【インタビュー】舞台「裏切りの街」萩原みのり 高木雄也の恋人役で6年ぶり舞台出演「演劇で伝える難しさを感じています」

2022年3月9日 / 08:00

 高木雄也が主演し、三浦大輔が作・演出を務める、パルコ・プロデュース2022「裏切りの街」が、3月12日から上演される。本作は、06年に舞台「愛の渦」で岸田戯曲賞を受賞した三浦が、10年にPARCO劇場に書き下ろした作品を12年ぶりに上演する。16年には三浦自身がメガホンを取り、池松壮亮と寺島しのぶ出演で映画化もされた。今回、高木が演じる主人公・菅原裕一の彼女・鈴木里美を演じるのは、ドラマ「ただ離婚してないだけ」や映画『成れの果て』での存在感あふれる演技が話題を呼び、4月29日からは主演映画『N号棟』の公開も控えている萩原みのり。萩原に6年ぶりとなる舞台出演への思いを聞いた。

鈴木里美役の萩原みのり(ヘアメーク:石川奈緒記/スタイリスト:伊藤信子)

-三浦さんの作品には、映画『何者』(16)以来の出演ですね。今、どんなことを感じながら稽古をしていますか。

 三浦さんの演劇作品に出演するのは今回が初めてなのですが、映像のときと全く変わらず、細かい気持ちの機微や心の奥の部分を一緒に決めていってくださっていると感じています。1文字単位で神経を使いながら言葉を発して稽古をしていますが、そればかり考え過ぎると、“外側”を取りつくろうだけになってしまうので、心も動かしてお芝居をしなければいけないな、と考えながら臨んでいます。

-本作は、本来は20年に上演予定でしたが、新型コロナの影響で全公演が中止となり、今回、改めて上演が決まりました。20年はオンラインでの稽古だったと聞いていますが、それらを経ての中止に対してどんな思いがありましたか。

 ほかのキャストの皆さんとは一度もお会いすることができないまま、オンラインで稽古を行なったので、どういうお芝居になっていくのかも分からないままでした。パソコンの画面に向かってせりふを話していても、(ほかの共演者と)目が合うこともないので、(稽古が)できているようでできていない状態だったと思います。ただ、いつかは会える、いつかはきちんとした稽古がスタートすると思っていたので、そのまま中止になってしまったときはがく然としました。数日間は涙が止まらなくて…。私は映画版が大好きで、三浦さんとご一緒したいという思いがあってこの作品のオーディションを受けて出演が決まったので、中止になったことで全てを取り上げられてしまった気がして、すごく悔しい思いでした。なので、今回、上演できると決まったことは本当によかったと感じています。

-映画版が大好きだということですが、どこに魅力を感じましたか。

 映画館で鑑賞したのですが、男性のお客さんと女性のお客さんが全然違うシーンで笑っているのが面白いなと思いました。それに、人間の駄目なところや情けないところがたくさん登場するのに、なぜだか許せてしまう。なぜだか、それでも愛しいと思ってしまう。登場人物の皆をこれほど愛してしまう映画はあまりないと思います。それから、(作品の舞台となっている)荻窪に行ったときに景色が違って見えるぐらい、現実と地続きに感じる作品というのも三浦さんの作品の魅力だと思います。ですが、この作品を舞台で上演するのというのは、すごく難しいことなのではないかとも、改めて今、感じています。カメラが(演技を)切り抜いて見せてくれるわけではないので、大きな劇場ですごく細かい人情の機微を表現するにはどうすればいいのかが、今の私の課題です。どれほど心では大きく演じていても、表現としては小さく見えてしまう。ただ、こういう作品だからこそ、大きくやり過ぎてもいけない。今はそうして試行錯誤をしていて、演劇で伝える難しさを感じています。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

板垣李光人「最初から、戦争を考えて見るのではなく、実際に見て感じたことを広めていっていただければ、それが一番うれしいです」『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』【インタビュー】

映画2025年12月5日

 戦争がもたらす狂気を圧倒的なリアリティーで描き、第46回日本漫画家協会優秀賞を受賞した武田一義の戦争漫画をアニメーション映画化した『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』が12月5日から全国公開された。太平洋戦争末期、激戦が繰り広げられたペリリ … 続きを読む

【物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家ストーリー】(8)百年ぶりの復活へ 四代目が掲げた三つの大願

舞台・ミュージカル2025年12月4日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。    2016年に四代目・玉田玉秀 … 続きを読む

多部未華子「学びの多い現場でした」DV被害者役に挑んだヒューマンミステリー「連続ドラマW シャドウワーク」【インタビュー】

ドラマ2025年12月1日

 WOWOWで毎週(日)午後10時より放送・配信中の「連続ドラマW シャドウワーク」は、佐野広実の同名小説を原作にしたヒューマンミステリー。  主婦の紀子は、長年にわたる夫の暴力によって自己喪失し、すべて自分が悪いと考えるようになっていた。 … 続きを読む

森下佳子「写楽複数人説は、最初から決めていました」脚本家が明かす制作秘話【大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」インタビュー】

ドラマ2025年12月1日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」。“江戸のメディア王”と呼ばれた“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く物語は、まもなくクライマックスを迎える。これまで、いくどとなく視聴者を驚かせてきたが、第4 … 続きを読む

富田望生「とにかく第一に愛を忘れないこと」 村上春樹の人気小説が世界初の舞台化【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年11月30日

 今期も三谷幸喜の「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう」に出演するなどドラマや映画で注目を集め、舞台やさまざまなジャンルでも活躍する富田望生。その富田が、2026年1月10日から上演する舞台「世界の終りとハードボイルド・ワンダ … 続きを読む

Willfriends

page top