますが(笑)、とにかくスピード感があります。堤さんは合理的で頭の良い方なんだなと感じました。

-本作は、三蔵法師一行が天竺をめざして長い旅をするというストーリーですが、愛之助さんがもし長期休暇をとれたら、どんな旅がしたいですか。

 海外旅行は行きたいです。ブロードウェイなど各地でショーを見たいです。それから、バイクで日本1周。大型バイクの免許を取ったんですよ。妻と二人でバイクに乗って、行き先を決めずに走りたいですね。泊まる場所も決めずに、着の身着のままツーリングして日本を1周したいです。

-すてきですね。

 ワクワク感がありますよね。どこに泊まるのかも決まってないと。妻と二人のバイク旅はしてみたいですね。

 -ところで、今作は、年末年始を挟んでの公演になります。

  なかなかないですよね、年末年始をお客さまやキャスト・スタッフみんなと過ごす機会は。きっと楽しいと思います。年末年始の公演は特別なイベントも予定しているので、それも楽しみにしていただきたいです。

 -この作品で年を越し、新年を迎えますが、2024年はどんな一年にしたいですか。

 すでに1年間のスケジュールが決まっているので、今から何かやりたいと目標を立てるというよりは、健康で頑張ろうということだけです。そして、まずはこの作品をしっかり務められるように頑張ります。

(取材・文・写真:嶋田真己)

 

日本テレビ開局70年記念舞台「西遊記」

 

 日本テレビ開局70年記念舞台「西遊記」は、11月3日~5日に大阪・オリックス劇場ほか、福岡、名古屋、東京で上演。札幌では上映会&スペシャルトークを予定。

 

 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

「光る君へ」第十八回「岐路」女にすがる男たちの姿と、その中で際立つまひろと道長の絆【大河ドラマコラム】

ドラマ2024年5月11日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。5月5日に放送された第十八回「岐路」では、藤原道長(柄本佑)の兄・道兼(玉置玲央)の死と、それによって空席となった関白の座を巡る道長と藤原伊周(三浦翔平)の争いが描かれた。  妻・定子(高畑充希 … 続きを読む

【週末映画コラム】映画館の大画面で見るべき映画『猿の惑星/キングダム』/“お気楽なラブコメ”が久しぶりに復活『恋するプリテンダー』

映画2024年5月10日

『猿の惑星/キングダム』(5月10日公開)    今から300年後の地球。荒廃した世界で高い知能と言語を得た猿たちが、文明も言語も失い野生化した人類を支配していた。そんな中、若きノア(オーウェン・ティーグ)は、巨大な帝国を築く独裁 … 続きを読む

「場所と人とのリンクみたいなのものを感じながら見ると面白いと思います」今村圭佑撮影監督『青春18×2 君へと続く道』【インタビュー】

映画2024年5月9日

 18年前の台湾。高校3年生のジミー(シュー・グァンハン)はアルバイト先で4歳年上の日本人バックパッカーのアミ(清原果耶)と出会い、恋心を抱く。だが、突然アミの帰国が決まり、落ち込むジミーにアミはあることを提案する。現在。人生につまずいた3 … 続きを読む

田中泯「日本の政治に対する僕自身の憤りに通じる部分も多かった」世界配信となる初主演のポリティカル・サスペンスに意気込み「フクロウと呼ばれた男」【インタビュー】

ドラマ2024年5月9日

 あらゆるスキャンダルやセンセーショナルな事件を、社会の陰に隠れて解決してきたフィクサー、“フクロウ”こと⼤神⿓太郎。彼は、⼤神家と親交の深かった次期総理候補の息⼦が謎の死を遂げたことをきっかけに、政界に潜む巨悪の正体に近づいていくが…。先 … 続きを読む

海宝直人&村井良大、戦時下の広島を舞台にした名作漫画をミュージカル化 「それでも生きていこうというエネルギーをお見せしたい」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2024年5月9日

 太平洋戦争下の広島県呉市に生きる人々の姿を淡々と丁寧に描いた、こうの史代氏による漫画「この世界の片隅に」がミュージカル化され、5月9日から上演される。主人公の浦野すず役をWキャストで務めるのは、昆夏美と大原櫻子。すずが嫁ぐ相手の北條周作を … 続きを読む