【インタビュー】ミュージカル「蜘蛛女(くもおんな)のキス」安蘭けい「芸能生活30周年も通過点。これからまだまだ進んでいきたい」

2021年10月13日 / 12:05

 マヌエル・プイグの小説をミュージカル化した「蜘蛛女のキス」が、石丸幹二主演で11月26日から上演される。本作は、ラテンアメリカの刑務所の獄房を舞台に、映画を愛する同性愛者のモリーナと、社会主義運動の政治犯バレンティンが次第に心を重ねていくさまを描く。本作で、モリーナが心の支えにしている映画スター、オーロラと、オーロラが演じる蜘蛛女の二役を務める安蘭けいに、本作への意気込みや、10月13日に発売された芸能生活30周年記念アルバム『AVANCE』に込めた思いを聞いた。

ミュージカル「蜘蛛女のキス」蜘蛛女/オーロラ役の安蘭けい

-「蜘蛛女のキス」は、宝塚時代の同期でもある朝海ひかるさんが出演されていた公演(2007年に上演)をご覧になったそうですね。そのときは、どんな感想を持ちましたか。

 ダークで、大人なミュージカルだと感じました。蜘蛛女は、モリーナの憧れの存在という設定なので、すごくカッコ良く描かれていたのも印象的でした。それから、モリーナの自己犠牲の愛がすごく切なくて、痛いぐらいで…。見終わった後も、すごく考えさせられる作品だと思いました。

-今回、ご自身がその作品に出演するとなったときは、どう感じましたか。

 あの蜘蛛女ができるんだ、あの歌が歌えるんだとすごくうれしくて、すぐにやりたいとお返事しました。モリーナを石丸幹二さんが演じられるというのも魅力でした。幹二さんとは、(2016年に上演した)「スカーレット・ピンパーネル」でもご一緒していますが、すごく信頼できる方で、ぜひまたいつかと思っていたので、うれしかったです。それから、今回、演出を日澤(雄介)さんが担当されるというのもすごく楽しみです。日澤さんが“ザ・ミュージカル”という作品を演出するのが想像できなかったので、どんな作品になるのか期待しています。

-現在(取材当時)、蜘蛛女という役をどのように捉えていますか。

 劇中では、蜘蛛女はモリーナの頭の中にしか出てこない、実在しない存在です。だからこそ、カリスマ性がないといけないと思いますし、彼にとっての憧れの女性でいないといけないと思っています。そこは自分の中で一番の高いハードルでもあります。この作品の「象徴」が蜘蛛女なので、何ともいえない不思議な空気感を出していけるよう、日澤さんと話し合っていこうと思っています。

-モリーナ役の石丸さんの印象は?

 石丸さんが劇団四季に在団していた当時から、出演されていた作品を見ていて、王子系の存在だと思っていたのですが、初めて共演させていただいたときから、すごく気さくで話しやすい方でした。今回のモリーナ役は、幹二さんにぴったりだと思います。幹二さんは、普段からマイルドで柔らかい雰囲気を持っていて、そこが魅力でもあると思うので、モリーナともマッチするように思います。歌声もモリーナに合っていますよね。(本作の)PVでも、モリーナのかわいらしい表情が目に浮かぶような歌い方だったので、きっとすてきなモリーナになるんだろうなと思いました。

-ところで、安蘭さんは、今年、芸能生活30周年を迎えます。10月13日には30周年記念アルバム『AVANCE』も発売されましたね。

 今回は、今まで出会った作品の中から、この曲をもう一回歌いたい、この作品にもう一回出演したいという思いを込めて選曲しました。タイトルの『AVANCE』には、「前進する」という意味があります。私自身はこの30周年も通過点だと思っていて、これからまだまだ進んでいきたいですし、成長したいと思っているので、その思いをこのタイトルに込めました。この30年を振り返るのではなく、この作品と、この曲と一緒に前進していきたいという思いがあります。

-アルバムの中で特に思い入れの深い楽曲は?

 もちろん全部なのですが、挑戦ということで言えば、「レディ・デイ」からの2曲です。その楽曲は、ジャズピアニストのクリヤマコトさんにゲストで来ていただき、収録したのですが、歌っていたら私がすごく楽しくなってしまって、「違う歌も歌いたい」と盛り上がってしまって…。そうしたらクリヤさんも快諾してくださって、急きょ「星に願いを」を歌わせていただくことになりました。そのとき、その場で生まれた曲なので、貴重な曲になっていると思います。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

グイ・ルンメイ、真利子哲也監督「お互いが思い合うからこそすれ違う。でもそこには愛があるという家族の形を描きたかった」『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』【インタビュー】

映画2025年9月12日

 ニューヨーク・ブルックリンで暮らすアジア人夫婦を主人公に、息子の誘拐事件をきっかけに夫婦の秘密が浮き彫りとなり家族が崩壊していく姿を、全編NYロケで描いた『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』が、9月12日から全国公開され … 続きを読む

【物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家ストーリー】(3)無鉄砲小僧、恐れを知らぬ行動力

舞台・ミュージカル2025年9月12日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。 ▼無鉄砲小僧、恐れを知らぬ行動力 … 続きを読む

北村匠海 連続テレビ小説「あんぱん」は「とても大きな財産になりました」【インタビュー】

ドラマ2025年9月12日

 NHKで好評放送中の連続テレビ小説「あんぱん」。『アンパンマン』を生み出したやなせたかしと妻・暢の夫婦をモデルにした柳井のぶ(今田美桜)と嵩(北村匠海)夫婦の戦前から戦後に至る波乱万丈の物語は、ついに『アンパンマン』の誕生にたどり着いた。 … 続きを読む

中山優馬「僕にとっての“希望”」 舞台「大誘拐」~四人で大スペクタクル~の再始動で見せるきらめき【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年9月11日

 中山優馬が主演する舞台「大誘拐」~四人で大スペクタクル~が10月10日に再始動する。本作は、天藤真の小説「大誘拐」を原作とした舞台で、2024年に舞台化。82歳の小柄な老婆が国家権力とマスコミを手玉に取り、百億円を略取した大事件を描く。今 … 続きを読む

広瀬すず「この女性たちの化学反応は一体何なんだという、すごく不思議な感覚になります」『遠い山なみの光』【インタビュー】

映画2025年9月9日

 ノーベル文学賞受賞作家カズオ・イシグロが自身の出生地・長崎を舞台に執筆した長編小説デビュー作を、石川慶監督が映画化したヒューマンミステリー『遠い山なみの光』が9月5日から全国公開された。1950年代の長崎に暮らす主人公の悦子をはじめ、悦子 … 続きを読む

Willfriends

page top