【インタビュー】映画『くれなずめ』若葉竜也「言語化できないものでつながることがあると感じた瞬間があった」

2021年5月11日 / 06:03

 高校時代の帰宅部仲間の6人が、友人の結婚式で久しぶりに再会する。だが彼らは、二次会までの3時間の間に、目を背けていた友の死と向き合うことになる。松居大悟監督の青春群像劇『くれなずめ』が、5月12日(水)から、テアトル新宿ほかで公開される。6人の仲間の一人・明石を演じた若葉竜也に、映画についての思いや、俳優としてのモットーを聞いた。

若葉竜也(Photo : Tominaga Tomoko)

-今回、初顔合わせとなった松居大悟監督の印象は?

 もともと松居さんの映画は見ていましたし、松居大悟という人間にとても興味があったので、今回一緒にやってすごく好きになりました。具体的には内緒です(笑)。

-『あの頃。』など、よく一緒に仕事をする今泉力哉監督との違いは?

 いや、当たり前ですけど、監督によって皆違います。松居さんと今泉さんはとても仲がよくて、「おまえの〇〇は面白くなかった」みたいに、お互いに相手の作品をディスり合ったりしていて(笑)。とてもいい関係だと思います。そんな2人の世界の両方に入れているぜいたくさや、不思議な縁を感じました。

-この映画は、成田凌さん、高良健吾さんら、個性的な面々がそろいました。その中での自分の立ち位置をどう考えましたか。

 この映画だけではなくて、自分が参加する映画には、必ず意識していることがあります。それは、演技のうまさや、せりふの明瞭さ、などではなく、人間として、におい立つような、ざらざらしたところでやりたいと思っている、ということです。自分が映画を見るときも、整ったきれいなせりふや上手なお芝居で感情が動くことはほとんどありません。それよりも、その役者さんの無意識な表情などを見たときに心が動きます。僕自身は、そういう経験を求めて映画館に行くので、自分もテクニカルなところではなく、生きてる人間を映画に焼き付けたいと思っています。松居さんも、言語化できない感情を書き続けてきたと思うので、それは共通認識でありました。この映画は、そういう気持ちの、純度の高さが出た作品だと思います。

-その意味では、半分泣きながら演じていた「過去のやり直し」のシーンは印象的でした。

 最後のリフレインのシーンは、なるべく冷静にやるつもりでした。でも成田さんがトンネルのところでこっちを振り返ったときに、すごくいいたたずまいで。彼は意識的ではないと思うけど、僕自身、せりふが出ないぐらいグッときました。言語化できないものでつながることがあると感じた瞬間でした。

-成田凌さん、高良健吾さんの印象は?

 成田さんとは何作か一緒にやってきましたが、今回のようにがっつりやったのは初めてでした。彼は、ずば抜けてピュアで、彼が座長を務めるこの映画を信頼することができたし、彼に付いていこうと思いました。高良さんとは飲み屋でたまに会ったりしていたので、お互いの存在は知っていましたが、今回が初共演でした。僕らの世代のカリスマみたいな人なので、最初は単純に「うわ、高良健吾だ。カッコいいな」と思いましたね(笑)。実際は、今回の現場で一番話しやすい人でした。現場をとても冷静な目で見ているので、変なブレ方もしない。先輩として尊敬、信頼のできる人だと思いました。

-今回のメンバーは、同級生と少し後輩という設定でしたが、実際に演じた人たちは年齢がバラバラでした。そこでの難しさはありましたか。

 全くなかったです。そこは、ずば抜けて大人のハマケン(浜野謙太)さんや目次(立樹)さんが、僕らに合わせてくれていたからだという気がします。

-今回は、入念なリハーサルを行ったと聞きましたが…。

 皆さん1週間ぐらいやったとおっしゃるんですけど、僕には“入念な”リハーサルをした記憶はないんです。あれは入念だったのかなあ (笑)。僕がダラダラしていただけかもしれませんが(笑)。

-入念にリハーサルを行ったにしては、どこまでが演出で、どこからがアドリブなのか、という印象も受けました。

 もちろん、間合いの取り方や、余白の部分を埋めたり、作ったりしたところはありましたが、台本に書いてあることがほとんどで、アドリブはほぼありません。ただ、リハーサルの時間が、シーンの構築に吉と出たかどうかは分かりませんが、あの時間でみんなと仲良くなれたのは確かです。実は芝居をやるのはおまけで、その後で、皆で一緒に飯を食いに行ったり、その時間を皆で共有するということが、そういう効果を生んだのだと思います。だから、リハーサルをした記憶ではなく、ずっと一緒に飯を食っていた記憶しかありません(笑)。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

森山直太朗、「なぜ人間は歌を奏でるのか。人間の根源的なものに迫る旅になった」 ニュージーランドの先住民マオリとの出会いで得た“新たな気付き”【インタビュー】

ドラマ2024年3月16日

 「ドラマ 地球の歩き方」がテレビ大阪・BSテレ東で放送中だ。創刊45周年を迎えた“海外旅行のバイブル”「地球の歩き方」をドラマ化し、旅好き芸能人が世界各国へ記者として旅に出る姿を描く本作。三吉彩花の韓国編、森山未來のタイ編、松本まりかのサ … 続きを読む

「光る君へ」第十回「月夜の陰謀」まひろと道長が一つの結論を出した序盤のクライマックス【大河ドラマコラム】

ドラマ2024年3月16日

 「一緒に遠くの国には行かない。でも私は、都であなたのことを見つめ続けます。片時も目を離さず、誰よりも愛しい道長さまが、政によってこの国を変えていく様を。死ぬまで見つめ続けます」  NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。3月10日に放 … 続きを読む

丸山隆平、赦すことは「人が成長する1つの方法」 三浦大輔の新作で“ろくでなし”の芸能記者役に【インタビュー】

舞台・ミュージカル2024年3月16日

 SUPER EIGHT(旧関ジャニ∞)の丸山隆平が主演する舞台、Bunkamura Production 2024「ハザカイキ」が3月31日から上演される。本作は、鋭い感性とリアルを追求した演出で、現代の若者の生態と人間の本質を描く、異才 … 続きを読む

アカデミー賞授賞式を象徴した『オッペンハイマー』キリアン・マーフィーのスピーチ【コラム】

映画2024年3月15日

 前評判の高かった『オッペンハイマー』が順当に作品賞をはじめとする7冠に輝いた今年の第96回アカデミー賞授賞式。その『オッペンハイマー』で“原爆の父”J・ロバート・オッペンハイマーを演じ、主演男優賞に輝いたキリアン・マーフィーは、受賞スピー … 続きを読む

【週末映画コラム】音と映像の迫力に圧倒されて疲れを覚えるほど『DUNE/デューン 砂の惑星PART2』/劇場未公開の3作品を公開『私ときどきレッサーパンダ』ほか

映画2024年3月15日

『DUNE/デューン 砂の惑星PART2』(3月15日公開)  その惑星を制する者が全宇宙を制するまでといわれる「砂の惑星デューン」で繰り広げられたアトレイデス家とハルコンネン家の戦い。ハルコンネン家の陰謀により、一族を滅ぼされたアトレイデ … 続きを読む

Willfriends

page top