「ちょっと気が楽になるような、何も気負わずに見てもらえるのがこの映画の魅力かなと思います」『1秒先の彼』清原果耶【インタビュー】

2023年7月5日 / 08:00

 監督・山下敦弘と脚本家・宮藤官九郎が初タッグを組み、台湾映画『1秒先の彼女」(20)をリメークした『1秒先の彼』が、7月7日から全国公開される。舞台を京都に移し、男女のキャラクター設定を逆転させ、周囲よりワンテンポ早い男性とワンテンポ遅い女性の“消えた1日”をめぐる物語を描いた本作で、”ワンテンポ遅い”レイカを演じた清原果耶に話を聞いた。

清原果耶 (C)エンタメOVO

-最初に宮藤官九郎さんの脚本を読んだときは、どんな風に思いましたか。

 きっととっても温かい映画ができるのだろうなと思ったことが一つと、出てくるキャラクターが、みんな個性的で、私が演じたレイカちゃんも、よく考えればとっても個性が強めなキャラクターではあるんですけど、それが薄れるぐらい、ものすごく特徴があるキャラクターが集まっていて、すごく魅力的だったので、演じるのが楽しみだなと思いました。

-演じる上で、何か気を付けたことはありましたか。

 (山下敦弘)監督と毎日現場で話していたのは、レイカちゃんの柔らかい雰囲気。空気のようにふわっと生きているというか、特別何かに執着することもなく、なるようになるという感じについてでした。部室に住んでしまったり、ちょっと気になるから尾行してみようみたいな、強いところもあるけれど、それを覆うぐらいの優しさを持ってできたらいいよねという話はしていました。

-今回演じたレイカは、「人よりワンテンポ遅い」というキャラクターでしたが、それをどう感じたかということと、どう演じようと思いましたか。

 撮影をしながら、「ワンテンポ遅いのって、思ったよりも時間を取らないとそうは見えないんだな」と気付きました。自転車がバスにぶつかって、みんなが「えっ何?」って振り返るシーンも、みんなはぱっと振り返れるけれど、私はそれをしてはいけないし、しかもそれは無意識の行動なので、すごく難しいと思いました。振り向くタイミングを探ったりするのは、計算というとちょっと違うかもしれませんが、そういうところを細かく組み立てていくのが難しかったです。

 普段は、「ちょっとクールそうだね」とか「しゃべらないとちょっと怖そう」とか言われがちなんですけど、レイカちゃんも言葉数が少ないキャラクターだったので、そういう、ちょっと近寄り難い雰囲気はなくした方がいいなと思って、監督と話をして、自信がなくはないけれど、ちょっと自信がないように見えるように、体を縮こませてみたり、手をわさわさしていたりとか、そういうところには気を付けて作っていたかもしれないです。

-ご自身は、早い方と遅い方のどちらでしょうか。

 あえていうなら、早い方だと思います。日によっては「遅くしよう」みたいな日もありますが、「今日はゆっくりでいいや」という日以外は、現場にいても、きゅっとして、「よし行くぞ」みたいな、「呼ばれたらレッツゴー」みたいなことは心掛けているので、多分早い方だと思います。でも、今回、自分が思っていたよりも遅くはないんだというのが分かって、レイカちゃんをやっているときは、「もっとゆっくりでいいんだ」と思いながら、のんきに緩やかに生きていました。

-それは、今回ロケをしたのが京都だったから、というのもあったのでしょうか。

 それもあったと思います。京都弁指導の先生がいらしたんですけど、せりふの言い回しとかで、ここは多分、京都で生きるレイカちゃんだったらもうちょっとゆっくり言うかも、みたいに、アクセントだけではなく、京都に住んでいる人の空気感みたいなものも教えていただきました。「このせりふ、パッて言いたくなるけれど、もうちょっと遅くした方がいい」とか、何かフィジカルな面だけではなくて、言葉の言い回しなども全てが難しかったという思いはあります。毎日が学びの日々でした。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【映画コラム】「2025年映画ベストテン」

映画2025年12月28日

 今回は、筆者の独断と偏見による「2025年公開映画ベストテン」を発表し、今年を締めくくりたいと思う。 【外国映画】  2025年公開の外国映画を振り返った時に、今年の米アカデミー賞での受賞作は最近の映画界の傾向を象徴するようで興味深いもの … 続きを読む

【Kカルチャーの視点】家族の情緒が国境を越える、俳優ムン・ソリが語る「おつかれさま」ヒットの理由

ドラマ2025年12月26日

 今年のヒットドラマ、Netflixシリーズ「おつかれさま」。子どもから親へと成長していく女性の人生とその家族を描き、幅広い世代から支持され大きな話題を呼んだ。IU(アイユー)との二人一役で主人公エスンを演じたムン・ソリに、ドラマの振り返り … 続きを読む

田中麗奈「こじらせ男の滑稽で切ない愛の行方を皆さんに見届けていただきたいと思います」『星と月は天の穴』【インタビュー】

映画2025年12月24日

 脚本家としても著名な荒井晴彦監督が、『花腐し』(23)に続いて綾野剛を主演に迎え、作家・吉行淳之介の同名小説を映画化した『星と月は天の穴』が12月19日から全国公開された。過去の恋愛経験から女性を愛することを恐れながらも愛されたい願望をこ … 続きを読む

天海祐希、田中哲司、小日向文世、でんでん、塚地武雅「12年の集大成を見届けてください!」大ヒットシリーズ、ついに完結! 劇場版「緊急取調室 THE FINAL」【インタビュー】

映画2025年12月23日

 2014年1月にスタートしたテレビ朝日系列の大ヒットドラマ「緊急取調室」。たたき上げの取調官・真壁有希子が、可視化設備の整った特別取調室で取り調べを行う専門チーム「緊急事案対応取調班(通称:キントリ)」のメンバーとともに、数々の凶悪犯と一 … 続きを読む

【映画コラム】時空を超えた愛の行方は『楓』『ビューティフル・ジャーニー ふたりの時空旅行』『星と月は天の穴』

映画2025年12月20日

『楓』(12月19日公開)  須永恵と恋人の木下亜子は、共通の趣味である天文の本や望遠鏡に囲まれながら幸せな日々を送っていた。しかし実は本当の恵は1カ月前にニュージーランドで事故死しており、現在亜子と一緒にいるのは、恵のふりをした双子の兄・ … 続きを読む

Willfriends

page top