朝ドラ“きぬちゃん”役で脚光の小野花梨が挑む、児童相談所のリアル 「社会全体が児童福祉司のお仕事を、もっとねぎらえるようになれたら」【インタビュー】

2022年9月2日 / 08:00

 映画『ほどけそうな、息』が9月3日から、都内のポレポレ東中野で公開される。本作は、児童虐待や家庭崩壊など、傷ついた子どもたちを救うために奔走する児童福祉司の苦悩と実態を描く。主人公の児童福祉司のカスミを、NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」でヒロインの幼なじみの“きぬちゃん”を演じて脚光を浴びた小野花梨が演じている。公開に当たり、小野が、本作に臨んだ思いや、作品を通して伝えたい児童相談所の実態について語ってくれた。

児童福祉司のカスミを演じた小野花梨 (C)エンタメOVO

-本作への出演はオーディションで決まったそうですが、出演を望んだきっかけは、どんなところにあったのでしょうか。

 私自身、小さな赤ちゃんが虐待死するニュースを見たときに、すごく心が痛んで、こんなに悲しい事件は、どうしてなくならないのだろうと思っていたときに、今回のお話を頂きました。今作に挑戦することで、児童相談所の内情を知ることができるのは、とてもありがたいことだなと思いましたし、私自身の勉強のためにも、この役をやってみたいなと思いました。

-小澤雅人監督が児童福祉司に取材を重ねた膨大な資料を基に、役作りに臨んだそうですが、その資料には、どんなことが書かれていたのでしょうか。

 実際にあった児童虐待の事例や、児童福祉司の方がどういう思いで虐待されている子どもの親御さんと接しているのか、児童相談所で働いている職員の方の生活リズムなどについて書かれている資料でした。児童福祉司の方は、お昼ご飯を食べる時間がないとか、急に走らなければならないことがあるので絶対にスニーカーを履くとか、両手が使えないといけないのでバックは必ずリュックにしているとか、具体的なことも含めた資料になっていました。

-「子どもを守る」という、社会的に重要な職業の一つであるにも関わらず、そうした内情は、一般的にはあまり知られていないように感じます。

 そうですね。こういうことがもっと表に出ていけば、きっと今現在、困っている親御さんにも、「あそこに頼っていいんだ」という救いの手が回っていって、それに苦しめられる子どもも減っていくような気がします。まずは、児童相談所というものが、もっと世に出ていくような社会になればいいなと思いました。

-児童相談所は「子どもを守ってあげる場所」というイメージがあったのですが、この映画を見て、その親である大人への対応も、とても重要で大変な仕事なのだと感じました。

 確かにそうだなと思います。私も、児童相談所なので、児童に対して職員がいるというイメージがありましたが、問題の根本になっているのが、お父さんやお母さんだったり、家庭環境が大本になっていることが多いので、ただ子どもを保護して守るだけではなくて、根本を考えて、そこをどう正していくか、どう救っていくかというところに目を向けている仕事なんだなと気付きました。

-脚本を読んだときは、どんな印象を持ちましたか。

 生半可な気持ちでは、この役はできないなと感じました。児童相談所の職員として働いていらっしゃる方がたくさんいて、その方たちへのリスペクトがあって、この作品は出来上がっているので、間違った伝わり方があってはならないですし、自分がこの役をきちんとやらないといけないなという恐怖心や責任感を感じました。

-役を演じるに当たって、監督からどんな言葉を掛けられましたか。

 膨大な資料の中に、たくさんのヒントがあったので、そこをベースに監督と話し合いをしながら作っていきました。児童相談所の職員ではありますが、プライベートではどういう女性なのか、どういう恋愛観を抱いているのかなど、カスミという個人の部分を細かく作っていくことができたなと思います。

-撮影時に印象に残ったシーンはありますか。

 まだ首が座っていない、生まれて数週間ぐらいの赤ちゃんを、お母さんから引き離さなければならないシーンです。本当の赤ちゃんを抱いたときの得体の知れない実体感や、赤ちゃんが持つエネルギーのすごさを感じました。役や作品を超えて、すごく心に感じるものがあって、社会全体で守らなければならない赤ちゃんや、子どもというものが持つ、壮大なエネルギーを感じさせていただきました。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

俳優デビュー25周年の上戸彩が15年ぶりの写真集を発売 台湾で幻想的な夜市でのロケから寝起き姿まで多彩な魅力満載

イベント2025年7月14日

 俳優デビュー25周年を迎えた上戸彩の写真集『Midday Reverie(ミッドデイ・リヴァリー)』(宝島社)が、7月10日に発売された。発売記念イベントが、7月12日(土)に大阪で、そして7月13日(日)に東京・紀伊国屋書店 新宿本店で … 続きを読む

JT・モルナー監督「この映画の実現は厳しいと言われた時に、『羅生門』を見れば分かると言いました」『ストレンジ・ダーリン』【インタビュー】

映画2025年7月11日

 シリアルキラーの恐怖に包まれた街を舞台に、とある男女の出会いが予測不能な展開へと突き進んでいく様子を、時系列を巧みに交錯させた全6章の構成で描いたスリラー映画『ストレンジ・ダーリン』が7月11日から全国公開される。米映画批評サイトのロッテ … 続きを読む

鹿賀丈史「演じることよりも感じることの方が先だったかなと思います」『生きがい IKIGAI』【インタビュー】

映画2025年7月10日

 2024年の元旦に発生した地震で甚大な被害を受け、さらに8カ月後の豪雨によって2度目の災害に見舞われた能登で、ボランティア活動に参加した宮本亞門監督が、復興支援を目的に製作したショートフィルム北陸能登復興支援映画『生きがい IKIGAI』 … 続きを読む

千賀健永、頭が良くてゲームが上手な弟に「かわいい復讐心はありました」【インタビュー】

ドラマ2025年7月7日

 トリンドル玲奈が主演するドラマ「レプリカ 元妻の復讐」が、7日23時6分からテレ東系で放送がスタートする。本作は原作・タナカトモ氏、作画・ひらいはっち氏による同名漫画を映像化。整形して別人として生きる主人公・伊藤すみれ(トリンドル)が、人 … 続きを読む

安田顕「水上くんの目に“本物”を感じた」水上恒司「安田さんのお芝居に強い影響を受けた」 世界が注目するサスペンスで初共演&ダブル主演「連続ドラマW 怪物」【インタビュー】

ドラマ2025年7月5日

 韓国の百想芸術大賞で作品賞、脚本賞、男性最優秀演技賞の3冠を達成した極上のサスペンス「怪物」。WOWOWが世界で初めてそのリメイクに挑んだ「連続ドラマW 怪物」(全10話)が、7月6日(日)午後10時から放送・配信スタート(第1話・第2話 … 続きを読む

Willfriends

page top