【インタビュー】ミュージカル「フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~」大貫勇輔「いかにリアルにケンシロウを存在させられるかが大きな課題」

2021年10月12日 / 08:05

 原作・武論尊、漫画・原哲夫による伝説的コミックス『北斗の拳』がミュージカル化され、12月に上演される。原作コミックスは、最終戦争により文明社会が失われ、暴力が支配する世界となった世紀末を舞台に、北斗神拳の伝承者・ケンシロウが、愛と悲しみを背負いながら救世主として成長していく姿を描く。今回のミュージカル化では、音楽をフランク・ワイルドホーンが書き下ろし、演出を石丸さち子が担当する。主人公のケンシロウを演じる大貫勇輔に、本作に懸ける思いや公演への意気込みを聞いた。

ケンシロウ役の大貫勇輔 (C)武論尊・原哲夫/コアミックス 1983 版権許諾証GS-111

-ミュージカル化が発表され、大きな反響があったかと思いますが、大貫さんご自身は、ケンシロウ役で主演が決まったときの心境はいかがでしたか。

 最初は聞き返してしまったぐらい驚きました。「北斗の拳」をミュージカル化するということもそうですし、僕がケンシロウを演じるということも、本当に驚きの連続で…二つ返事で「やらせてください」と言ったものの、本当に僕にできるんだろうかと不安や恐怖がありました(笑)。

-まさに、「どうやってミュージカル化するのか」というのは、ファンの皆さんも思っているところだと思います。

 そもそも原作では、ケンシロウは寡黙な男で、しゃべるよりも行動で示す人物というイメージがあったので、歌い踊るとどうなるんだろうと思っていたんですが、いざ本読みをしたら、音楽が流れてケンシロウが歌い、しゃべると、もしかしたらケンシロウは心の中ではそんなことを思っていたのかもしれないと感じました。それは、ミュージカルならではだと思います。やっぱり音楽の力はすごいなと思いましたし、ケンシロウはそういう気持ちだったのかもしれないと納得させられました。ミュージカル化は原作ファンにとっても、新しい気付きや新しい面白さを感じていただけると思います。

-ケンシロウの心情が歌に乗せて歌われるんですね。

 漫画では、流れるように闘いのシーンが進んでいきますが、今回は、キャラクターの心の内が歌になっているので、「そういう思いを持っていたのかもしれない」と気付かされるシーンが入っています。ラオウが最後の闘いに挑むシーンも、ラオウの孤独や悲しみ、なぜそうなってしまったのかということが、歌で吐露されることによって、原作よりもより具体性を持って描かれています。音楽の力を借りて、キャラクターそれぞれの個性や、彼らが選択してきた愛、正義、悲しみがよりはっきりと見えてくるように思います。

-ケンシロウを演じるに当たって、今は、どこをポイントにしたいと考えていますか。

 非常に人気のある原作だけに、ケンシロウのイメージを皆さんが持っていると思いますので、それを裏切らずに、その上で、大貫勇輔がケンシロウをやる理由を見つけられたらと思います。ケンシロウの物まねではなくて、そこにいかにリアルにケンシロウを存在させられるかが大きな課題です。筋肉をつけて体作りをするというのはもちろんのこと、ケンシロウがどんな人生を送ってきたのかという人間像をこれからもっと深く掘り下げていきたいと思っています。

-ダンサーでもある大貫さんがケンシロウを演じるということで、ダンスシーンや身体表現にも期待が高まりますが、どのような形で取り入れられるのでしょうか。

 (取材当時)まだそれに関しては稽古前のため、僕自身も分からないんです。ただ、もちろんそういったシーンもたくさんあると思います。闘うように舞うのか、舞うように闘うのかも分かりませんが、僕自身は“ダンサーが闘っている”のではなく、しっかりとした“闘い”も見せたいと思っています。そのために、2月から空手も始めました。格闘技で学んだ殺陣のキレを大切にしたシーンがあったり、ダンサーである僕らしい要素も足した踊りのシーンがあったりと、そこは分けて考えて、どちらもお見せできたらと思っています。

-先ほど、本作の公演に向けて体作りもするというお話がありましたが、具体的にはどれぐらい体を作り込む予定ですか。

 この作品に出演が決まったときからトレーニングは始めていて、今年の初めからはパーソナルトレーナーを付けて本格的なトレーニングをしています。週2回はトレーニングをしているので、毎日、筋肉痛という生活です(笑)。増量期もあれば減量期もあるので、その時々で体重は増減していますが、最終的な理想は74〜5キロ。トレーニング以前の70キロぐらいの体に、筋肉を4キロプラスした体がいいのではないかなと思っています。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【映画コラム】映画は原作を超えたか 沖縄の現代史を背景に描いた力作『宝島』/純文学風ミステリーの趣『遠い山なみの光』

映画2025年9月18日

『宝島』(9月19日公開)  1952年、米軍統治下の沖縄。米軍基地を襲撃して物資を奪い、困窮する住民たちに分け与える「戦果アギヤー」と呼ばれる若者たちがいた。  村の英雄でリーダー格のオン(永山瑛太)と弟のレイ(窪田正孝)、彼らの幼なじみ … 続きを読む

【Kカルチャーの視点】レジェンドたちの「朝鮮の旅」たどった写真家の藤本巧さん

2025年9月18日

 朝鮮の文化を近代日本に紹介した民藝運動家の柳宗悦や陶芸家の河井寛次郎。彼らが1930年代に見た朝鮮の風景に憧れ、1970年に韓国の農村を訪れたのが写真家の藤本巧さんだ。以来50年以上にわたり、韓国の人々と文化をフィルムに刻み続けてきた。 … 続きを読む

エマニュエル・クールコル監督「社会的な環境や文化的な背景が違っても、音楽を通して通じ合える領域があるのです」『ファンファーレ!ふたつの音』【インタビュー】

映画2025年9月18日

 世界的なスター指揮者のティボ(バンジャマン・ラべルネ)は、突然白血病を宣告され、ドナーを探す中で、生き別れた弟のジミー(ピエール・ロタン)の存在を知り、彼の隠れた音楽的な才能にも気付く。兄弟でありながらも異なる運命を歩んできた2人。ティボ … 続きを読む

前田旺志郎「世の中に関心を持つ大切さに気付いた」窪塚愛流「止まっていた時間が動き出した」初共演の2人が福島原発事故を題材にした映画で感じたこと『こんな事があった』【インタビュー】

映画2025年9月16日

 東日本大震災から10年後の福島を舞台に、原発事故で引き裂かれた家族と青春を奪われた若者たちの姿を描いた『こんな事があった』が9月13日から全国順次公開中だ。監督・脚本は、『追悼のざわめき』(88)などで日本のみならず世界の映画ファンから支 … 続きを読む

グイ・ルンメイ、真利子哲也監督「お互いが思い合うからこそすれ違う。でもそこには愛があるという家族の形を描きたかった」『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』【インタビュー】

映画2025年9月12日

 ニューヨーク・ブルックリンで暮らすアジア人夫婦を主人公に、息子の誘拐事件をきっかけに夫婦の秘密が浮き彫りとなり家族が崩壊していく姿を、全編NYロケで描いた『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』が、9月12日から全国公開され … 続きを読む

Willfriends

page top