【インタビュー】『今はちょっと、ついてないだけ』玉山鉄二「自分と重なる部分がすごく多かった」 深川麻衣「悩みを抱えた人が、考え方を変えるスイッチになれば」不器用な大人たちの再生の物語に込めた思い

2022年4月8日 / 08:00

 バブル期に売れっ子カメラマンとして活躍しながらも、大きな挫折を経験し、今は工場の夜勤などをしてひっそりと暮らす立花浩樹。希望していた美容の道に進みながらも、勤務先の業績不振によるリストラに遭い、求職中の瀬戸寛子。年齢も性別も境遇も異なる、心に傷を抱えた不器用な大人たちが、シェアハウスでの暮らしを通して希望を見いだしていく…。伊吹有喜の同名小説を原作にした映画『今はちょっと、ついてないだけ』が、4月8日から全国公開となる。立花役の玉山鉄二と寛子役の深川麻衣が、撮影の舞台裏や作品に込めた思いを語ってくれた。

深川麻衣(左)と玉山鉄二 (C)エンタメOVO

-それぞれ、自分が演じた立花と寛子のどんなところに共感しましたか。

玉山 立花のように失敗して闇を抱えるようなことは、40代を迎えるぐらいの年齢になると、男性でも女性でも、誰しもが持っている部分だと思うんです。闇を持っているけれど、他人にシェアできない葛藤というか。そこにふたをして歩んでいく人もいれば、ちゃんと向き合って打破し、進んでいく人もいます。だから、演じる上では、そこに対してより多くの人が共感してもらえるように、ということを心掛けました。

深川 寛子は、頭の中には夢ややりたいことがいっぱいあるんですけど、コミュニケーションが苦手だったり、口下手だったりするところがあって、リストラされてしまうんです。私も、大切なことを話すとき、言葉の選び方が「これでよかったのかな」と悩んだり、映画の中のせりふのように、「あのとき、こう言えていたら…」と考えたりすることが多いので、その点ではすごく共感できました。

-演じる上で難しかった点は?

深川 寛子は抱えているものは大きいんですけど、泣いたり、怒ったりするような表に出る感情の起伏が少なかったんです。だから、シェアハウスで暮らし始めてからほぐれていく姿がどうやったらうまく伝わるのか、すごく悩みました。

玉山 題材的に、難しかったよね。

深川 そうですね。

玉山 最近は、テレビドラマでも映画でも、抑揚のはっきりとした作品が多いんですけど、この映画はちょっとほっこりした感じで、それほどはっきりとした抑揚がないんです。だから、最初に台本を読んだとき、お客さんにどうフックを掛けていこうか、みたいなロジカルな部分を考えていたら、不安になって監督に相談したことがありました。

-確かに、せりふで分かりやすく感情を説明する作品ではありませんが、立花や寛子の心情は、お二人の芝居を通じてひしひしと伝わってきます。その点について、柴山健次監督とはどんな話を?

玉山 こういう抑揚が少ないものをお客さんに分かりやすく伝えるにはどうしたらいいのか、だいぶ話し合いました。その結果、原作に対する愛情が強過ぎるぐらい強いことが分かったので、明確な世界観が監督の中にあるんだなと思って、最終的には委ねました。

-そうすると、芝居はイメージしていたものよりも抑える感じになったと?

玉山 そうですね。僕の中では「大丈夫かな…?」と思うぐらいが、監督にとってはちょうどよかった感じで、抑える方が多かったです。

深川 私も、熱量や表情の面で、「ここはもうちょっと控えて」みたいなお話しをすることが多かったです。寛子の内側に抱えているものを、表情としてどのぐらい表に出すか、ということを監督に演出してもらいながら撮っていた感じで。

-立花や寛子の「言いたいことがうまく言えない」というもどかしい感じは、そういう中から生まれたようにも思えます。

深川 そうかもしれません。

-この映画は、若い女性の寛子と、立花のような年の離れた男性たちが、共に時間を過ごすシェアハウスでの生活をきっかけに、傷ついた心を癒やして新たな道を見つけていく物語です。そういう劇中のシェアハウスについて、どんな印象を持ちましたか。

深川 年が離れているからこそ相談できることもありますし、相談しづらい悩みを抱えていたとしても、人生の先輩たちが、頑張って自分の抱えているものを乗り越えようとしていたり、楽しそうにワイワイやっていたりする姿を見ていたら、別に言葉を掛けられなくても、「自分も頑張れそうな気がする」と思える部分があったんです。だから、「何かいいな…」と。

玉山 確かに、年齢が近いからこそ難しいことってあるよね。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

市毛良枝「現代の家族のいろんな姿を見ていただけると思うし、その中で少しでもホッとしていただけたらいいなと思います」『富士山と、コーヒーと、しあわせの数式』【インタビュー】

映画2025年10月23日

 祖父の他界後、大学生の拓磨は、夫に先立たれて独り残された祖母・文子と同居することになった。ある日、拓磨は亡き祖父・偉志の書斎で、大学の入学案内を見つける。それは偉志が遺した妻・文子へのサプライズだった。市毛良枝とグローバルボーイズグループ … 続きを読む

林裕太「北村匠海さんや綾野剛さんとのつながりを感じました」期待の若手俳優が先輩2人と作り上げた迫真のサスペンス『愚か者の身分』【インタビュー】

映画2025年10月22日

 10月24日から全国公開となる『愚か者の身分』は、第二回大藪春彦新人賞を受賞した西尾潤の同名小説を映画化した迫真のサスペンスだ。新宿の歌舞伎町で、犯罪組織の手先として戸籍売買を行う松本タクヤ(北村匠海)とその弟分・柿崎マモル、タクヤの兄貴 … 続きを読む

南琴奈「今までに見たことがないような映画を楽しんでいただけたらと思います」『ミーツ・ザ・ワールド』【インタビュー】

映画2025年10月22日

 芥川賞作家・金原ひとみが新宿・歌舞伎町を舞台に描き、第35回柴田錬三郎賞を受賞した同名小説を、松居大悟監督、杉咲花主演で映画化した『ミーツ・ザ・ワールド』が10月24日から全国公開される。二次元の世界を愛し、自己肯定感の低い主人公の由嘉里 … 続きを読む

timelesz・橋本将生「『大切な人を守りたい』という気持ちは共感できる」 菊池風磨のアドバイスも明かす【インタビュー】

ドラマ2025年10月21日

 timeleszの橋本将生が主演するドラマ「ひと夏の共犯者」(テレ東系)が毎週金曜深夜24時12分~放送中だ。本作は、大学生の主人公・岩井巧巳(橋本)が、推しのアイドル・片桐澪(恒松祐里)との夢のような同居生活を送るうちに、彼女の中にもう … 続きを読む

高橋一生、平山秀幸監督「アクションはもちろん、人間ドラマとしてもちゃんと娯楽性を持っている作品に仕上がっていると思います」「連続ドラマW 1972 渚の螢火」【インタビュー】

ドラマ2025年10月20日

 1972年、本土復帰を間近に控えた沖縄で、100万ドルの米ドル札を積んだ現金輸送車が襲われ行方を絶った。琉球警察は本土復帰特別対策室を編成。班長には、警視庁派遣から沖縄に戻って来た真栄田太一が任命される。班員は、同級生でありながら真栄田を … 続きを読む

Willfriends

page top