【インタビュー】「雨に叫べば」松本まりか×モトーラ世理奈「私たちの仕事場で行われていることが客観的に見られて面白かったです」

2021年12月17日 / 12:00

 『ミッドナイトスワン』の内田英治監督によるオリジナル脚本作「雨に叫べば」(12月16日(木)からAmazon Prime Videoで独占配信)は、1980年代後半を舞台に、映画撮影の内幕を描く。エロが売りの映画に抜てきされた新人監督を演じる主演の松本まりかと、差別に屈せず奮闘する撮影助手役のモトーラ世理奈。独自の存在感で近年注目の2人に話を聞いた。男尊女卑やパワハラがまかり通る時代の撮影現場で、年齢差を超えて“友情”を育む2人の女性を体現したことで、松本とモトーラにも友情が芽生えたようだ。

写真:松井伴実/モトーラ世理奈(スタイリスト:中本ひろみ/ヘアメーク:斎藤紅葉)と松本まりか(スタイリスト:秋山瞳/ヘアメーク:ミック)

-演じた役柄についてどう思いましたか。

松本 私の演じた映画監督は、内田さんの実体験が多く反映されている、まさに内田さん自身だと思っていて。監督が何度もカットをかけて、「もう一度お願いします」と言う時、胃がキリキリするそうで。実際に、皆の視線を受けたときは、内田さんはこんな感覚なんだと体験できて、うれしかったです。

モトーラ 皆の視線が集まってきて、皆の気持ちを背負っているけど、でも自分の作品にするために強くいないといけない。監督はそことも闘っているんだなと感じました。私は撮影助手の役で、フィルムで撮っている設定だったので、技術的なことを東映撮影所でずっとカメラマンをされている方から直接教えていただいて。私はフィルムカメラが好きなので、古いカメラにロマンを感じるけど、昔は大変だったんだなと思いました。1ロールで10分ぐらいしか撮れない。テークが回っている間の重みが、今の感覚とは違うと感じました。

-描かれる映画の撮影現場は、お二人にとっては職場=ホームグラウンドともいえますよね。

松本 デフォルメされていましたけど、私たちの仕事場で行われていることが客観的に見られて面白かったです。普段は自分の仕事に集中し出すと、スタッフさんの細やかなやりとりまで見ることができませんから。劇中では怒号が飛んだりしてコンプライアンスぎりぎりなんですけど、でもいとおしいというか。一つのものを皆で作れるこの仕事に就くことができて、よかったなと改めて思いました。

モトーラ 「用意スタート」「カット」が(劇中なのか実際なのか)どっちなのか分からなくなることが何回かありました(笑)。

-お互いの印象は?

松本 もともと世理奈ちゃんのファンで。ドラマ「ブラック校則」で制服姿の世理奈が歩いている姿を初めて見て、息をのむような存在感と唯一無二感、誰もまねできないオーラがあった。実際にお会いしても、純粋無垢(むく)の塊というか、ただそこにいるだけで美しいし、こっちが勝手に受け取るものがある。世理奈は存在そのものが芸術作品というか(笑)。年齢は違いますけど、この映画で唯一心を通わせていく2人だし、内田さんが年齢を気にせずに友達として成立すると思ってくれた感性が、私はすごくうれしい。キャスティングは実年齢で判断されることが多いから。常識に捉われない内田さんだからこそ、この友情関係が作れたと思います。

モトーラ そうですね。同じ現場で闘っている同士だから年齢も関係ないし、どこの世界でもそうだと思うのですが、一緒に作っているから感じ合えるものでつながっている。私、最初はお会いするのを緊張していたんです。撮影では2人のシーンがもっといっぱいあって、まりかさんが私に話し掛けてくれた言葉もうれしくて、そこでつながれたからこそドーナツのシーンでは、2人で座ってスタジオを見下ろしながら、うそがないような気がしました。撮影所のにおいも感じられて大好きなシーンです。

松本 ドーナツのシーンを立たせるためには、その前のくだりは必要ないという判断だと思うんですけど、バッサリとカットされていて、結構ショックでした(笑)。でも、映画としては、あそこに集約させた。

モトーラ 私から吹っ掛けてぶつかり合うシーンがあって。同じ女性だし、助手として頑張ってきて自分の中でたまっている気持ちを監督にぶつけちゃう。

松本 2人が心を通わせていくシーン。特典映像か何かで復活させてほしいぐらい。でも、世理奈ちゃんがいてくれたおかげで私は、混沌(こんとん)とした撮影現場で劇中と同じように心が洗われた。私にとって世理奈ちゃんはそういう存在で、本当に大好きです。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

ファーストサマーウイカ「それぞれの立場で“親と子”という普遍的なテーマについて、感じたり語り合ったりしていただけたらうれしいです」日曜劇場「19番目のカルテ」【インタビュー】

ドラマ2025年8月17日

 TBSでは毎週日曜夜9時から、松本潤主演の日曜劇場「19番目のカルテ」が放送中。富士屋カツヒトによる連載漫画『19番目のカルテ 徳重晃の問診』(ゼノンコミックス/コアミックス)を原作に、「コウノドリ」シリーズ(TBS系)の坪田文が脚本を手 … 続きを読む

橋本愛 演じる“おていさん”と蔦重の夫婦は「“阿吽の呼吸”に辿り着く」【大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」インタビュー】

ドラマ2025年8月16日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」。“江戸のメディア王”と呼ばれた“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く物語は、快調に進行中。本作で蔦重の妻・ていを演じているのは、今回が4度目の大河ドラマ出演で … 続きを読む

山里亮太「長年の“したたかさ”が生きました(笑)」 三宅健太「山里さんには悔しさすら覚えます(笑)」STUDIO4℃の最新アニメ『ChaO』に声の出演【インタビュー】

映画2025年8月15日

 『鉄コン筋クリート』(06)、『海獣の子供』(19)を始め、個性的なアニメーションを次々と送り出してきたSTUDIO4℃。その最新作が、アンデルセンのおとぎ話『人魚姫』をベースに、人間の青年・ステファン(声:鈴鹿央士)と人魚王国のお姫さま … 続きを読む

ウィリアム・ユーバンク監督「基本的には娯楽作品として楽しかったり、スリリングだったり、怖かったりというところを目指しました」『ランド・オブ・バッド』【インタビュー】

映画2025年8月14日

 ラッセル・クロウとリアム・ヘムズワースが共演し、戦場で孤立した若手軍曹と、彼を後方から支援する無人戦闘機のベテラン操縦官の闘いを活写したサバイバルアクション『ランド・オブ・バッド』が8月15日から全国公開された。米海軍全面協力のもと、入念 … 続きを読む

【物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家ストーリー】(1)“たまたま”が導いた講談の道

舞台・ミュージカル2025年8月14日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。 ▼みなさん、こんにちは  日本の伝 … 続きを読む

Willfriends

page top