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『ミッドナイトスワン』の内田英治監督によるオリジナル脚本作「雨に叫べば」(12月16日(木)からAmazon Prime Videoで独占配信)は、1980年代後半を舞台に、映画撮影の内幕を描く。エロが売りの映画に抜てきされた新人監督を演じる主演の松本まりかと、差別に屈せず奮闘する撮影助手役のモトーラ世理奈。独自の存在感で近年注目の2人に話を聞いた。男尊女卑やパワハラがまかり通る時代の撮影現場で、年齢差を超えて“友情”を育む2人の女性を体現したことで、松本とモトーラにも友情が芽生えたようだ。
松本 私の演じた映画監督は、内田さんの実体験が多く反映されている、まさに内田さん自身だと思っていて。監督が何度もカットをかけて、「もう一度お願いします」と言う時、胃がキリキリするそうで。実際に、皆の視線を受けたときは、内田さんはこんな感覚なんだと体験できて、うれしかったです。
モトーラ 皆の視線が集まってきて、皆の気持ちを背負っているけど、でも自分の作品にするために強くいないといけない。監督はそことも闘っているんだなと感じました。私は撮影助手の役で、フィルムで撮っている設定だったので、技術的なことを東映撮影所でずっとカメラマンをされている方から直接教えていただいて。私はフィルムカメラが好きなので、古いカメラにロマンを感じるけど、昔は大変だったんだなと思いました。1ロールで10分ぐらいしか撮れない。テークが回っている間の重みが、今の感覚とは違うと感じました。
松本 デフォルメされていましたけど、私たちの仕事場で行われていることが客観的に見られて面白かったです。普段は自分の仕事に集中し出すと、スタッフさんの細やかなやりとりまで見ることができませんから。劇中では怒号が飛んだりしてコンプライアンスぎりぎりなんですけど、でもいとおしいというか。一つのものを皆で作れるこの仕事に就くことができて、よかったなと改めて思いました。
モトーラ 「用意スタート」「カット」が(劇中なのか実際なのか)どっちなのか分からなくなることが何回かありました(笑)。
松本 もともと世理奈ちゃんのファンで。ドラマ「ブラック校則」で制服姿の世理奈が歩いている姿を初めて見て、息をのむような存在感と唯一無二感、誰もまねできないオーラがあった。実際にお会いしても、純粋無垢(むく)の塊というか、ただそこにいるだけで美しいし、こっちが勝手に受け取るものがある。世理奈は存在そのものが芸術作品というか(笑)。年齢は違いますけど、この映画で唯一心を通わせていく2人だし、内田さんが年齢を気にせずに友達として成立すると思ってくれた感性が、私はすごくうれしい。キャスティングは実年齢で判断されることが多いから。常識に捉われない内田さんだからこそ、この友情関係が作れたと思います。
モトーラ そうですね。同じ現場で闘っている同士だから年齢も関係ないし、どこの世界でもそうだと思うのですが、一緒に作っているから感じ合えるものでつながっている。私、最初はお会いするのを緊張していたんです。撮影では2人のシーンがもっといっぱいあって、まりかさんが私に話し掛けてくれた言葉もうれしくて、そこでつながれたからこそドーナツのシーンでは、2人で座ってスタジオを見下ろしながら、うそがないような気がしました。撮影所のにおいも感じられて大好きなシーンです。
松本 ドーナツのシーンを立たせるためには、その前のくだりは必要ないという判断だと思うんですけど、バッサリとカットされていて、結構ショックでした(笑)。でも、映画としては、あそこに集約させた。
モトーラ 私から吹っ掛けてぶつかり合うシーンがあって。同じ女性だし、助手として頑張ってきて自分の中でたまっている気持ちを監督にぶつけちゃう。
松本 2人が心を通わせていくシーン。特典映像か何かで復活させてほしいぐらい。でも、世理奈ちゃんがいてくれたおかげで私は、混沌(こんとん)とした撮影現場で劇中と同じように心が洗われた。私にとって世理奈ちゃんはそういう存在で、本当に大好きです。
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