鶴見辰吾、俳優を続ける原動力は“人との出会い”「立ち止まらず、歩き続けていたい」【インタビュー】

2023年7月26日 / 08:00

 理想の上司からヒール役まで幅広い役柄を演じ分け、存在感を発揮する鶴見辰吾。9月7日から上演される、Daiwa House Presents ミュージカル「生きる」では、主人公・渡辺勘治の前に立ちはだかる助役を熱演する。鶴見に同作への意気込みや俳優業への思いを聞いた。

鶴見辰吾 (C)エンタメOVO

-本作は、2018年に市村正親さんと鹿賀丈史さんのダブルキャストで日本発のミュージカルとして初演され、2020年の再演も大きな話題を呼んだミュージカルです。出演が決まった時の心境を教えてください。

  最初に「生きる」がミュージカルになるというお話を聞いた時から、どういうふうにミュージカルとして成立するのかなと好奇心と期待を込めて楽しみにしていました。初演を市村さんのバージョンで拝見して、ここまでミュージカルに合っている作品だったんだなと一観客として感動し、再演の時には鹿賀さんバージョンを拝見して、本当にすばらしい、いいお芝居だと改めて感じていたので、今回参加できることをうれしく思っています。

-原作は、黒澤明監督の同名映画です。俳優として、やはり黒澤作品には特別な思いがありますか。

 そうですね、今でこそ日本の映画監督が世界で評価される機会も多くなりましたが、今から40年前に世界的に評価が高い日本の映画監督は数少なかったですから、やはり特別でした。若い頃の私は、世界に飛び立ちたいという野望もあり、いつか黒澤さんの映画に出演できるような俳優になれたらと思っていました。1998年に黒澤さんが亡くなられて、結局、映画に出演することはかないませんでしたが、こうした形で、自分の希望が結実したということには思うところがあります。

-映画『生きる』とは違う、ミュージカルならではの面白さはどんなところにあると思いますか。

 日本でミュージカルというと、海外で作られたものを翻訳して上演することがほとんどです。私たちが演じる役柄の名前もスティーブだったりエリザベスだったり(笑)、そうした人物を日本人の僕たちが演じています。ですが、この「生きる」はわれわれの隣にいるような男性の人生がテーマですから、非常に身近です。もちろん、描いているテーマは普遍的で、誰にでも共感しやすい。きっとミュージカルを初めてご覧になる方にも楽しんでいただける作品だと思います。

-今回、鶴見さんは助役を演じますが、現状ではどのように演じたいと考えていますか。

 初演、再演で助役を演じていた山西惇さんが作り上げた、かわいらしさやユーモラスな面がある助役を踏襲しつつ、自分なりに演じたいと思います。私はこの作品には、根っからの悪人はいないと思うんですよ。みんなが生きるのに精いっぱいだっただけだと思うんです。助役は渡辺勘治の夢に立ちはだかる存在ですが、彼の夢が大きければ大きいほど、その夢が切実であればあるほど、私の役が大事になってくると思うので肝に銘じて演じていこうと思っています。

-今作の助役も主人公の敵役ですが、鶴見さんが演じた「TOKYO MER~走る緊急救命室~」の久我山秋晴役もその存在感で話題となりました。敵役を演じるときの面白さはどんなところに感じていますか。

 人間は、通り一辺倒ではなく、さまざまな内面を持っていると思います。敵役というのは、そうしたさまざまな内面の中から「本当はこんなことを言ったら嫌われるだろうな」とか「人間社会においてこの態度を取ったら転落してしまうよな」という危ない行動を選びとって実践します。なので、自分ではできないことを役としてできるという面白さはあります。助役は今でいうパワハラを行って周りを苦しめますが、そうした普段は自分でできないことを、役の上でやれるという自由さは敵役の面白さだと思います。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

安田章大「体験したことのない違和感を持ち帰ってくれたら」 アングラ演劇の旗手・唐十郎作品に関西弁で挑む『アリババ』『愛の乞食』【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年7月18日

 2024年に亡くなったアングラ演劇の旗手・唐十郎の初期作品『アリババ』『愛の乞食』が、全編関西弁で、8月31日から9月21日にかけて世田谷パブリックシアターで二作連続上演される。現実と幻想、現在と過去が溶け合うふたつの物語は、叙情的に紡が … 続きを読む

【映画コラム】7月前半『スーパーマン』『ストレンジ・ダーリン』『「桐島です」』『生きがい IKIGAI』

映画2025年7月18日

『スーパーマン』(7月11日公開)  1938年に発行されたコミックに始まり、何度も映画化されてきたアメコミヒーローの原点をジェームズ・ガン監督が新たに映画化。  いきなり、戦いに敗れ、傷だらけになったスーパーマン(デビッド・コレンスウェッ … 続きを読む

俳優デビュー25周年の上戸彩が15年ぶりの写真集を発売 台湾で幻想的な夜市でのロケから寝起き姿まで多彩な魅力満載

イベント2025年7月14日

 俳優デビュー25周年を迎えた上戸彩の写真集『Midday Reverie(ミッドデイ・リヴァリー)』(宝島社)が、7月10日に発売された。発売記念イベントが、7月12日(土)に大阪で、そして7月13日(日)に東京・紀伊国屋書店 新宿本店で … 続きを読む

JT・モルナー監督「この映画の実現は厳しいと言われた時に、『羅生門』を見れば分かると言いました」『ストレンジ・ダーリン』【インタビュー】

映画2025年7月11日

 シリアルキラーの恐怖に包まれた街を舞台に、とある男女の出会いが予測不能な展開へと突き進んでいく様子を、時系列を巧みに交錯させた全6章の構成で描いたスリラー映画『ストレンジ・ダーリン』が7月11日から全国公開される。米映画批評サイトのロッテ … 続きを読む

鹿賀丈史「演じることよりも感じることの方が先だったかなと思います」『生きがい IKIGAI』【インタビュー】

映画2025年7月10日

 2024年の元旦に発生した地震で甚大な被害を受け、さらに8カ月後の豪雨によって2度目の災害に見舞われた能登で、ボランティア活動に参加した宮本亞門監督が、復興支援を目的に製作したショートフィルム北陸能登復興支援映画『生きがい IKIGAI』 … 続きを読む

Willfriends

page top