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バブル期に売れっ子カメラマンとして活躍しながらも、大きな挫折を経験し、今は工場の夜勤などをしてひっそりと暮らす立花浩樹。希望していた美容の道に進みながらも、勤務先の業績不振によるリストラに遭い、求職中の瀬戸寛子。年齢も性別も境遇も異なる、心に傷を抱えた不器用な大人たちが、シェアハウスでの暮らしを通して希望を見いだしていく…。伊吹有喜の同名小説を原作にした映画『今はちょっと、ついてないだけ』が、4月8日から全国公開となる。立花役の玉山鉄二と寛子役の深川麻衣が、撮影の舞台裏や作品に込めた思いを語ってくれた。
玉山 立花のように失敗して闇を抱えるようなことは、40代を迎えるぐらいの年齢になると、男性でも女性でも、誰しもが持っている部分だと思うんです。闇を持っているけれど、他人にシェアできない葛藤というか。そこにふたをして歩んでいく人もいれば、ちゃんと向き合って打破し、進んでいく人もいます。だから、演じる上では、そこに対してより多くの人が共感してもらえるように、ということを心掛けました。
深川 寛子は、頭の中には夢ややりたいことがいっぱいあるんですけど、コミュニケーションが苦手だったり、口下手だったりするところがあって、リストラされてしまうんです。私も、大切なことを話すとき、言葉の選び方が「これでよかったのかな」と悩んだり、映画の中のせりふのように、「あのとき、こう言えていたら…」と考えたりすることが多いので、その点ではすごく共感できました。
深川 寛子は抱えているものは大きいんですけど、泣いたり、怒ったりするような表に出る感情の起伏が少なかったんです。だから、シェアハウスで暮らし始めてからほぐれていく姿がどうやったらうまく伝わるのか、すごく悩みました。
玉山 題材的に、難しかったよね。
深川 そうですね。
玉山 最近は、テレビドラマでも映画でも、抑揚のはっきりとした作品が多いんですけど、この映画はちょっとほっこりした感じで、それほどはっきりとした抑揚がないんです。だから、最初に台本を読んだとき、お客さんにどうフックを掛けていこうか、みたいなロジカルな部分を考えていたら、不安になって監督に相談したことがありました。
玉山 こういう抑揚が少ないものをお客さんに分かりやすく伝えるにはどうしたらいいのか、だいぶ話し合いました。その結果、原作に対する愛情が強過ぎるぐらい強いことが分かったので、明確な世界観が監督の中にあるんだなと思って、最終的には委ねました。
玉山 そうですね。僕の中では「大丈夫かな…?」と思うぐらいが、監督にとってはちょうどよかった感じで、抑える方が多かったです。
深川 私も、熱量や表情の面で、「ここはもうちょっと控えて」みたいなお話しをすることが多かったです。寛子の内側に抱えているものを、表情としてどのぐらい表に出すか、ということを監督に演出してもらいながら撮っていた感じで。
深川 そうかもしれません。
深川 年が離れているからこそ相談できることもありますし、相談しづらい悩みを抱えていたとしても、人生の先輩たちが、頑張って自分の抱えているものを乗り越えようとしていたり、楽しそうにワイワイやっていたりする姿を見ていたら、別に言葉を掛けられなくても、「自分も頑張れそうな気がする」と思える部分があったんです。だから、「何かいいな…」と。
玉山 確かに、年齢が近いからこそ難しいことってあるよね。
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