渋沢栄一、パリへ!「現代のVFX技術で、あたかも当時のパリにいるかのように再現した映像が見どころです」田中健二(演出)【「青天を衝け」インタビュー】

2021年7月11日 / 11:00

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「青天を衝け」。7月11日放送の第二十二回からは、主人公・渋沢栄一(篤太夫/吉沢亮)が、万国博覧会に参加する幕府使節団の一員としてパリを訪問する「パリ編」が幕を開ける。第二十四回まで続くパリ編では、初めて海外に飛び出した栄一だけではなく、日本国内では将軍・徳川慶喜(草なぎ剛)にも大きな転機が訪れる。大河ドラマにふさわしい大規模なVFXを駆使して描かれるパリ編の舞台裏や見どころを、演出を担当した田中健二氏が語ってくれた。

「青天を衝け」第22回 場面写真

-パリ編では、服装が和装から洋装に変わるなど、栄一に大きな変化が訪れるようですね。

 演出で重視したのは、外国人嫌いな攘夷の志士だった栄一が、いかに外国の人々を人間として認め、理解していくか、という点です。恩人の平岡円四郎(堤真一)と共鳴し、受け継いだ「おかしれえ」という感覚をパリでも存分に発揮し、旺盛な好奇心で新しい物事に感動し、受け入れていく。同行した水戸侍たちとの対立なども通して、「だからこそ、渋沢栄一という人物がこんなに大きくなるんだな」ということが分かるように描いたつもりです。吉沢くんも、その意図をくんでビビッドに演じてくれました。

-パリ編は大規模なVFXを駆使して描かれるのも見どころだそうですね。

 もともとは、スケジュール的にぎりぎりのタイミングである去年の10月ぐらいまでは、パリに行って撮影するつもりでした。しかし、10月末に現地の新型コロナウィルス感染状況が悪化し、ロックダウンが実施されたことで断念し、VFXでできる方法を考えた上で、現地のプロダクションと協力して撮影することにしました。ただ、いずれにしても1867年のパリは映像に残っていないので、絵や写真でしかうかがい知ることができません。ですから、現代のVFX技術で、当時のパリやパリ万博を、あたかもその場にいるかのように再現した映像が一つの見どころになります。

-撮影はどのように行われたのでしょうか。

 例えば、使節団を率いる徳川昭武(板垣李光人)が、ナポレオン3世と謁見する場面では、昭武一行は、板垣くんたち日本の俳優が演じていますが、それ以外は現地の俳優が演じています。日本とフランスで別々に撮った役者を、一つの画面に合成するので、事前に絵コンテ(完成映像の設計図)をかなり緻密に作り込みました。さらに、カメラの移動速度も役者が歩くスピードに合わせなければいけません。そこで、衣装一式を身につけた板垣くんに、1メートル間隔でテープを貼った床の上を歩いてもらい、何秒かかるかを計測、そのビデオを現地に送り、代役の方に同じスピードで歩いてもらって撮影する…ということをかなり細かくシミュレーションしてやりました。

第22回 VFX合成写真

-謁見場所となった宮殿は、現地で撮影したそうですね。

そうです。ただし、実際に謁見が行われたチュイルリー宮殿は焼失しており、現存しません。その代わり、同じ時期にシャム(現在のタイ)の使節団が謁見したフォンテーヌブロー城が残っており、その様子を描いた絵もあったので、そこに現地の俳優を集めて撮影を行いました。現地スタッフに撮影してもらった映像も見事な仕上がりで、日本と全く違う様子を表現したとてもいいシーンになったと思います。

-日本の役者の撮影はどのように?

 日本側の撮影はグリーンバック(合成用の緑一色の背景)の中で行うので、絵コンテやプレビズ(現地で撮影した風景にCGの人物を合成した参考用の映像)など、可能なものは事前に用意し、できるだけ具体的なイメージを見てもらいました。場面によっては、大きく引き伸ばした当時の絵や写真をセットに配置し、「こんな風景が広がっていた」とプレゼンテーションしてから臨んだものもあります。撮影時はグリーンバックの中で、身振り手振りを交えて、「ものすごく広い場所です」といった感じに一生懸命インスピレーションを喚起した上で、皆さんに芝居をしてもらいました。

-謁見場面を撮影したときの板垣さんの様子は?

 昭武の視線の先にナポレオン3世がいることになっているので、目線の位置を棒で示して撮影しました。とはいえ、役者さんは普段、相手とのやり取りの中で自分の芝居を成立させているので、相手がいないストレスは相当あったと思いますが、頑張ってくれました。

-大変な作業ですね。

 そうですね。他にも、センチメートル単位でサイズを測って日本の俳優と現地の映像を合成することで、実際にその場にいるように見せる、という作業はいろいろなところでやっています。また、場合によってはアナログな手法も取り入れ、エレベーターに乗るシーンでは、エレベーター自体はセットで作り、その中で役者さんに自由に芝居をしてもらい、周囲をVFXで作り込んでいます。逆にパリ万博の場面はほぼ完全にVFXで作り込むなど、さまざまな方法を組み合わせています。吉沢くんも、グリーンバックの撮影は大変だったと思いますが、イマジネーションを広げて思い切った芝居をしてくれました。苦労はあったはずですが、そんな素振りを全く見せず、楽しんでやってくれたのは、さすがだな…と。

 
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